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ヴォイニッチの科学書 第681回 ジェネラリストとスペシャリストはどちらが有利なのか?

人間社会において、ジェネラリストとスペシャリストの適材適所はしばしば問題となりますが、自然界全般を見ても、様々な環境に対応できるジェネラリスト戦略をとる生物がいる一方で、特定の環境に特化したスペシャリスト戦略をとる生物もいます。ですが、どちらの戦略が有利なのか? なぜ2つの戦略をとる生物が共存するのか? といった根本的な疑問はナゾのままです。

東京大学の研究者らは61種類の多様な環境から採取した微生物群集を調べ、ジェネラリストは種の多様性を生み出す力が強く、絶滅への耐性を持ち、子孫を繁栄させる上で有利であることを明らかにしました。

一方で、ジェネラリストは進化の過程で容易にスペシャリストへと変わる傾向があることがわかりました。その結果として、ジェネラリストよりも生き残るのに不利なスペシャリストが常に共存していたのです。

近年の生物学では、生物のゲノムの膨大なデータ(バイオビッグデータ)に基づいた生物情報科学的解析を行うことが可能になってきました。 今回の研究は61種類の環境から集めてきた微生物を含む試料について、微生物由来の遺伝子を解析し、それぞれの環境にどのような微生物が存在するかを網羅したカタログを作成しました。続いて、61種類の環境を11種類の環境に再分類し、そのうち1種類にしか現れない微生物をスペシャリスト、5種類以上に現れる微生物をジェネラリストと定義し、解析しました。  

その結果、微生物にもスペシャリストとジェネラリストがいること、スペシャリストの方が量は圧倒的に多いこと、を確認しました。微生物の進化系統樹を考慮した進化解析を行ったところ、ジェネラリストは多く絶滅するもののそれを上回る亜種を生み出すことによって結果として絶滅の圧力に耐える力が強く、スペシャリストは絶滅率が高いことがわかりました。つまり種の保存としてはジェネラリストの方が明らかに有利ということです。

では、なぜ微生物はジェネラリストばかりにならないのか、について検討したところ、ジェネラリストが進化の過程でスペシャリストに変わる速さの方が、スペシャリストがジェネラリストに変わる速さよりも速いことが推定されました。このことは、ジェネラリストは有利ではあるけれども「ジェネラリストであり続ける」ことが難しいことを意味しています。それぞれの環境における厳しい生存競争に勝つために、ジェネラリストはスペシャリストにならざるを得ないのかもしれません。

ヴォイニッチの科学書 第681回 ジェネラリストとスペシャリストはどちらが有利なのか?
食品界のジェネラリストポテトサラダと食品界のスペシャリスト辛子明太子のハーモニー


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


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2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!

金沢大学の研究者らが東京大学と共同で、CRISPR-Cas9 という遺伝子編集方法の過程において、編集の第一段階としてDNAの切断が行われるシーンを動画撮影することに成功しました。日本で開発された世界最速の原子間力顕微鏡を用いて初めて実現できた成果です。

CRISPR-Cas9 では酵素を使ってDNAの狙った部位を切断し、別の遺伝子を組み込むなどして遺伝子の編集をおこなう技術です。この方法は基礎研究から臨床応用に至る多岐にわたる生命科学分野において広く利用されています。 下の動画において、28秒あたりのシーンで白い矢印が画面に出ますが、矢印の指した先でDNAが切断されていることがわかります。

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!
http://obio.blog.fc2.com/blog-entry-1289.html

2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

H7N9鳥インフルエンザの現状

人類が滅ぶとすれば原因は何でしょうか?小天体の衝突? 地球温暖化による食糧危機? 某近くの国の核兵器????

多くの人に忘れられている可能性の一つに高病原性鳥インフルエンザがあります。その代表H7N9型は現状は中国でたまに流行する程度ですが、米国ウィスコンシン大学の研究者らは今後この高病原性ウイルスが世界へ拡散する可能性を報告しています。

H7N9鳥インフルエンザの人から人への感染について、これまではよくわかっていませんでしたが、最近新たに発見された亜種では哺乳類から哺乳類へくしゃみなどをきっかけとした飛沫感染することが明らかになりました。ニワトリから人への感染は2013年の発見以来すでに1,600人に及んでいます。このなかで約600人が死亡し、非常に致死率の高いウルスとして恐れられています。

ところが、2016年に中国で発見されたさらに致死率の高い高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスは、翌2017年に人へも感染することが確認されました。今のところ、この高病原性ウイルスの人から人への感染例は見つかっていませんが、ウイルスの遺伝子は容易に変異するため、いつ人から人への感染能力を獲得した変異種が出てきても不思議ではない状態に至っています。実際に、マウスを使った動物実験ではマウスの体内で急速に増殖する能力をすでに獲得しており、フェレットを使った動物実験ではフェレットからフェレットに飛沫感染した後に脳でウイルスが増殖しフェレットが死に至ることも確認されました。

また、このウイルスには現在使用されているオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルなどのインフルエンザ治療薬の効果があまり出ず、人から人への感染が始まるとタイヘンなことになる可能性があります。


2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

医薬品を脳に送り届ける画期的な手法

アルツハイマー病などの神経疾患の治療薬には決定的に効く医薬品がまだ存在しません。その理由は脳の構造や機能が複雑で病気の原因が十分に解明されていない点もありますが、脳に薬を送り届けることが非常に難しいので、試験管内の実験で効果が確認できても、実験動物では薬が脳に到達せず、効果が出ないことも大きな原因の一つです。  

服用した薬は小腸などから吸収されて血管に入り、全身を循環する過程で脳の血管から脳へ入ります。ところが、脳には血管から脳へ物質が入ることを制限する血液脳関門というバリアがあります。関門を通り抜けられるのはアミノ酸などの脳が本当に必要としている物質だけで、医薬品もこのバリアを通り抜けることが非常に難しいのです。

東京医科歯科大学発のベンチャー企業ブレイゾン・セラピューティクスが新たに開発した方法では、脳の内部まで医薬品が到達する確率が数十倍に高まることが期待されています。この方法では医薬品を高分子でできたウイルスと同じくらいの大きさのカプセルに封入し、脳が栄養を取り込む仕組みを利用してカプセルごと脳内に送り込みます。 ブドウ糖は血液脳関門を越えて脳に到達しますが、それは脳がブドウ糖を取り込む仕組みを備えているからです。その仕組みとはグルコーストランスミッター1と呼ばれるグルコースを運搬するタンパク質の存在です。グルコーストランスミッター1は空腹になると血管の内壁に集まり、満腹になると内側に戻っていきます。  

高分子カプセルにブドウ糖を結合させておくとグルコーストランスミッター1が内部に戻る際に、このカプセルを引き連れていくことを発見し、これを応用したのです。

医薬品を脳に送り届ける画期的な手法
図:脳血管の断面図
脳の血管を様々な細胞が取り囲み、不要物の侵入を防ぎ、大量に消費されるエネルギー源となるアミノ酸などを積極的に取り込みます。


2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

デジタル錠剤が米国で初承認

米国食品医薬品局(FDA)は米国初のデジタル錠剤を承認しました。大塚製薬などが開発したエビリファイ・マイサイト(Abilify MyCite)と呼ばれるこの錠剤は、統合失調症や躁うつ症の治療に使われる抗精神病薬です。錠剤には食べても問題が無い小さなセンサーが内部に組み込まれており、定期的に服薬状況をチェックできます。  

薬を服用すると胃の酸性にセンサーが反応し、患者の身体に貼り付けたスマート・パッチのシグナル検出器に情報を伝え、データをスマートフォンなどのデジタル端末に送ります。医師や家族がデータを確認することも可能です。

デジタル錠剤が米国で初承認


2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 1 :

人間の体内で遺伝子編集する初の試み

以前このブログで紹介した表皮水疱症は少年から健康な細胞を取り出し、細胞に対して遺伝子治療を行いましたが、人間の体内で遺伝子編集する初の治療が実施されるようです。  

治療の対象となった患者は肝臓疾患のハンター症候群という病気を発症しています。サンガモ・セラピューティクス社が開発した治療法では、「ジンクフィンガー」として知られる手法を用いて、患者のDNAを切り取り、修復遺伝子を挿入する計画です。この手法は治療を迅速に行うことができ、組み替え遺伝子の作用も確実、さらに高額な遺伝子治療医療費も安価に抑えることが可能ですが、編集を誤るとさらなる疾患の発症を招くリスクを伴います。


2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

映像印象を脳活動から推測

情報通信研究機構とNTTデータは映像から受けた印象を脳活動から読み取り、1万通りの単語で表現するシステムを開発しました。

脳の活動を画像化する機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使い、テレビCMを見ている実験ボランティアの脳の活動を観察し、そのときにボランティアが受けた印象を記録しました。 印象を1万通りの単語の中から選んで表現し、脳の活動と単語との関係式を構築した上で、逆に特定の脳の活動から、印象を1万語の中からコンピューターで抽出したところ、本人が受けた印象に近い単語を的確に選び出せたということです。 これまでも類似システムは存在していましたが、今回のシステムは単語数が数十倍に拡張されているため、より微妙なニュアンスの違いをうまく表現することができます。  

この仕組みを利用すれば、言葉を使わなくても人の考えていることを読み取ることができます。現状はfMRIで脳の活動を読み取らなければならないので、生活空間での利用にはまだ技術開発が必要です。

あなたは美味しそうな料理を見た時、何通りの表現でそれを伝えることができますか?
ひょっとすると、自分が言葉を選ぶよりも、自分の脳の活動をコンピューターに見てもらって言葉を選んでもらった方が、より表現が豊かになる可能性もありますね
映像印象を脳活動から推測


2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

50量子ビットの量子コンピューター

現在の量子コンピューターの性能はスーパーコンピューターレベルで、量子演算の特長を生かしているとは言えません。通常のコンピューターは情報を1か0かのビットで扱いますが、量子コンピューターはそれとは異なった方法、状態の重ね合わせと量子もつれという2つの現象を用いて処理します。真の性能を持つ量子コンピューターの実用化には、49量子ビットを実装したシステムが必要だとされています。

50量子ビットの量子コンピューター

IBMが2017年11月10日、先頭を切って量子コンピューター実用化の最低クリアラインである50量子ビットの量子コンピューターを発表しました。 とはいっても、量子コンピューターが一気に身近になるわけではありません。量子状態はこれまで最長の90マイクロ秒は保存されますが、データを扱うにはまだ極端に短い時間です。


2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第680回 表皮水疱症の決定的治療法

表皮水疱症という遺伝性の病気があります。治療薬は無く、死に至る可能性も高いこの病気を発症したドイツの7歳の少年に対して、大がかりな皮膚の再生手術が行われました。

水疱症は皮膚の細胞と細胞を強く結びつける結合組織(タイトジャンクション)に異常が生じ、皮膚のバリアが壊れるため、そこから雑菌が侵入し、細菌感染を起こします。この少年は全身の6割を水疱が覆っており、非常に危険な状態でした。

ヴォイニッチの科学書 第680回 表皮水疱症の決定的治療法


治療に際してはまず、少年の皮膚の健康な部分から皮膚幹細胞、つまり、新たな皮膚細胞を再生する能力を持っている細胞を採取します。この少年の病気の原因は遺伝子の突然変異によって、LAMB3遺伝子が異常になっていることがわかっていましたので、LAMB3遺伝子を修正する遺伝子治療を施しました。LAMB3遺伝子は、皮膚の最も外側の表皮の強化に必要なタンパク質の生成に関係している遺伝子です。この遺伝子を修正することによって皮膚のバリアが形成され、雑菌が侵入できなくなります。

次に、遺伝子が正しく治療された皮膚幹細胞をシート状の皮膚細胞に育て、体に移植しました。

この手術により、少年の皮膚の水疱は手術前には全身の6割を覆っていたものが、2割まで減らすことができました。同様の皮膚の再生手術はやけど治療のために小さなシートを使用することは行われてきましたが、今回のようにほぼ全身にわたるほど広い面積を遺伝子操作した細胞シートで治療をしたのは初めてのことです。  

表皮水疱症を患う患者は、活性化ランゲルハンス細胞がむきだしになるため、皮膚が非常に敏感になり、普通の人にとっては何でも無い皮膚への接触を凄まじい痛みとして感じます。病気は慢性的で皮膚には治療不可能な傷ができ、そこから感染症を起こして、最終的にはがん化します。表皮水疱症の患者は、世界中でおよそ50万人います。  

今回の治療の効果は、これまで行われたやけど治療における皮膚細胞シートの実施例から予測すると、少なくとも30年は続くと思われ、おそらくは完全治癒ができたと考えられます。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


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Author:おびお
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
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