FC2ブログ

Chapter-503 ご注文はアンモニアですか?

 アンモニアは無色の気体で特有の刺激臭があります。1個の窒素原子と3個の水素原子が結合した構造をしています。工業的には20世紀初頭に発明されたハーバー・ボッシュ法という合成方法によって、空気中の窒素から作り出されます。

 アンモニアの世界生産量は2億トン近くもあり、世界中の赤ちゃんからお年寄りまでが毎日1トン近くのアンモニアを使用している量に相当します。アンモニアのほとんどは農業用の肥料になります。肥料として重要な三つの元素は窒素、リン酸、カリですが、窒素は空気中に大量に存在するにもかかわらず、人間も植物も空気を吸い込んで窒素を体内に吸収することはできません。一方で小麦などの穀物は生育のために大量に土壌中の窒素を使用します。

 現在はもっぱら肥料として、そして一部が火薬の原料として使用されているアンモニアですが、最近、エネルギー源としての使用や、来たるべき水素社会の水素の貯蔵庫としての用途が注目を集めています。

 太陽光、太陽熱、風力などの自然の力を利用して作り出された電気は蓄えたり、蓄えた状態で運搬することが困難です。備蓄や運搬が容易な化石燃料の代替となるエネルギー源として最も有望なのは水素ですが、水素は気体ですので、多くのエネルギーを消費して極めて低い温度や極めて高い温度にしなければ高い密度で蓄えることができません。そのような高密度の水素は安全性の点でも問題があります。そこで、水素を何か別の物に変換して貯蔵、輸送しようとする研究も進んでいます。このような水素を蓄える性質の物質を水素エネルギーキャリアといいます。

 1個のアンモニア分子には3個の水素を蓄えることができ、プロパンガスと同じくらいの圧力で液体となります。現在の水素源として使用されているメタノールと比較すると、重さあたりに取り出せる水素の量はアンモニアの方が多く、アンモニアから水素を取り出すために必要なエネルギーはメタノールから取り出すために必要なエネルギーの2/3ですみます。

 ハーバー・ボッシュ法はエネルギーを大量消費する方法ですが、その点につても日本人による新しい触媒の発見によって室温でアンモニアを製造することも可能になっていますし、太陽エネルギーを使って水を分解して水素を取り出し、それを原料にしてアンモニアを合成する全く新しい方法も考え出されています。アンモニアは爆発も燃焼もしにくいため、水素を家庭に蓄えるのに比べれば、直接吸い込んだりしなければはるかに安全である点もメリットです。



「ヴォイニッチの科学書」は2001年に配信を開始した世界初の日本語によるインターネット科学ラジオ番組です。毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。
無料版(短縮版)は iTunesStoreインターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。
有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。
スポンサーサイト
2014-07-07 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
ホーム

おびおのプロフィール

おびお

Author:おびお
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
ツイッターアカウント:@cradiobio
ものことごはん:http://obio2.blog.fc2.com/

スヴァールバルの画像保管庫

スポンサードリンク

スポンサードリンク

ワトソンの検索窓

ロザリンド・フランクリンのダイアリー

06 | 2014/07 | 08
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

QRコード

QR