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日本人の好きな食べ物と病気と遺伝子の関係

理化学研究所と東京大学の共同研究グループは、日本人約16万人の遺伝情報を用いた大規模なゲノム解析により、食習慣に関連する遺伝子が存在すること、そして、それらがさまざまな病気とも多面的に関連することを明らかにしました。

これまでに、アルコールやコーヒーなどいくつかの食習慣に、遺伝子の個人差が影響していることが明らかになっていますが、日本人においては、その全容は明らかになっていませんでした。

日本人の好きな食べ物と病気と遺伝子の関係

今回、共同研究グループは、飲酒(飲酒量・飲酒歴)、飲料(コーヒー、緑茶、牛乳)の摂取頻度、食品(ヨーグルト、チーズ、納豆、豆腐、魚、小魚、野菜、肉)の摂取頻度の13品目について、遺伝子の個人差との相関を解析しました。その結果、10品目について、その食品を好む遺伝子的特徴が明らかになりました。さらに、そのうちの5カ所は、病気や臨床検査結果とも関連があることが分かりました。最も影響の大きかった遺伝子変異はアルデヒドデヒドロゲナーゼ2酵素の遺伝子で、9品目(飲酒歴・飲酒量・コーヒー・緑茶・牛乳・ヨーグルト・納豆・豆腐・魚)の食習慣に影響することがわかりました。同時にこの遺伝子変異は心筋梗塞や2型糖尿病などの12種類の病気、HDLコレステロールや白血球数などの29種類の臨床検査値に対しても関連を持っていました。

たとえば、飲酒量とヨーグルト摂取頻度は、負の遺伝的相関を示しました。これは、飲酒量の多い人(少ない人)とヨーグルトをあまり食べない人(よく食べる人)は、遺伝的背景を共有しているということを表しています。同じ成分(大豆から作った豆腐と納豆、牛乳から作ったチーズとヨーグルト)から作られた食品の摂取頻度間に、強い正の遺伝的相関が観察されること。つまり、豆腐をよく食べる人と納豆をよく食べる人およびチーズをよく食べる人とヨーグルトをよく食べる人は、それぞれ遺伝的背景を共有していることなどが分かりました。

今まで、遺伝子の個人差は病気の原因と紐付けて解析されることがもっぱらでしたが、個人の食習慣に影響する遺伝子が判明しつつあることで、遺伝的背景が、従来の予想よりもはるかに多くの食習慣に寄与していることを示しています。

遺伝子変異は人種ごとに、あるいは国ごとに偏りがありますので、どのような国や地方でどのような食べ物が好まれるかは、かなりの部分を遺伝子が決定しているといえます。


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2020-02-26 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

アフリカ人にもネアンデルタール人DNA

アフリカ人にもネアンデルタール人DNA

約6万年前、現生人類のホモ・サピエンスがアフリカを出て世界各地に広がっていきました。人類はアフリカだけでなく、世界の各地で誕生しましたので、ホモ・サピエンスは拡散の過程で、元々そこで生活していた人類、たとえばネアンデルタール人 やデニソワ人 などと出会って交雑を繰り返しました。交雑した記録は私たちのDNAの中に残っています。アジア人のDNAにはネアンデルタール人のDNAが2%、デニソワ人のDNAも数パーセント含まれています。このホモ・サピエンスの一方的な拡散の考え方が正しいのであれば、アフリカから出ていない人類の一部集団はネアンデルタール人などのDNAは持っていないはずで、実際これまでそのように考えられていました。

ところが、米国プリンストン大学の最新の研究によると、現代のアフリカ人もネアンデルタール人のDNAを持っていることが明らかになりました。 詳細に解析したところ、ホモ・サピエンスの31億塩基対のうち、アフリカ人では約1700万塩基対は、ネアンデルタール人に由来することがわかりました。これはヨーロッパ人が持つネアンデルタール人DNAの3分の1の量に相当します。さらにそのネアンデルタール人DNAの由来は2通りに分けられ、ひとつはネアンデルタール人がアフリカに渡って来て交雑したものです。しかしこれについてはまだ明確な証拠が得られていません。もうひとつはアフリカからヨーロッパに拡散しそこでネアンデルタール人と交雑した後に、アフリカに戻って来てアフリカでネアンデルタール人のDNAを拡散させたホモ・サピエンスの存在です。こちらについては、アフリカ人の持つネアンデルタール人のDNAとヨーロッパ人の持つネアンデルタール人のDNAが似ていることが証拠になります。

どうやらアフリカで誕生したホモ・サピエンスはアフリカとユーラシアの間を行ったり来たりしていたようです。そのように、アフリカの人々は断続的にそのほかの人類と交雑した結果、DNAは非常にこんがらがったものになってしまっている可能性が出てきました。

人類が世界にどのように拡散したかに関する研究は、アフリカ人はネアンデルタール人とは交雑しないと考えて、そのDNAとネアンデルタール人やデニソワ人のDNAを比較して、人類の拡散ルートを描いていました。しかし、今回の研究が正しいとすると、これまで科学者が基準にしていたホモ・サピエンスのDNAはピュアなホモ・サピエンスのDNAではない、ということになってしまいます。

さらにややこしいことに、人類がアフリカを出たのは6万年前だけではなく、20万年前にも出アフリカを行っていますので、この時にネアンデルタール人にまき散らされたホモ・サピエンスのDNAをネアンデルタール人オリジナルのDNAと見誤っている可能性も出てきました。

DNAの解析技術の向上と、解析した人数の増加に伴って、多くのDNAデータが集まった結果、いろいろな新たな発見があり、異なる種の人類同士があちこちで交雑しながら、各地を行ったり来たりしていたことがDNAから見えてきました。私たちはこれまで、ホモ・サピエンスは何らかの目的意識や必然性を持ってアフリカを勇気を持って脱出し異国を目指した、というストーリーを構築しがちでしたが、決してそうではなく、けっこうぐちゃぐちゃな行き来を何万年にもわたって行っていたようです。


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2020-02-25 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

地球生命は孤独かもしれない新シナリオ

宇宙にどのようにして生命が誕生したのか。特に、DNA に遺伝情報を保存して次の世代に伝えるという高度なメカニズムが、非生物的にどのようにして誕生したのか、そのメカニズムを解明することは非常に難しい問題だと考えられます。

生命の起源で有力な説として、RNA ワールドがあります。現生生物は、主に遺伝情報はDNAが担い、代謝などの生物的活性はタンパク質が担っていますが、RNAは一つでその二役の機能を持つため、最初の生命はRNAから始まったとする説です。これは広く支持されている説ですが、そもそも最初に生物的活性を持つRNAがどのように誕生したかは、説明できていません。RNAが遺伝情報を保存するには多数の分子が暗号の規則に従って配列する必要があります。生命活動を可能にするだけの高度な情報をもった長いRNAが偶然できあがる可能性はゼロに等しいといえます。

東京大学の研究者らは、最新の宇宙論に基づいて生命誕生の新たな仮説を打ち立てました。1980年代に提唱されたインフレーション宇宙論は多くの宇宙論研究者に支持されている理論です。天の川銀河に太陽のような星は約一千億個、138億光年の半径内に約10の22乗個あると計算されますが、このような計算によれば、インフレーションで拡がった宇宙には、10の100乗個以上の星があることになります。まず、これだけ大量の星があるなら、そのどこかでは、ランダムな化学反応だけで偶然に生命は誕生できるのではないか、と仮説を立てました。

次に、ランダムな反応で、生命誕生に必要な長さと情報配列を持つRNAが生まれる確率と、宇宙の中の星の数を結びつける方程式をつくりました。RNAとしての機能を持った分子が成立するには、最低でも40個程度の分子が結合する必要があると考え、計算を行うと、そのようなRNAが偶然に生まれるためには、宇宙の星の数は10の40乗個ほど必要であることがわかります。100個の分子が必要であれば、10の180乗個の星が必要となります。これは、私たちが観測可能な星の数である10の22乗個をはるかに超えますが、インフレーション宇宙の大きさを考えれば十分に可能な数字です。つまり、「インフレーション宇宙のどこかで生命が生まれればいい」と考えるなら、ごく普通の化学反応で生命は誕生しうるということです。

この仮説が正しいとすると、ランダムな化学反応という、十分に起こりうると期待できるプロセスだけで、宇宙の中に自然に生命が発生できることを示したことになります。一方でこのシナリオに基づけば、生命を育む惑星は、太陽系や銀河系どころか、我々が観測可能な半径138億光年の宇宙の中で、この地球ただ一つということになります。


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2020-02-24 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

レム睡眠とノンレム睡眠では情報伝達の方向が逆

睡眠には、夢を見ているレム睡眠と、脳の休息に重要なノンレム睡眠のふたつの睡眠状態があります。それぞれ特徴的な脳波があり、レム睡眠では脳幹で発生するP波 や、ノンレム睡眠では海馬で発生するリップル波 が挙げられます。どちらの脳波も、記憶の固定に重要であると考えられています。睡眠の意義に迫るためには、それらを統合的に理解する必要があります。今回の研究では、世界で初めてマウスでのP 波の計測に成功し、さらに、P 波がレム睡眠だけでなく、ノンレム睡眠でも発生していることも明らかにしました。P 波は夢を作り出しているとも考えられており、今後記憶研究のみならず、夢を見るメカニズム解明にも繋がる可能性を秘めた成果です。

レム睡眠とノンレム睡眠では情報伝達の方向が逆

P波とリップル波を同時に計測したところ、ノンレム睡眠時は、海馬リップル波が起こった後P 波が観察されますが、一方レム睡眠時には、P 波が起こった後、海馬リップル波が高まることが明らかとなりました。この結果は、異なる睡眠状態では、脳幹と海馬の脳領域間での情報伝達方向が逆転することを意味しています。これまで、レム睡眠もノンレム睡眠も、どちらも記憶の固定に重要であると考えられていましたが、両者の生理的役割は異なっていることが示唆されており、今後の睡眠機能の解明に貢献することが期待されます。


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2020-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

肥満も地球温暖化の一因だった

世界的な肥満の蔓延は温室効果ガスの排出量を増やし、気候変動の一因となっている可能性を指摘する研究報告を、デンマーク・コペンハーゲン大学の研究者らが発表しました。酸素に依存して生きる他の生物と同様に、ヒトは生命を維持するために必要な代謝プロセスによって二酸化炭素を産生し、産生する二酸化炭素の排出量は、代謝率や体のサイズ、個体の総数によって決まります。その結果、肥満の人は、適正体重の人よりも、二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの排出量が最大で20%多いと推定されました。肥満の人は、体重を維持するためのエネルギー消費量が多く、より多くのエネルギーを摂取する必要があります。そのため、肥満の人が増えると、食料の生産量と輸送のための燃料の使用量も増加します。さらに、肥満の人が自動車や電車、飛行機などを使って移動する際にも、より多くの燃料が必要になります。 


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2020-02-20 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

最新レクテナ 用高速応答ダイオード

光を直接電力に変換するデバイスの一つに「rectifying antennaレクテナ」があります。これは、電波を直流電流に変換する装置です。レクテナにおいて、これまでに電子レンジの波長域(マイクロ波領域(数GHz))では90%以上の電力変換効率が得られていましたが、太陽光のような可視光波長域(数百THz~)では、このような高い周波数で作動する高速応答ダイオードがないため作動できませんでした。東北大学の研究グループは金属―絶縁体―金属トンネルダイオードにおいて、トンネル層と金属の間に自然酸化膜を意図的に成長させることでダイオードの高速応答性能が大幅に向上し、従来の10,000倍の光電変換効率向上が可能であることを明らかにしました。

最新レクテナ 用高速応答ダイオード

レクテナ=マイクロ波を直流電流に整流変換するアンテナのことで、マイクロ波によってアンテナに誘導された電流をダイオードで変換します。レクテナは高効率でマイクロ波のエネルギーを電流に変換でき、実験室環境では80%以上もの効率が達成されていますが、一般的には70%強とされています。効率が高く、構造がシンプルなため価格も安いことから、レクテナは宇宙太陽発電所からのマイクロ波電力伝送に使用可能であるとされています。また、ガンダムSEEDなどにおいて、核融合炉を使わず、電力で駆動されるモビルスーツに母艦からレーザー光線のようなもので充電されるシーンが登場しますが、あの技術もレクテナだと考えられます。現実世界で最も多用されているレクテナの用途は小型のレクテナ素子を電力源とするRFID タグ、非接触式ICカード(Suicaなど)等があり、これらは。電子読み取り機付近に素子がある場合、読み取り機からの電波はレクテナによって受信され、ICを起動して読み取り機にデータを送信します。
 
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2020-02-19 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

超巨大ブラックホールの詳しい観測に成功

英ケンブリッジ大学の天文学者らは、X線の“エコー”を利用した技術を用いて、活動銀河中心の大質量ブラックホールを詳しく観測することに成功しました。

観測対象となったブラックホールは、地球から約10億光年離れた「IRAS 13224-3809」と呼ばれる銀河の中心にあるブラックホールです。この超大質量ブラックホールは、数百万℃のガスなどが回転する円盤に囲まれ、また中心からは10億℃を超えるX線コロナが噴き出しています。このX線の振る舞いを観測することによって、ブラックホールの「事象の地平線(=光さえ逃れることができない領域との境界)」周辺の観察に成功しました。

今回の観測対象となったIRAS 13224-3809は中心領域がX線やガンマ線を非常に多く放出する「活動銀河」のひとつです。研究チームは、欧州宇宙機関ESAのX線観測衛星「XMM-Newton 」による観測データを用いました。 ブラックホールから放出されるX線の一部は、直接宇宙に拡散しますが、別の一部のX線は降着円盤にぶつかって、ブラックホール周辺の環境を抜け出すまでにやや遠回りします。その結果、地球から観測すると両者の間に時間差が生じます。これを観測する手法を「反響マッピング」といいます。反響マッピングをコンピューターで解析することによって、ブラックホールの質量と回転速度を算出することができます。

その結果、IRAS 13224-3809には太陽200万個分の質量が含まれており、それが物理法則で最大とされるスピードの97%という超高速で回転していると結論づけられました。このような超巨大ブラックホールが形成されるきっかけが何なのかはわかっていません。超巨大ブラックホールが形成される仮説の一つとして、銀河同士が次々に衝突して巨大化する説があります。もしそれが本当であれば、銀河中心のブラックホールの回転には、複数のブラックホールが合体した痕跡が残されているはずです。今回の観測の究極的な目的は、ブラックホールの質量とその回転の詳細を明らかにすることによって、銀河中心の超巨大ブラックホールがどのようにして形成されたのかを明らかにすることです。


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2020-02-18 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

有機半導体分子の自動整列

半導体の製造には単結晶という状態の物質が必要です。単結晶とは、1個の結晶内のどの部分においても原子配列の向きがまったく同一であるもののことで、単結晶では電子が移動しやすくなります。電子が移動しやすければしやすいほど、質の良い半導体だと言えます。

東京大学、東北大学、大阪大学、筑波大学、広島大学、スタンフォード大学などの共同研究グループは、有機半導体単結晶の超薄膜を印刷プロセスで基板上に作成した時、出来上がった半導体の中で分子がどのような配置になっているかを0.1ナノメートル、つまり、原子が見えるほどの精度で観測することに成功しました。インクの中に半導体の分子を入れて、普通のインクジェットプリンターのように印刷するとインクは蒸発し、基板上に半導体分子だけが残って、10ナノメートルくらいの厚さの回路ができます。

半導体に使われる有機化学物質の分子は、同一の構造式を有する有機分子でも、結合の回転の自由度に起因する分子の形状(立体配座)の違いや、多数の分子が集合した際の並び方(集合体構造)の違いによって、その化学的・物理的特性が異なります。したがって、半導体により適した分子を開発するには、分子式に着目するだけでなく、分子の集合体としての性質を最適化する必要があります。

半導体超薄膜中では、1平方センチメートルあたりに100兆個以上の分子が自ら集合することで高品質の単結晶が形成されています。電気の流れやすさは、この膨大な量の分子が半導体薄膜の中でどのように配列しているかが大きく関係していると思われていましたが、10ナノメートルの厚さの分子は、あまりに小さなスケールであるために、どのようになっているかよくわかっていませんでした。

今回、研究グループは、国内外の放射光施設を駆使してX線の反射や吸収の精密計測に取り組みました。その結果、有機半導体単結晶の基板界面の分子の形状を0.1ナノメートルの精度で決定することに成功し、基板に物理吸着するだけで、100兆個以上におよぶ全ての分子の形状が同じように変化することを世界で初めて明らかにしました。また、超薄膜の厚さを制御することで、分子形状が変化し、電子の移動度が変化することに伴って、最高で4割も向上することがわかりました。

有機半導体に使用される有機化学物質は複雑な構造をしていることが多く、多くの場合構造が複雑になると構造が固くなると思われていましたが、今回の研究では、そのような物質でも物理吸着現象に伴って、分子の形状が変化することがわかりましたので、今後、材料界面を制御することで、有機エレクトロニクス材料のさらなる高性能化・高機能化が期待されます。

有機半導体分子の自動整列
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2020-02-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

低温で二酸化炭素を資源化する手法を発見

早稲田大学の研究グループは、二酸化炭素と再生可能エネルギーで得られる電力・電解水素を、常温から100度台と低い温度で反応させて資源化する全く新しい手法を開発することに成功しました。本手法により、欲しいときに欲しいだけ、二酸化炭素を資源化できるようになります。

 これまでの同様の研究では、二酸化炭素を資源化するためには、400度程度の温度で、水素と固体触媒を用いて還元し、一酸化炭素やメタンなどへ転換しなければなりませんでした。

今回の研究では、ルテニウムの微粒子を、セリウム酸化物の上に微細に載せた固体触媒を新たに開発し、これに外部から弱い直流電場をかけると、二酸化炭素が効率よく一酸化炭素やメタンへと資源化されるというものです。今回の発明のポイントは、半導体材料であるセリウム酸化物に直流電場を与えると、その表面でプロトンが動くという「表面プロトニクス」という現象を発見したことにあります。


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2020-02-14 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

天の川銀河のハローに潜む想像以上に高温のガス

銀河の周囲には、星やガス、ダークマターで構成されている巨大な球状構造「ハロー」が存在しています。ハローは隣接する銀河をつなぎ合わせるように広がっていて、銀河の進化に重要な役割を果たしていると考えられています。

米国・オハイオ州立大学の研究チームが行った、ESAヨーロッパ宇宙機関のX線観測衛星「XMMニュートン」による観測から、天の川銀河のハローが、温度の異なる3種類のガス成分で構成されていることを明らかになりました。そのうち最も高温のガスは、これまで考えられてきたよりも10倍も温度が高い、1000万度に達するものもあることが明らかになりました。どのようにしてハロー内のガスがこれほどの高温になったのかはわかっていません。

今回の発見は、非常に活動が活発で強力なエネルギーを持つ遠方銀河の中心核である「ブレーザー」からの光を利用したものです。50億光年彼方のブレーザーから届いたX線が天の川銀河のハローを通過すると、そのX線中にハロー内のガスの特徴に関する情報が含まれます。そこで、ブレーザーの光を分析し、特定の温度にしか見られない特徴をもとにしてガスの温度を決定することができました。ハローのガスの温度は1万~100万度の範囲とこれまで考えられてきましたが、このような、高温の天の川銀河のハローガス成分が確認されたのは初めてのことです。

天の川銀河のハローに潜む想像以上に高温のガス

NASAのX線天文衛星「チャンドラ」が撮影したおとめ座の方向約9500万光年彼方の渦巻銀河「NGC 5746」。銀河を取り巻く高温ガスが光って見えます。天の川銀河も外側からX戦で観測するとこのように見えるはずです。


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2020-02-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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おびおのプロフィール

おびお

Author:おびお
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
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