独り勝ちはよくない

自然界ではたくさんの生物が空間を共有して暮らしていますが、その生態系はとても安定しています。特定の生物種が大発生を起こしたり、逆に大絶滅したりする、といった大きな変化は、一軒の家の中のゴキブリレベルで起きることはあっても広い環境レベルではあまり生じません。

一方で、理論研究からは一つの空間に共存する生物の種類が多くなるほど生態系は不安定になると予想されています。理論研究と現実の間にギャップがあるということは、研究者の気づいていない、生態系を安定化させる何らかの仕組みがあることを示唆しています。

この未解明の仕組みを明らかにするために、東北大学の研究者らは、コンピューターの中で生態系を再現して解析しました。このような研究は珍しいのですが、その理由は、生態系のバランスは、単純にどれかが増えればどれかが減る、というものではなく、その環境にいるすべての生物が互いに個体数に影響を及ぼしあっているはずなので、それを反映した非常に複雑な数式を考える必要があるものの、これまでの研究者は誰もそこまで緻密な理論式を構築することができていなかったためです。

東北大学の研究者らが今回初めてその複雑な数式を用いた自然生態系の数理モデルを作成しました。このモデルを解析したところ、そこに住む生物の密度による生態系のバランスに与える影響について重要な事実が明らかになりました。

自分の仲間が増えた時には、敵の勢力が拡大した方が、つまり、自分たちの独り勝ちならない環境の方が生態系全体のバランスが保たれやすいという想定外のことがわかったのです。これまでは、敵対関係が同時に強大化するような状態は生態系のバランスを崩壊させると科学者は想像していました。 つまり、これまでの科学者は生態系の安定性とはあまり関係のない、一つの生態系に住む種の多さや、個体数の多さを熱心に研究していた、ということです。

このような仕組みがあるからこそ、砂漠のような閑散とした生態系も、アマゾンのようなとても密度の高い生態系もそれぞれに安定しているということになります。


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2018-07-05 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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