赤色2号が偶然脳腫瘍に効果があった

発がん性があるのではないか、とされている赤色2号色素が脳腫瘍に効果があるかもしれないというお話。

アスビオファーマの研究者らがネズミを使った実験で、外科的治療が難しく、有効な治療方法の無い悪性脳腫瘍の治療に食用の赤色2号色素が有効かもしれないことを見いだしました。研究の発端はがんの悪性化を促進する酵素に着目し、この酵素を阻害する分子が見つかれば、その分子は脳腫瘍の治療効果を持つかもしれない、という発想でした。そこで、約2万6000種類の化学物質を手当たり次第にこの酵素と混ぜて、酵素活性を低下させる物質を探しました。

その結果見つかったのが、CSB4380という物質で、合成着色料として使われている赤色2号でした。試験管内試験で赤色2号をネズミの脳腫瘍細胞に添加したところ、細胞の増殖や移動を妨げることが確認され、動物実験では脳腫瘍の細胞を脳に移植した後に、赤色2号を脳内に注射すると腫瘍の形成が約半分に抑えられることもわかりました。

ただし、赤色2号は脳腫瘍細胞内には侵入しにくい分子なので、着色料の入った食品をたくさん食べても、脳腫瘍を抑える効果にはつながりません。今後は赤色2号の構造を改変して、薬として使える物質にする研究が進められます。

赤色2号が偶然脳梗塞に効果があった
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2016-02-29 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

しっかり考えてから動くことと、走りながら考えること

しっかり考えてから動くことと、走りながら考えること

雑談です。

こないだ、早稲田大学が無線給電EVバスの実証試験を始める・・・という記事を書いていて思いました。
中国でオリンピックが開催されたとき、EVバスが運行されましたけど、あのときは巨大なバッテリーをとっかえひっかえしながら力業で走らせてましたよね。無線給電の技術は未完成だし、バスを1日中走らせるほどの容量を持った二次電池を積むことも現実的には不可能だから、だったら車庫に大量に充電器を置いて、大量の予備バッテリーを充電待機させておいて、バッテリーごと載せ替えればいいじゃん、みたいな。

ま、巨大なミニ四駆ですよね。(バスは二駆だと思いますけど)

ところで、わたしは走りながら考える・・・というか、考える能力があまりないので走る以外にテが無い・・・ことが多い気がします。その結果、一瞬で頓挫してしまったあれやこれやが山積みです。で、その対極にあるのが「しっかり考えてから動く」です。

「走りながら考える」と「しっかり考えてから動く」の使い分けってご存じですかね???
最近のビジネス書では、仕事のできる人は走りながら考える、的なことが良く書かれていますけど、そんな単純な話しではないですよね。やっぱりケースバイケースで使い分けないとです。

取り組むべきものがライバルのいない最先端なら、そりゃ走りながら考えるしか無いでしょ、まずどっちでも良いから勘で一歩目を踏み出して、二歩目をどっちに踏み出すかはそのあとで考える・・・と。

一方で市場が成熟していたり、明らかに先行しているライバルがいる時にはしっかり考えて一歩目を踏み出さないと・・・そもそも、踏み出すかどうかも考えないと・・・ですよね。

んでもって思ったのが、EVバスは「走りながら考える」研究テーマだったのに、日本は「しっかり考えて」しまったね・・・って。無線給電で自動車を走らせるのなんて、韓国やドイツではとっくの昔にやっちゃってることなので。中国の巨大ミニ四駆は一見バカっぽかったけど、
「もういいよこれで、電気で走ればなんだっていっしょだよ、電池の交換だって人件費安いんだから全部人力でいいし」
って。とても洗練されているとは言えないですけど、なんか研究していて楽しそう。しかも、おそらくは適当に一歩目を踏み出した人たちは、他の人たちがしっかり考えている間に、たくさんの失敗や反省をしたはず。

机の上で考えることと、実際に行動して失敗すること、やっぱ後者の方が次につながりそうですし、そもそも、なんだかやってて楽しそうですよね。
2016-02-29 : 雑談 : コメント : 0 :

Chapter-586  ブラックホールは明るかった

2016年1月30日 Chapter-586  ブラックホールは明るかった

ブラックホールと普通の星がペアになって連星系をX 線連星といい、ブラックホールに向かってペアとなっている星からガスが流れ込み、降着円盤というガス円盤が形成されます。

X 線連星の中でも、不定期にアウトバーストと呼ばれる急激な増光現象を起こす天体をX 線新星といいます。その内の一つである「はくちょう座V404 星」は地球に最も近いブラックホール連星系です。この天体が2015年6 月中旬から7 月初旬にかけて26 年ぶりにアウトバーストを起こしました。 下のイラストはNASAによる V404の想像図です。

Chapter-586  ブラックホールは明るかった
NASA's Goddard Space Flight Center

NASAのガンマ線バースト観測衛星Swift、国際宇宙ステーション搭載の全天X 線監視装置MAXI、そして地上からの観測によって、これまで知られていなかった二つの新事実が明らかになりました。

一つ目はブラックホールの激しく、規則的な光度変動を可視光で初めて発見したことです。このことはブラックホールもまたたいて見えることを意味します。これまでのブラックホール観測はブラックホール周辺の物質がブラックホールに落下するときに放射されるX 線で行われていましたが、可視線で測光が可能であれば、観測装置は豊富にあり、これまで以上に多くのデータを収集することが可能になります。

もう一つの発見は、今まで考えられていたよりも10 分の1 以下の弱い活動の時にもブラックホール周辺からるエネルギーの規則的な変動現象が起きていたことです。ブラックホール近傍から出るエネルギーの変動は、これまでは激しく活動するブラックホールの象徴として観測されていましたので、エネルギーの変動を説明する理論も、ブラックホールが激しく活動していることを前提としたものでした。

これらの新たな発見を元に、これまでのブラックホールに関する理論を見直すことによって、X 線連星の研究のさらなる発展を促すものであると考えられます。 上の NASA のイラストは今回の発見を元に描かれたもので、これまで、中心が黒く、その外側にエックス線で輝くガスが模式的に描かれることが多かったX 線連星のブラックホールですが、このイラストではブラックホールそのものが可視光線で輝く(またたく)様子が表現されています。



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2016-02-28 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

白内障点眼薬は誕生するか

白内障は眼の水晶体質が灰白色に濁り、光が目の中で散乱したり、透過光が減少したりするため、視力が低下する病気です。治療薬は見つかっていませんでしたので、現在の治療方法は外科的なものに限られていました。

ここでついにミシガン大学などの研究者が白内障点眼薬になるかもしれない分子を発見しました。水晶体の主成分はクリスタリンというタンパク質です。健康な人ではクリスタリンは規則正しく並んで光をまっすぐに通過させますが、白内障患者ではクリスタリンが団子のように集まってしまい、水晶体が濁ってしまいます。クリスタリンは水晶体の中で役割分担していますが、その中に水晶体を安定な状態で保つ役目をするクリスタリンがあります。研究者らはこの水晶体安定化クリスタリンに結合する性質のある分子を発見し、それを白内障を発症させた実験動物マウスに点眼したところ、かたまったクリスタリンが元の状態にほぐされて、2週間で白内障の症状が改善することがわかりました。人間での効果は今後の研究で確認しなければ鳴りませんが、この分子は白内障治療用の点眼薬の開発につながると期待されています。

一方で、目の研究者以外の科学者もこの発表を興味深く見ています。というのも、タンパクがかたまりを作ってしまうことが原因になる病気は多数あるものの、これまではいったんかたまったタンパク質は戻せないと考えられていたのです。つまり、ゆで卵になってしまうと元には戻せないので、ゆで卵にならないように、あるいはせめて、半熟の状態で止めるような薬をこれまでは考えていたということです。

今回、白内障でかたまりを作ってしまったクリスタリンをほぐすことができる分子が発見されたということは、これまで治療を諦めていた病気も治療薬を開発できる可能性があるということを示しているからです。
2016-02-28 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

細胞内のアナログ・デジタル変換機構

ケガをしてもいつの間にかた治っています。それは細胞が「皮膚が傷ついた」という情報を受け取って、細胞増殖するという適切な応答をしているからです。

この時に細胞は「細胞分裂するかしないか」という判断を行っています。ただし、半分だけ細胞分裂する、とかいうことはできませんので、細胞の反応は自分は分裂して傷をふさぐか、分裂せずにそのまま待機するか、本質的には0か1かのデジタルな現象です。
分裂するか待機するかは1個の細胞の中に大量に存在しているERKと呼ばれるタンパク質の直接民主制による多数決で決まります。従って、細胞分裂に賛成するERKの数はケースバイケースでアナログ的に変化します。ということは、細胞の内部ではERKによる投票数というアナログな反応を細胞増殖するかしないかというデジタルに変換する、A/D変換が行われていることを意味しています。

ERKは普段は細胞質にいますが、細胞分裂する側に投票すると「リン酸化ERK」に変化し、核へ移動します。理化学研究所などの共同研究グループが、核への移動に閾値があることがアナログをデジタルに変換するメカニズムであることを明らかにしました。細胞質から核へ移動する門の役目をする「核膜孔複合体」の開閉が閾値を持っており、アナログ的に進行するERKの投票(リン酸化)があるレベルに達するとゲートが開いてERKが一気に移動し、それがデジタル的な細胞の応答を生み出していたのです。
2016-02-28 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

Chapter-585 120年前のビールの味

2016年1月23日 Chapter-585 120年前のビールの味

120年前のビールは「奇妙なハッカ味」 カナダ研究者が試飲  

大西洋の海底で昨年11月、約120年前に製造された瓶入りのビールが見つかたっそうですが、カナダ、ダルハウジー大学の研究者が試飲結果を発表した。「奇妙なハッカの味のほか、塩味や驚くほどの苦味があった」味について研究者は「ビールは熟成させるものではない。特に海底では」と微妙な感想を語った。  ビールは1872~90年の間に醸造され、微量のアルコールが残るが、有毒物は検出されなかった。製造年代はふたの刻印などから推定した。

食料としてのコオロギの有効性が注目されています  

昆虫食と言えば、古くは蜂の子などは日本の伝統的な食品ですが、少し前のイモムシを経て、今はコオロギが注目されています。タンパク質含量で見るとコオロギ100グラムに含まれる量は21グラムで、牛肉と同等です。一方で、牛1頭を100グラム太らせるには1キログラムの飼料と1534リットルの水が必要ですが、コオロギはそれぞれ100グラム、1リットルで済むとのことです。



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2016-02-27 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

怖い思いをするとホントに血が凍った

よく「血が凍るほど恐ろしい思いをした」なんていう表現を目に、耳にしますが、オランダ、ライデン大学の研究によると、どうやらそれに近い現象が実際に体内で起きているようです。

実験ボランティア24人に死よりも恐ろしいホラー映画をみてもらい、映画をみる前とみた後の15分以内に血液検体を採取し、血液の固まりやすさを調べました。比較対象として、起きているのがやっとなほどの退屈な教育映画を見てもらう実験もしました。その結果、ホラー映画をみた後の血液中には血液凝固第VIII因子と呼ばれる、血液を固まらせる作用のある物質が著しく増えていることがわかりました。

なお、この現象には科学的根拠があります。突然の恐怖状態においては、ゾンビから攻撃されて血が出たときに、すぐに止血ができるように、血を固まりやすくする体制を体が無意識のうちに整えているからなのだそうです。
2016-02-26 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

タンパク質が高い圧力に耐えるには・・・

タンパク質は生物の体を構成するとても重要な分子です。

ですが、深海底のような非常に高い圧力を加えるとタンパク質は壊れてしまいます。そのため、普段からそのような圧力の高い場所に暮らしている生物はタンパク質が高い圧力に耐えられるように変化しています。

生命機能を維持することと高い圧力に耐えることを両立するには、タンパク質の大改造が必要であろうとこれまで想像されていましたので、科学者の多くは耐圧性タンパク質はどんなにすごい仕組みになっているのだろう、とワクワクしながら研究を続けていました。ところが、立教大学とJAMSTECの連携による研究の結果、ある耐圧タンパク質は部品とも言えるアミノ酸が364個集まってできていましたが、その中のたった1個が変化するだけで、著しい耐圧性が生まれることがわかりました。

もちろん、アミノ酸1個を置き換えることも大変なことですが、それにしてもあまりにわずかな変化でタンパク質の性質が激変することがわかり、科学者らは驚いています。さらに、人為的な遺伝子の操作で耐圧性を自由に操作できることもわかったことから、将来は遺伝子操作で高い圧力の中でもアルコールの発酵生産が可能な酵母を作り出し、超高圧醸造日本酒「深海露」なんて商品が登場するかもしれません。

拙著、マンガでわかる菌の不思議より
拙著「マンガでわかる菌のふしぎ」(ソフトバンククリエイティブ発行)より
2016-02-26 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

8月11日には登りたい、標高4000メートルのライト山@冥王星

このうれしさはサラリーマンにしかわからないっっ!
という新制度が今年スタートします。そう、新たな休日「山の日」8月11日です。
8月11になった科学的、歴史的根拠は無いそうで、意外と休めないお盆休みに長期休暇を取りやすくするために設定されたのだそうです。だったら、日付決め打ちじゃなくて、柔軟に動かしてくれないと、土曜日や会社指定の盆休みに重なったら泣くしかない・・・・。

#祝日が土曜日になったら、月曜日が振替休日になる精度のある会社もありますけど。

さて、下の写真はそんな山の日に登ってみたい人類未到のライト山、標高4000メートルですが、この山、冥王星にあるのでちょっとやそっとでは登れそうにありません。

8月11日には登りたい、標高4000メートルのライト山@冥王星

画像の中央ちょっと下、タコの吸盤のようにも見える盛り上がったくぼ地がライト山で、この写真は一辺が250キロメートル程度ですので、麓の範囲は150キロメートルもある太陽系外縁天体最大級の火山(?)です。昨年、冥王星に最接近した探査機ニューホライズンズから最近送られてきた画像です。
2016-02-26 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

連星系の惑星形成も割と普通っぽい

連星系の惑星形成も割と普通っぽい
Saxton (NRAO/AUI/NSF); ALMA (NRAO/ESO/NAOJ)

この写真は地球から450光年離れたところにある連星系「HD 142527」です。ドーナツのような真ん中の黒い部分の中心にぼんやりと赤い小さなかたまりがありますが、その中に2個の星が入っています。その周りを取り囲むドーナツの「身」の部分はガスやチリです。この連星系をアルマ望遠鏡で観測したところ、写真の上部、赤い円弧の部分はチリが多くガスが少ないことがわかりました。

太陽のような恒星に惑星系が作られるとき、このようなガスやチリの円盤が形成され、その中から惑星が誕生しますが、アルマで撮影されたこの画像も連星系に惑星が誕生しつつある様子であろうと思われています。かつて、複雑な引力状態が生み出される連星系には惑星はできないと思われていましたが、今では連星どころか、三連星、四連星にも惑星系があるらしいことがわかっています。その形成過程はまだ完全には解明されていませんが、この写真のように意外と普通に、ぱっと見太陽系の形成過程とあまり大きな違いは無いのかもしれません。
2016-02-25 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

3月5日 小惑星が地球でフライバイ

NASAのニュースによると、2016年3月5日(日本時間では4日?)に小惑星「2013 TX68」が地球でフライバイをするようです。
http://www.nasa.gov/feature/jpl/small-asteroid-to-pass-close-to-earth-march-5

この小惑星はその名前からわかるとおり、2013年に観測されたのですが、わずかな時間しか観測できなかったため、正確な軌道が計算できておらず、推定されている最接近時の距離は、1万7000キロから、1400万キロと大きな幅があります。もっとも近いコースを通ったときには静止衛星の軌道と地球の中間あたりを通過し、最も遠い場合には月よりも遙か彼方を通過します。

現在この小惑星は太陽の方向から接近しており、大きさが直径30メートルしか無いため、観測ができていません。地球を通過した後は太陽の光を地球に向かって反射するため、いろいろな観測装置で観測できるであろうと思われています。
2016-02-25 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ワイヤレス充電バス

ヨーロッパや韓国では実証実験の進んでいるワイヤレス充電の路線バスですが、日本でも本格的に(?)スタートのようです。

東芝は早稲田大学と共同で、ケーブルを接続しなくても充電が可能な最新のワイヤレス充電装置とリチウムイオン二次電池を搭載した電動バスシステムを開発しました。2016年2月1日より2016年度末までの予定で、羽田空港周辺地域などにおいて公道実証試験を実施しています。

電池とモーターで走行する電動バス、EVバスは近隣拠点間連絡用の企業バス、観光地や空港の巡回バスなどに有利なクリーンな移動手段だと期待されていますが、高頻度充電を行う必要があり、安全で手間のかからない充電方法が求められています。

東芝が開発したのは磁界共鳴型ワイヤレス充電装置というものです。この充電装置は乗用車EVのワイヤレス充電向けに制度化が進んでいる85kHz帯を使用してバスに搭載したリチウムイオン電池を充電する仕掛けです。
2016-02-23 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

Chapter-584 くまのプーさんの頭の骨発見

「クマのプーさん」は1926年に発表されたアラン・アレクサンダー・ミルンの児童小説です。1960年代からは浦安の大きなネズミのあれによってアニメ化されて日本でも人気者になりました。擬人化アニメの元祖ともいえますので、艦これの源流と考えることもできます。

さて、このプーさんはモデルになったクマがいました。ロンドン動物園で飼育されていた雌のクマ「ウィニー」で、プーさん同様に来園者から蜂蜜を与えられていました。ウィニーは1934年に動物園で死んだのですが、その後、頭の骨は英国王立外科医師会で保管されていました。最近、その骨が再発見され、詳細に調べたところ、甘い物の食べ過ぎか、晩年はほとんど歯の無い状態だったことがわかりました。  人気者の人生も意外とつらいものですね



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ミドリムシ燃料を使いやすくする触媒の発見

新しい領域の産業というのは、いろいろな技術の複合だなというのを感じますね。今回は微生物学(培養工学)と触媒化学の融合のお話です。

石油由来のジェット燃料には芳香族、つまり亀の甲のような分子が20%程度含まれているそうです。芳香族が含まれていないと、ジェットエンジンのタンクや配管のつなぎ目のゴム製のシール材が硬化して、燃料漏れにつながるのだとか。国際規格で燃料には8.5~25%の芳香族を含むことが決められているようです。

一方で、ミドリムシなどが生産する植物や動物由来の油は、ほとんど芳香族を含んでいないため、そのままではジェット燃料には使えず、既存のジェット燃料に添加する方法で使用されています。

ユーグレナと信州大学、千代田化工建設は複数のゼオライト触媒によって、芳香族を含まないそれらの油をジェット燃料に使える芳香族を含む油に作り替えることができることを発見しました。含量は23~30%程度にも達しましたので、芳香族だけで見ればそのままジェット燃料に使用できるレベルです。

今回はミドリムシが生産した油を触媒で変化させるのですが、ミドリムシ自身が芳香族を含む油を生産できるような添加剤が開発できれば、遺伝子組み換え生物による汚染の心配も無く、良いような気がします。

以前、ミドリムシを培養しながら走るトラックのお話をしましたけど、優れた触媒が開発されれば決して夢物語ではなさそうな気がします。
http://obio.blog.fc2.com/blog-entry-343.html
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

神経細胞1つでも記憶

ちょうど先日書き上げた新刊の内容とかぶるのですが、記憶というのは複数の神経細胞のシナプスを介したネットワークで形成されると考えられてきました。ところが、名古屋大学の研究者らは神経細胞は1つでも記憶を担うことを線虫で発見しました。

特定の温度で飼育した線虫から胚細胞を採取してバラバラにすると、温度を感じる細胞が飼育された温度で反応したのだそうです。このことは1個の細胞が温度を記憶していることを意味しています。

今回発見された単一細胞記憶は従来の定説とは異なる新たらしい記憶メカニズムです。これまで、記憶に重要なのは神経細胞同士の接合部分であるシナプスにおける神経伝達物質の活動で、これが低下することにより記憶能力が低下するなどと考えられていました。今回の発見はこれまでの知見を否定するものではありませんが、記憶の新しいメカニズムの発見であることは間違いありません。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

歯の数を増やすことに成功

理化学研究所と東京医科歯科大学の共同研究グループは実験動物マウスを使った研究で、歯のもととなる原基(歯胚)の分割を行うことにより、歯を増やすことに成功しました。

歯の喪失に対する治療として、入れ歯やブリッジ、インプラントといった人工物による代替治療が行われています。しかし、これらの治療法だけでは、歯の生理的機能を完全に回復することはできません。そのため、歯科再生治療の開発が進められています。

現在行われている歯科再生治療は自身の機能していない歯を歯の欠損部に移植し、歯の生理機能を回復する自家歯牙(しが)移植や幼弱な発生段階の自家歯胚を移植し、歯を発生させる歯胚移植治療です。

共同研究グループは、歯胚の分割操作を行うことにより、1つの歯胚から複数の歯胚を発生させる歯胚分割技術を開発しました。この技術を用いて実験を行ったところ、複数の歯胚が正常に発生し、天然の歯と同等の構造を持った歯が再生されました。これら再生歯は、歯の矯正によって歯並びを整えることが可能で、神経機能を持っており、機能的にも天然歯と同等でした。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

指がポキポキ鳴る仕組み

米カリフォルニア大学デイビス校の研究者らによると、指をポキポキ鳴らすとき、関節内では気泡が形成され、それにより超音波画像では「関節内で花火が破裂するような」明るい閃光がみえることが知られています。超音波画像と音声をあわせて確認した結果、閃光がみえる前にポキっと音が聞こえることから、関節の音は泡が形成される音であることがわかりました。音が聞こえてから閃光がみえるまでの間隔はわずか10ミリ秒でした。

米国では25~50%の人が、、指を伸ばすなどで普段から習慣的にポキポキと指を鳴らしているそうです。米マサチューセッツ総合病院の医師によると、この気泡は関節の潤滑液に溶け込んでいる気体から生成されるものだということです。指を伸ばすことで陰圧が生じるために、泡が生じ、たくさんの微小な気泡が一気に融合して1つの大きな泡となることで音が発生するらしいです。

指を鳴らすことによる直接的な有害性はないようですが、長期的な有害性はまだわかっていません。むしろ、指を鳴らした後は関節の可動域が著明に増加する傾向がみられます。また、指を鳴らす習慣のある人は指を鳴らすと気持ちいいと感じていて、これは関節液に溶け込んだ気体による張力が軽減された感覚なのだそうです。

ちなみに、下の写真はポキ。ハワイの伝統料理ですが、生魚の切り身を使うので日本人も大好きな一品ですね。

ポキ
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

水素は使うけど水素社会は来ない

よく「水素社会ってホントに来るの?」という質問を受けます。

不思議なことに、質問されるのは有名な企業の経営者さんとか、科学の最先端にいる方ばかりです。いろいろなシチュエーションで「水素社会」が語られ、実際にトヨタ自動車のミライなどは街を走行しているわけですが、やはり水素は扱いにくく、「高圧ガスタンク」が生身の人間のすぐ近くにあるというのは「チョットね・・・」と思われる方が多いようです。

ただ、エネルギー源の選択肢が多いことそのものを否定する人はおらず、水素の本当の可能性を考え、水素キャリアの研究が盛んです。水素キャリアというのは、水素は常温常圧では扱いにくいので、水素原子を多数含む扱いやすい分子を見つけ出し、そこから必要に応じて水素を取り出して使用しようとするものです。アンモニアは分子の密度あたりの水素含量が高いので水素キャリアとして有望視されていますが、ギ酸についても多くの研究が行われています。

ところが水素キャリアにも問題があり、ここから取り出した水素はいわゆる「圧力が立たない」という状態になります。単に「もわん、もわん・・・」と水素が発生してもそれを利用することは難しく、高圧に圧縮する必要があり、現在は圧縮機を使用しています。そうすると、圧縮機の騒音や振動、故障リスク、せっかくのエネルギーの一部を圧縮機の駆動で消費してしまう、小型化できない、など様々な解決すべき問題が生じてしまいます。

産業技術総合研究所は圧縮機を用いないで、ギ酸から高圧水素を連続的に供給する技術を開発しました。今回開発した技術では、イリジウム錯体を触媒に用いて、ギ酸を水素と二酸化炭素に分解する化学反応によって、圧縮機を使わずに簡単に40MPa以上の高圧水素を連続的に発生できます。

また、既存の水素キャリアを利用する水素製造技術では、原料や不純物などを除くため、多段階の精製が必要ですが、今回の技術では、精製する水素と二酸化炭素が高圧であることを利用して、そのまま二酸化炭素を液化させて気体の水素と分離して高圧水素を製造できます。更に、理論上化学反応だけで200MPa以上の高圧水素が得られるので、燃料電池自動車等への高圧水素(70MPa)の供給も十分可能で、将来、水素ステーション構築の大幅なコストダウンが図れると期待されます。

冒頭の質問の答えとしては、今現在もお風呂のお湯を沸かすために、電気を使う家庭もあれば、ガスを使う家庭もあり、灯油を使う家庭もあり、太陽熱温水器を使う家庭もあるように、水素も単なるエネルギー源の選択肢の一つとなり、いわゆる「水素社会」は来ない、ということになりますでしょうか。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

光も一方通行になることがありうることを発見

東京大学と東北大学の共同研究チームはメタホウ酸銅という青色の結晶が、ある向きに進む赤外光に対して透明なのに対して、逆向きに進む同じ波長の光に対して不透明であることを発見しました。

光は物質中をある向きに通り抜けることができれば、逆向きにも通り抜けることができることが当然です。科学的には「一つの物質中を互いに逆向きに進む同じ波長の一対の光は同じ割合だけ吸収される」と言います。ですが、近年、この一対の光の吸収に差が生じる場合が見いだされました。これを方向二色性と呼びます。これまで発見された中ではメタホウ酸銅の方向二色性が最も大きく、一対の光の吸収の強さの比が最大で3倍でした。これを無限大にしたものが一方向透明現象です。

今回発見され一方向透明現象は、低温強磁場下という極端な条件下ではありますが、これまで全く知られなかった特殊な現象で光通信、光コンピューター、マジックミラーに変わる特殊な窓材などへの応用が期待されます。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

新型「しんかい」議論開始

科学者が乗り込んで海底を探査する有人潜水調査船については、現在日本には海洋機構が運用中のしんかい6500があります。

しんかい6500

この調査船は水深6500メートルまで潜れますが、フランスやロシア、米国も同程度の性能の潜水調査船を持っていますし、2012年に中国が有人潜水調査船「蛟竜(こうりゅう)」(下写真)で水深7020メートルまで潜り、日本の優位性はありません。

中国有人潜水調査船「蛟竜(こうりゅう)」

また、深海6500は初潜水が1989年で老朽化が進んでおり、船の構造も直径約2メートルの耐圧部分に3人が乗り組んで身動きもとれない状態の中でモニターテレビと小さな窓か観察するしかできず旧式の潜水艇となっています。

そこで、文部科学省が海洋研究開発機構が計画する次世代の有人潜水調査船「しんかい12000」の建造について検討を開始することになりました。「しんかい12000」は世界で最も深い海底にも到達できる、12000メートルまで潜れる性能で、休憩スペースやトイレなども船内に設置し、合計6人が最長2日間潜水できるようになる計画です。開発が内定すれば、17年度予算の概算要求に盛り込まれ、完成は2020年代後半になりそうです、

有人探査では1960年に米国海軍の有人探査艇がマリアナ海溝の1万911メートルまで潜った記録があるほか、日本は1995年に無人潜水機「かいこう」で、マリアナ海溝の底まで達したことがあります。

探査装置も最新鋭の装備が搭載され、ロボットアームには圧力センサーや温度センサーを取り付け、操作する人が実際に触っているような感覚を伝えることが可能になります。費用は2014年の見積もりでしんかい12000の建造費が約300億円、母船が約200億円の予定で、トヨタ自動車の連結純利益の1週間分に相当します。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ネコと人間のアルツハイマー病は同じだった

アルツハイマー病では、脳の神経細胞に変化が生じ、記憶に重要な役目を担う海馬の神経細胞が減ってしまうことによって認知症を発症します。東京大学の研究者らが人間以外の生物で初めて人間同様のアルツハイマー病と同じ神経変化が起きることを発見しました。

ペットとして飼育されているネコも歳をとると人間と同じような脳の神経細胞の変化が生じることを発見し、さらにネコの脳にできるアルツハイマー病特有の異常なタンパク質が人間のアルツハイマー病と同じタウ蛋白質であること、そして人間同様に海馬の神経細胞が失われることを明らかにしました。

これまで、人間以外の動物で発見されていなかったアルツハイマー病がネコでどうして発症するのかという点についてはアルツハイマー病の発病初期に関与するβアミロイドと呼ばれる蛋白質がネコ科の動物では他の動物種と異なり、人間と似ているためのようです。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

くしゃみ力学

インフルエンザもピークを迎え、患者さんが減る頃になってこういう話題で恐縮ですが、街中や職場で気になるのが人混みでの他の人のセキやクシャミです。人がクシャミをすると、雲のようなものが高速で出て、2、3分で部屋を汚染しまうことが米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究でわかりました。

これは、ひとがクシャミをする様子をビデオを分析した結果判明しました。クシャミで放出される飛沫が高速で飛び散ることはこれまでも知られていましたが、今回の研究では推進力の高いクシャミの雲が形成して崩壊する過程まで追跡され、こういったクシャミ力学の研究は世界的なパンデミックのときに疾患の広がりを予防するための新たな方法につながる可能性があるのだそうです。

当たり前のことですが、人間のクシャミは無色透明なので見えません。もし、クシャミの飛沫が発光するように人類が進化していたら、混雑の電車の中など他の人のクシャミ由来の空中浮遊物が気になってノイローゼになってしまいそうですね。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヒト体細胞がiPS 細胞に変わる瞬間の可視化に成功

京都大学の研究チームがヒトiRS(intermediately Reprogrammed Stem)細胞を発明しました。この細胞は、ヒト体細胞からiPS 細胞へ再プログラム化される中間段階にある細胞です。iRS細胞の特徴はiPS細胞とは大きく異なり、再プログラム化が一時停止で保持された状態から培養条件を変えることでiPS 細胞への再プログラム化を効率よく再開し、1個のiRS細胞からクローンを作成することができ、ゲノム編集などの遺伝子操作技術の応用が容易です。

iRS細胞はゲノム編集技術を応用し、ヒトiRS 細胞のある遺伝子の後ろに特殊な遺伝子を挿入することで作成されました。
ヒト体細胞のiPS 細胞への再プログラム化は1 万分の1以下の頻度でおこる確率の低い現象であることと、iPS細胞は単一細胞からクローン細胞を作成することが難しいので遺伝子改変技術応用による病気のモデル細胞を大量に作成することなどに向いていませんでした。
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RS細胞でゲノム編集を行って、それのクローンを量産すれば遺伝子改変されたiPS 細胞の作製が簡易になり、遺伝性疾患の病因解明や創薬開発に貢献することが期待されます。

下の写真は難しい説明は全部省略しますけど、左から右に順に細胞の理プログラミングが進んでいます。きれいですよね。
ヒト体細胞がiPS 細胞に変わる瞬間の可視化に成功
京都大学プレスリリースより引用
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

iPS細胞ででがん免疫療法

iPS細胞でがん治療が可能になるのか?

京都大学iPS細胞研究所は、がん細胞を攻撃する性質のある免疫細胞をiPS細胞を使って大量生産することに成功しました。武田薬品工業と共同で、増やした免疫細胞を患者に投与する新たながんの免疫療法の臨床試験を5年以内に開始することを目標としています。

健康な人から作成したiPS細胞から免疫系細胞の一種、ヘルパーT細胞を作成し、がん細胞を認識することに関係する遺伝子を導入組み込んで、その他の免疫系細胞のキラーT細胞、樹状細胞と混合しました。そうすると、ヘルパーT細胞が樹状細胞を介して作用し、がんを認識して攻撃するタイプのキラーT細胞が増殖することがわかりました。

大量に得られたヘルパーT細胞をがん患者に投与することによってがんを治療する新たな細胞療法が開発できるかもしれません。
2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

Chapter-583 ダカール・ニーニョ現象の発見

2016年1月9日 Chapter-583 ダカール・ニーニョ現象の発見

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が西アフリカのダカール沿岸に発生するあらたな大規模気象現象を発見しました。名称は「ダカール・ニーニョ/ダカール・ニーニャ」といいます。  

 ダカールは西アフリカの地名ですが、沿岸は、貿易風と地球の自転の影響によって海水が常に沖合に運ばれ、それを補うように海底から冷たい海水が上昇しています。海底からはプランクトンの死骸などで栄養豊富な深海の水が上昇しますので豊かな漁場となっています。ですが、数年ごとに海面水温が大きく変動し、栄養豊富な海水の上昇量が減少するなどして生態系に大きな影響を及ぼすことがあります。これはまさによく知られているエルニーニョと同じ現象です。  

JAMSTECは1982年以降30年間の海水温データを解析し、ダカール沿岸の海面水温が温かくなるダカール・ニーニョ現象が6回、冷たくなるダカール・ニーニャ現象が5回発生していることを発見しました。このような現象が発生すると上空の大気が暖められたり冷やされたりするため、海の上の風の強さや風向きに影響をおよぼし、周辺の気候に大きな変化が出ることも突き止めました。



この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。
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2016-02-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ビタミンDに関するメモ書き

ビタミンDは日光に当たることによって体内で作られ、カルシウムが体内で適切に機能するために必要なビタミンで、健全な骨の維持に特に重要です。さらに、最近の研究によって、ビタミンDの受容体が中枢神経系にも大量にあることがわかり、骨だけでなく脳が正常に機能するためにも重要であり、神経ホルモンとしても振る舞っていると考えられています。

また臨床的には統合失調症など重篤な精神疾患患者でビタミンD欠乏症が頻繁に認められ、統合失調症の発症にビタミンDが関わっている可能性が指摘されています。新生児におけるビタミンD欠乏が将来の肥満や糖尿病、脂質異常症、血管疾患の発症リスクを高めることがわかっていて、これらの疾患と統合失調症も関連があります。これらのことから、ビタミンDはこれまで知られていた以上に、全身のホメオスタシス(=恒常性)に大きく関わる重要な役目を担っている分子として見直しが進められそうです。
2016-02-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

Chapter-582 今年注目する科学と科学技術

食品用3Dプリンター  
 
 今年、食品用3Dプリンターがいよいよ普及期に入る予定で、すでにチョコレートやピザなどを印刷で作ることは実現していますし、NASAが国際宇宙ステーションで食料を印刷で作ることによってメニューのバリエーションを増やすことも検討されています。また、栄養価値が高いものの敬遠されがちな食材である昆虫も凍結乾燥で粉末にし、食品用3Dプリンターで印刷することによって形を変えて食べやすくする工夫も検討されています。  

 現状、もっとも相性が良いのはチョコレートやケーキ類ですので、そう遠くないうちに自宅や電車の中でスマホを使ってケーキ屋さんのアプリでオリジナルのケーキをデザインし、それを注文すればケーキ屋さんの3Dプリンターで希望通りのケーキができあがって購入できるようになるものと思われます。冷蔵ショーケースの中でオンラインで注文されたお客さんの独創的なデザインのケーキが次々に印刷で作られていく様子は見ているだけでも楽しそうです。

お菓子用3Dプリンター

超高速列車ハイパーループ

 ハイパーループは米国の実業家が2013年に構想を発表した次世代交通システムで、2016年にカリフォルニアに120億円をかけて全長8キロメートルの試験コースを建設することが計画されています。 空気を抜いて減圧されたチューブ内を浮上してファンで高速走行するこのシステムの目標最高速度は音速に近い時速1300キロですが、2017年初頭に完成予定の試験コースではまず技術と安全性の検証を行い、2018年には人が乗っての試験走行を開始する計画です。 最終的な運行ターゲットはサンフランシスコ-ロサンゼルス間の高速移動システムです。現在この区間は電車で7時間半、飛行機でも1時間半かかりますが、ハイパーループは35分で結ぶことが可能です。

ハイパーループ

 移動は便利になりますが、その一方で食堂車はなくなり、夜行列車もなくなり、ついには窓も無い筒の中に入って移動する時代になるというのは旅の楽しさという点では少し残念な気もします。

ハイパーループ

エアロゲル

 エアロゲルは、ゲル中に含まれる液体を超臨界乾燥で抜き取って気体を封入した多孔性の物質で、容積の95%が空間なので固体にもかかわらず見た目は煙のようです。この空間は非常に小さいので、その中の気体が振動せず、従ってすさまじく軽量でしかも熱を通さないという特徴があります。  エアロゲル物質が最初に作られたのは1931年とかなり昔のことですが、近年、樹脂や炭素などを材料にして性能が向上したエアロゲルが次々に開発され、NASAの水星探査機「スターダスト」には彗星の尾を構成する補足装置としてエアロゲルが採用されました。

 その他、吸着剤や燃料電池材料などに用途が広がっています。エアロゲル、多孔性液体、多孔性セラミックなど今年は小さな穴の機能を活かした素材がいろいろと登場しそうです。

エアロゲル

低温廃熱の利用技術  

 工場から出る廃熱は重要な熱源ですが、日本は省エネ技術が進んでいますので多くの熱はすでに再利用されていて特に100度を超える高熱は化学反応やボイラーの熱源として有用です。  

 一方で数十度の低温熱源は、用途が限られるためこれまでは海水で冷却するなどして捨てられていました。ですが、それらの使途が「熱電発電」「野菜工場」「バイオレメディエーションを中心とする次世代バイオテクノロジー」の三つの領域で注目されています。熱電発電は熱をそのまま電気に変換する技術です。野菜工場には土地と、水と、電気と、熱が必要ですが、これらが最初から備わっているのが日本の工場地帯です。   

 バイオレメディエーションは微生物等の働きを利用して汚染物質を分解等することによって土壌地下水等の環境汚染の浄化を図る技術のことですが、その技術の延長上で電子機器の廃棄品、いわゆる都市鉱山からレアメタルなどの希少元素を微生物を使って回収する研究が進んでいます。ここで注目されているのが好熱菌、超好熱菌とよばれる特殊な微生物です。好熱菌は50度前後、超好熱菌は80度以上で活発に生育します。このような環境を好む微生物は工場廃熱の温度と非常に相性が良く、また、培養系に雑菌が繁殖することを防ぎ、しかも化学反応は加速して進行するというメリットがあります。

野菜工場

宇宙太陽光発電  

 宇宙太陽光発電は、宇宙空間に巨大な太陽電池パネルを浮かべ、夜も曇りもない宇宙空間で24時間太陽光発電を行う技術です。宇宙空間で得られた電気は地上に無線送電されます。2015年3月にJAXAと三菱電機がマイクロ波無線送電実験に成功し、宇宙太陽光発電を行うに必要な基礎的技術が一通り完成しました。直径2~3キロメートル太陽電池パネルを使えば、原発1基分(100万キロワット)相当の発電ができると試算されています。  

 このような巨大太陽電池の製造についても、レアメタルなどを多く含む小惑星を捕獲して月軌道まで運び、小惑星上に太陽光発電パネル工場を建設することによって、地上から資材を打ち上げることなく実現する方法を検討しています。  ですが、電気仕掛けで野菜を育てることが可能になった今、宇宙で発電して地上に送電するより、人間の方からエネルギー源の近くに住んでしまえ、という発想も出てきそうです。ラリー・ニーヴンの「リングワールド」の世界ですね。
2016-02-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

重力波の人類初観測に成功と米国チームが発表

重力波を米国チームが人類初の観測に成功と発表(LIGO)

日本も今年から稼働する KAGRA での観測を目指していた重力波を米カリフォルニア工科大学、米マサチューセッツ工科大学、米ルイジアナ州立大学などの国際研究チームが人類初の観測に成功したと2016年2月11日に発表しました。観測に使用したのは北米にある全長4キロメートルの重力波観測装置「ライゴ」(下写真)です。

重力波を米国チームが人類初の観測に成功と発表(LIGO)

重力波はアインシュタインが重さのある物体が動くことによって生じる時空のゆがみが波のように伝わっていく現象です。人間が身体を動かすだけでも重力波は発生しますが、あまりにわずかなので観測することはできません。ブラックホールのような非常に重くて非常に密度が高い天体の運動レベルで放出された重力波であれば、人類の技術で検出が可能であろうと考えられ、いくつかの重力は検出装置が日本や米国などで建設されましたが、これまでは誰も観測に成功した人はいませんでした。

ブラックホールの合体
今回観測された重力波の放出源であるブラックホールの合体の想像図(LIGO公式サイトより)

実際の観測は2015年9月のことで、その後詳細なデータ確認等を経て今回の発表となったもので、重力波が観測されたことそのものがものすごい発見です。アインシュタイン博士も天国で
「やっとできたのかよっお前らっ!待ちくたびれて死ぬところだったよ!(いや、もう死んでるから ←1人ボケ突っ込み)」
と言っていることでしょうね。
https://www.ligo.caltech.edu/news/ligo20160211
2016-02-12 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

和食の技術をiPS細胞に

新鮮な魚介類が和食の主役ですが、魚など生鮮食品の鮮度を保つために開発された冷凍技術が iPS細胞の保存にもまさに「活かされる」ことになりました。

慶応義塾大学と千葉県のベンチャー企業アビー社などは人間のiPS細胞由来神経幹細胞を凍結保存する技術を確立しました。た。アビー社が持つ鮮魚を凍結する際に磁場をかけて細胞内部の水分子を振動させ、氷の結晶が大きくなって細胞が壊れるのを防ぐ技術を細胞の凍結保存に応用したところ、移植用神経幹細胞の長期保存にめどが立ったとのことです。

この方法の導入によって、凍結神経幹細胞の解凍後の生存率が従来の30%から70%に大きく向上しました。また、磁場による細胞への悪影響もまったく見られませんでした。脊髄損傷などの受傷後直ちに移植手術をすることが治癒率を高める疾患においては、幹細胞を大量に凍結保存でストックしておく必要があります。

幹細胞もお刺身もどちらも鮮度が重要ですので、食品の鮮度を高めるための技術開発にあらゆる努力をしてきた成果ですね。
2016-02-10 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

異常高温に耐えるイネってイイネ

異常高温に耐えるイネってイイネ

動物は暑くなれば涼しい地域に移動すればよいですし、昆虫などは実際に生息域が長期の気候変動に合わせて変化しています。ところが植物はそう簡単に移動できませんし、ましてや農作物であれば近年の高温による影響は致命的です。

東京大学の研究チームは、別の植物が暑さに耐えている最中に作られるたんぱく質の遺伝子を組み込んで、高温によく耐えるイネを作製しました。このイネは成長は元になった品種と同じでありながら、真夏の炎天下を想定した55度2時間の環境でも影響を受けませんでした。

年平均気温の変動は1度とか2度とかいうレベルでも最高気温は著しく上昇していますので、今回イネで成功した手法が大豆などの他の作物にも適用できるかどうかを引き続き検討するようです。あとは、そのような遺伝子組み換え型作物を受け入れる側の問題でしょうか。
2016-02-07 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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Author:おびおがしかし
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
苦手な食べ物:シーチキン、レバー、昆虫系
Web:ヴォイニッチの科学書
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