ヴォイニッチの科学書 第679回 脳をリバースエンジニアリング

生物の特徴的な行動や振る舞いを機械で再現することによって装置の性能を向上させることがよく行われます。この技術を生物模倣、バイオミメティクスと呼びます。たとえば人間の関節をまねた産業用ロボット、イルカの身体の形をまねた潜水艦、微生物のべん毛をメカに置き換えたマイクロマシンの研究などがそうです。  

米国では、脳を模倣することによってAIをさらに人間の知能に近づけようとする、究極のバイオミメティクス研究が1億ドルをかけたプロジェクト「大脳皮質ネットワークからのマシン・インテリジェンス(Machine Intelligence from Cortical Networks:MICrONS)構想」(略称は頭文字を取ってマイクロンズ構想)として取り組まれています。ハーバード大学、ライス大学、ベイラー医科大学、カーネギーメロン大学などの共同プロジェクトで2016年から進行しています。  

囲碁、将棋など、10年前は人間優位だった思考領域においても、近年はコンピューターが人間に勝つことは珍しくなくなりました。ですが、これに満足していない神経科学者、AI科学者は多くいます。その人たちは現在のAIがマシンパワーやアルゴリズムに依存した力任せであることに不満を感じています。

ヴォイニッチの科学書 第679回 脳をリバースエンジニアリング


たとえば、人に街中を散歩している犬の写真を見せたとします。写真にはもちろんたくさんのビルや、車、人、看板、ありとあらゆる雑多なものが写っています。ですが、その人に犬はどれでしょう、と問えばイヌがどんな模様でどっちを向いていても、身体の半分が街路樹で隠れていたとしても、一瞬で正しくイヌを指さすはずです。そんな人間であれば簡単にできることをコンピューターでも実現したいと思っています。

科学者がこれに取り組む大きな理由の一つが、すでに行われているAIによるビッグデータの解析が非常にもろいものだからです。たとえば、データの中にコンピューターの誤解、誤認を誘導するようなノイズを加えて、出力結果を希望する方向に誘導する新手のAIテロが起きる可能性も否定できないためです。

マイクロンズ構想は神経科学のアポロ計画ともいわれる野心的なプロジェクトで、ラットの大脳皮質 の一辺1ミリメートルの小さなサイコロ状の領域を対象に、すべての詳細な機能と構造を図式化しようとするものです。この中には、約10万の神経細胞とおよそ10億のシナプスが含まれています。  

マイクロンズ構想では蛍光色素遺伝子を神経細胞に組み込んだり、従来の電子顕微鏡の100倍以上の4ナノメートルの解像度を持つ電子顕微鏡でスキャンしてコンピューターの中で再構成したりして、すべての細胞とシナプスの再構成を行います。さらに、各々の細胞間がどのように接続されているかを表す「コネクトーム」という配線図のような立体地図の作成と情報が次々に伝達されるニューロンの発火ルートを解析することによる脳のアルゴリズムの解明を目指します。


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2017-11-23 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第678回 中性子星合体の重力波を初観測

2つの中性子星の衝突によって発生した重力波が初めて検出されました。今年のノーベル賞でもあった重力波ですが、これまで観測された4つの重力波はすべて2つのブラックホールが合体した際に起こったものでした。中性子星はブラックホールとはまったく「成分」が異なるため、中性子星の衝突からは放射線を帯びた金属性の破片が放出され、それらは望遠鏡でも観測可能です。

ヴォイニッチの科学書 第678回 中性子星合体の重力波を初観測

レーザー干渉計重力波天文台「LIGO」が検出したこの新たな重力波をNASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡も同時に捉えました。このガンマ線は、中性子星同士が衝突した際の特徴である短時間ガンマ線バーストだと考えられています。 発振源はカリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者によって楕円銀河「NGC4993」の端の方であることが突き止められました。(下写真) ヴォイニッチの科学書 第678回 中性子星合体の重力波を初観測

この爆発を世界各国の天体望遠鏡を動員して電波からガンマ線まで、あらゆる波長域で観測したところ、金、プラチナ、ネオジムなどの重金属を検出することができました。中性子は重い元素を多く含んでいるので、中性子星が破壊されれば今回のような金属原子が大量に宇宙空間に放出されるはずです。 今後は2つの中性子星が衝突した後には何が残されるのか、それがブラックホールなのか、あるいは異常に大きな中性子星なのか、そういったことを解明する計画です。


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2017-11-11 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第677回 分子コンビナート

細胞の中には化学反応でいろいろな物質を作り出す、酵素というタンパク質分子が膨大な量含まれています。私達が生きていくために必要な栄養もエネルギーも細胞の材料もすべて酵素による化学反応で作られています。

ヴォイニッチの科学書 第677回 分子コンビナート

ビールも酵素でつくられます
ヴォイニッチの科学書 第677回 分子コンビナート

酵素の種類によってどのような材料を与えると、どのようなものが出来上がるか決まっています。その酵素とは関係ない材料を与えても何も作りません。 酵素の化学反応をモノ作りに活用する取り組みは古くから行われています。古代エジプトのピラミッド建設現場においては報酬としてのビールを、現在ではナタデココ、デニム染色も酵素反応です。多くの場合、そのような酵素の反応は細胞を使って行うのですが、酵素を取り出して、基盤の上にきちんとならべることができれば、それはあたかもナノスケールの化学コンビナートのように機能するはずです。

ですが、化学コンビナートがパイプやタンクを適当に並べただけでは成り立たず、きちんと部品を設計して配置するのと同様に、酵素を並べてもの作りをしようと思えば、必要な酵素を計画的に配置して、化学反応が連続して起きるようにする必要があります。これを実現するためには、酵素1分子ずつを決まった場所に並べるナノレベルの作業が必要となります。

2000年代以降のDNAナノテクノロジーの発展によって、DNAナノ構造体を連結器のように使用して酵素分子1個ずつを狙った位置に配置することが可能になりました。これは、DNAは決まった相手としか結合しない、という性質を利用して、高性能な糊として使用する技術です。

京都大学エネルギー理工学研究所の研究者らは酵素を自然状態と全く同じ生きた状態を維持して配置する糊「DNA結合性アダプター」を開発しました。 それが実際に機能するかどうかを試すために、次世代燃料として活用が進んでいるバイオエタノールの分子コンビナートを作ってみました。その結果、酵素同士を最も接近させて10ナノメートルの間隔で配置したところ、非常に速やかに化学反応が進むことが確認されました。  

多数の酵素を複雑に組み合わせれば、本来、自然界では作り出すことができないような特殊な分子も作り出すことができるようなることが期待されています。このような分子コンビナートは酵素反応を使った物質の生産や、細胞内部での酵素反応のメカニズムを解明することにも役立ちそうです。


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2017-11-07 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第676回 海底下2キロメートルの細菌

10月21日配信のヴォイニッチの科学書(有料版)第676回は最近回となってます。
地底には細菌アンダーグランドとも呼べる未知の世界が広がっていることがわかっています。

海底下2キロメートルの細菌
拙著「マンガでわかる菌のふしぎ」(SBクリエイティブ サイエンス・アイ新書)100ページ

今年で就航10周年を迎えた 地球深部探査船「ちきゅう」などを用いた国際的な科学掘削調査により、海底下に生息する微生物の多くが特異な進化を遂げた未知の微生物であることが明らかになりました。

2012年「ちきゅう」による青森県八戸市の沖合80 kmの地点の掘削で、当時の世界最高到達深度、海底下2,466 mまでの土砂の採取に成功し、このような地中深くでも微生物が集団で生きていることが確認されました。地球内部の地下環境は、空陸、海洋とは特性が大きく異なる「第三の生命圏」だと言われており、ここに住む微生物は天然ガスの生成等、地球規模の物質循環に重要な役割を果たしています。

このような深い場所で生きる微生物の生態を調べるために、八戸沖から採取された土砂に、天然ガス成分のメタン(メタノール)などを添加し、現場環境に近い温度、37°Cや45°Cで暗所に30ヶ月静置しました。

あらかじめ、特殊な重い炭素原子と水素原子(安定同位体)を入れておいたところ、それら安定同位体が微生物の作り出すメタノールや二酸化炭素に組み込まれていることがわかりました。このことは地下深くの微生物も外部から栄養を取り込み、排泄をする新陳代謝をしていることを示しています。さらに詳細に分析したところ、これらの微生物は数十年から数百年に1度程度の割合で細胞分裂していることがわかりました。大腸菌は数時間で分裂しますのでそれに比べると非常にゆっくりと生きていることになります。

これらの微生物からDNAを抽出し調べた結果、これらの多くは約2000万年前には陸上や陸地に近い浅い海の海底で暮らしている地下微生物だったことがわかりました。それらが長い年月で地底のマグマによる高温環境を好んだり、過酷な環境を生き抜くために胞子を作ったりする性質を獲得したか、あるいは選別されて生き残ったようです。

海底下2キロメートルの細菌




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2017-10-25 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ワイル磁性体

東京大学物性研究所の研究グループは世界で初めてワイル粒子を磁性体の内部で発見しました。ワイル粒子とは、1921 年にドイツの数学者ヘルマン・ワイルが提唱したワイル方程式で説明される粒子のことです。物質内でワイル粒子は磁石の「N 極」と「S 極」に相当するワイルポイントを対で形成します。

今回、磁性体の中で発見されたワイル粒子は今までにない全く新しい量子機能を持っていますので、磁気メモリや熱電技術開発に関する革新的な進展が期待されます。

ワイル粒子が世界で始めて発見されたのは2015年のことで、この時はヒ素化タンタルという半金属状態の物質中での発見でしたので、この粒子はワイル半金属と呼ばれます。100年前の数式で説明されるだけの存在だったワイル粒子が現界した歴史的な大発見以降、ワイル粒子を有した物質探索や その特性を利用したデバイス開発が世界中で行われています。


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2017-10-23 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第674回 2017年ノーベル賞 自然科学三賞概要

10月7日配信の第674回ではノーベル賞自然科学三賞の概要をお話しました。ノーベル賞については今年も詳細と子供たち向け解説を日教弘ライフサポート倶楽部から配信準備中です。こちらもご期待下さいね。

▼生理学・医学賞 体内時計のメカニズムの解明

 2017年ノーベル生理学・医学賞は地球上のあらゆる生物が地球の自転周期と一致した24時間周期の生命現象を営む、サーカディアンリズムを制御する分子メカニズムの発見でした。
 生物は体内に時計機能を持っていることは古くから知られていました。それによって開花、行動、ホルモンレベル、睡眠、体温、代謝などの生理現象はほぼ24時間の周期で繰り返されています。ですが、体内時計がどのような仕組みで働いているのかは長年のナゾでした。
 今回ノーベル賞を受賞したジェフリーC.ホール、マイケル・ロスバシュ、マイケル・W・ヤングらはショウジョウバエを使った遺伝子レベルの実験によってその仕組みを明らかにしました。 ショウジョウバエの様々な遺伝子について、1日周期で活動が変化する遺伝子を探したところ、ある遺伝子が昼間に活性化し、夜間に沈静化する24時間周期の振動をしていることを発見しました。この遺伝子が突然変異を起こすと、そのショウジョウバエは1日のリズムが壊れることから、この遺伝子は体内時計に大きく関わっていることがわかりました。
 さらに遺伝子を詳細に調べたところ、受賞者らがピリオド遺伝子、タイムレス遺伝子と名付けた2種類の遺伝子がそれぞれPERタンパク質とTIMタンパク質と名付けられたタンパク質を作りだし、この2種類のタンパク質が結合したり離れたりすることによって細胞に24時間の周期性が表れることを確認しました。両者が結合することによって、自分たち自身の設計図であるピリオド遺伝子とタイムレス遺伝子の活動をフィードバック制御していたのです。
 また両タンパク質の結合は朝になってショウジョウバエが光を浴びると分離することもわかりました。このような朝の光によってリセットされるタンパク質の結合と分離のメカニズムが体内時計として私達の生活に1日周期を作り出していたのです。光の全く当たらない部屋で長い時間生活すると次第に体内時計がずれることがわかっていますし、海外旅行などで時差ぼけがおきるのは体内時計の周期と外界の昼夜の不一致が起きることが原因です。



▼物理学賞  重力波の確認

 重力波とは100年前にアインシュタインによって存在が予言されていた宇宙空間に発生するさざ波です。海にさざ波があるのと同様に宇宙空間にもさざ波があるとアインシュタインは予言していたのです。  
 重さのある物体はすべて周辺の空間をゆがませます。ゆがみ方はそこにある物体が重いほど大きくなりますが、非常にわずかなゆがみなので太陽ほど重くなければ人類の観測技術では検出が不可能です。
 空間をゆがませている物体が移動すると周辺の空間のゆがみも一緒に移動するために、ゆがみの波が発生します。これが重力波です。波はさらに観測が難しいので、巨大ブラックホールの衝突のようなとてつもなく重い物が、急加速しながら宇宙空間を移動するすさまじい天文現象が起きなければ観測することは出来ません。  
 人類が初めて重力波の観測に成功したのは2015年(報告は2016年)のことでした。この時には2個のブラックホールが衝突するという、すさまじい天文現象によって放出された重力波を地上に設置された重力波望遠鏡LIGOがキャッチしました。LIGOは長さ4キロメートルの観測装置2基を組み合わせて空間のゆがみを測定する望遠鏡です。  
 重力波は光と同じように天体観測に使用することが出来ます。LIGOが重力波の観測に成功したことによって、人類は新しい宇宙観測手段を手に入れたと言えます。  LIGOは、20カ国以上の1000人以上の研究者との共同プロジェクトで、今回受賞した研究者らはほぼ50年、研究者人生のすべてを重力波検出にかけてきました。



▼化学賞 クールな電子顕微鏡の発明

 2017年のノーベル化学賞はみずみずしい生体分子を観察できるクライオ電子顕微鏡技術の開発でした。 百聞は一見にしかずというフレーズがあるとおり、写真のインパクトは強烈です。かつて、美味しい料理を「シャッキリポンと、舌の上で踊るわ!」なんて複雑なセリフで語っていたところも、最近のインスタ映えに一蹴されてしまいました。
 科学の領域でも、今まで見ることが出来なかったものが画像化された時に知識が大きく前進することはよくあることです。これまで材料工学のような非生物の領域では電子顕微鏡観察技術は著しい進歩を遂げていました。 ところが、たとえば医薬品がタンパク質に結合する場面などの生化学領域においては、人類の映像化技術は分子レベルにまで到達していませんでした。
 電子顕微鏡は観察したいものを真空中において拡大観察するのですが、細胞のほとんどは水のため、電子顕微鏡の真空状態では水が蒸発してしまって干からびてしまうので、その状態で見える物は細胞が生きている時とは違う物になってしまっている可能性が高いのです。
 1990年に電子顕微鏡を用いて原子レベルの解像度でタンパク質の3次元画像を生成することに成功し、これがブレイクスルーとなり、水を急速冷却してガラス化することによって、生体分子が崩壊することを防ぎ、生体分子が真空中でも自然な形を保つようになりました。  
 今ではタンパク質はもちろん、ウイルスの表面の様子までが増加することが出来ます。


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2017-10-22 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第673回 iPS細胞 最近の話題

これまで輸血に頼っていた血小板 をiPS細胞から大量生産する技術を日本の大学発ベンチャーや製薬メーカーなど16社による研究チームが確立しました。外科手術時や交通事故の被害者など止血が必要な患者に使うことを想定し、2018年に臨床試験を開始する予定です。

下の電子顕微鏡写真は左から赤血球、血小板、白血球
ヴォイニッチの科学書 第673回 iPS細胞 最近の話題


血小板は現在は全て献血でまかなっていますが、人口減などにより将来的に不足することが予測されています。さらに、iPS細胞から量産した方が献血で得た血液から取り出すよりもコストが低く、感染症の危険もありません。保存期間も献血血小板が4日しか保存できないのに対して、iPS細胞から作った血小板は無菌なので2週間くらいは保存できるようです。  

もとよりiPS細胞の用途として最も有用と考えられていた、患者数は少ないものの、重篤な難病治療薬の発見も成果が出始めています。

京都大学iPS細胞研究所が筋肉の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の治療薬候補を7000種類の物質の中からiPS細胞を使って選び出し、臨床試験に入ることを決定しました。

この病気は200万人に一人の割合で発症し、日本国内には80人しか患者がおらず、治療薬は存在していません。患者数の少ない病気は研究方法の開発が難しく、コストもかかるためこれまで大手製薬メーカーでは積極的に取り組まれていませんでした。iPS細胞を使えば試験管内で病気を再現できるため、研究効率が著しく向上することが期待されていましたが、期待通りの成果が出始めました。  

iPS細胞を使う再生医療においては、iPS細胞から作り出した臓器細胞を患者に移植しますので、輸血同様に拒絶反応が起きる可能性があります。そのため、多くの人にiPS細胞を使った再生医療を提供するため、輸血における血液型と同じように多くの細胞のバリエーションを揃えることが必要です。京都大学を中心に細胞のストックが進められていますが、このたび日本人の30パーセントカバーにめどが立ったと言うことです。  

心筋梗塞の治療に使うような筋肉細胞はすでに実用化されていますが、沈黙の臓器、体内の化学工場と呼ばれる非常に複雑な肝臓をiPS細胞で再現することに東京大学の研究者らが成功しました。ヒトのiPS細胞から3種類の肝臓細胞を作り、さらに血管の細胞などを加える工夫をして人体の肝臓と同様の代謝機能を持つ肝臓を培養皿の上で作り出したということです。


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2017-10-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

バイオフォトン

9月2日配信のヴォイニッチの科学書 第669回で、ショウジョウバエは脳で光を感じているのかも、という話題を紹介しましたが、それどころか、生物の脳の内部で光子が生み出されているという研究成果が報告されました。 

脳の活動はこれまで電位差、つまり電流で行われていると考えられていましたが、光通信も行われている可能性が出てきた、ということです。もっとも、ホタルイカなど光を使って通信をする動物は決して珍しいものではありません。

哺乳動物の脳が光子を出しているらしいことが最初に発見されたのはもう20年前のことです。その後、光子レベルのわずかな光を検出する観測装置がいろいろと発明され、脳が光を出している証拠が集まりつつあります。脳が出す光子のことをバイオフォトン(生体光子)といいます。哺乳類のバイオフォトンの波長は200から1300ナノメートルの間、つまり、近赤外線から可視光線をはさんで紫外線まで、非常に広い波長範囲でバイオフォトンを生み出していることがわかっています。

光で脳内通信するためには光ファイバーのような構造が必要です。カナダ、カルガリー大学の研究者らは神経細胞の軸索(長い糸状になっている部分)の光学特性を研究し、2ミリメートルの長さの軸索は46%から96%の伝達効率を持っていることを明らかにし、神経細胞を光ファイバーとして数センチメートル以上にわたって光子信号を伝達することが可能であることを明らかにしました。

バイオフォトン バイオフォトン

今後は脳組織の光学伝達特性に関する研究が計画されています。たとえば、スライスした脳の片方に細胞1個のピンポイントで光を照射し、スライスの反対側に現れている神経細胞のどれかが光るかどうかを観察するような実験です。脳についてはこれまでの電位差で活動を矛盾無く説明することが出来ており、もし、脳が光通信能力を持っていたとしても、それが何のためなのかは不明です。光通信はこれまで知られている脳の記憶や感情ではなく、何かバックグラウンド的な機能に関わっている可能性もあります。

2017-09-29 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

二酸化炭素を完全回収する火力発電

火力発電所で発生する二酸化炭素を大気中に放出させない技術の研究が行われています。方式はいくつかありますが、「アラム・サイクル」方式の実証実験用発電所が米国テキサス州でまもなく稼働します。  

この方式の特徴は酸素、二酸化炭素、天然ガスを同時に燃焼させる点にあります。高温と高圧によって二酸化炭素は、液体と気体の中間の特性を持つ超臨界二酸化炭素という状態になります。そして、通常の火力発電所ではお湯を沸かして水蒸気で発電タービンをまわすところ、水の代わりに超臨界二酸化炭素でタービンをまわします。 タービンをまわした高温の二酸化炭素は燃焼炉に戻され、熱を再利用します。

お湯を沸かさないこの方式では発電所の構造が簡単になり、エネルギーロスも少なくなります。問題は現時点ではまだコストが高いことで、化学物質やフィルターによる二酸化炭素回収装置を備えた火力発電所の電力が1キロワット時あたり1056ドルであるのに対しアラム・サイクル方式では1600ドルになると予想されています。これは通常の二酸化炭素を回収しない天然ガス発電と比べると、お話にならないくらい高価な電力になります。


2017-09-28 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

太陽から2兆kmまで近付く星

ESAヨーロッパ宇宙機関の天体位置測定衛星「ガイア」は、10億個以上の星の座標を決定し、200万個以上の星について距離と天球上の動きも測定しました。

それらの星の一部について、今後500万年間の動きを予測したところ、現在、へび座の方向63光年彼方にあるグリーゼ710が130万年後に太陽から2兆3000億kmの距離まで接近することがわかりました。

最接近時には太陽系の内部に進入し、彗星の巣といわれているオールトの雲の中を突き進むことになり、オールトの雲を激しくかき回すことによって彗星の軌道が予測できない変化をするかもしれません。

下の写真はグリーゼ710太陽に最接近した時に、グリーゼ710から眺めた太陽の想像図です。
太陽から2兆kmまで近付く星


2017-09-27 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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おびおのプロフィール

おびおがしかし

Author:おびおがしかし
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
苦手な食べ物:シーチキン、レバー、昆虫系
Web:ヴォイニッチの科学書
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