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シリコン量子ビットの高温動作に成功

量子ビットというのは、電子スピン、つまり、電子の自転方向が右回りか左回りか、回転の内部自由度の向きのことで、よく雑誌に載っている図では上向きや下向きの矢印で表現されますが、このような矢印で符号化された情報の最小単位のことです。一般的なデジタル回路では0か1かの2つの状態のどちらかに情報が保持されるのに対し、量子ビットでは0でありかつ1でもある状態、これを重ね合わせの状態というわけですが、これらを組み合わせて表現することができます。量子ビットはセンサーなどへの応用が期待されていますし、多数の量子ビットを結合することで、量子コンピューターを構築できます。

量子ビットのなかでも、シリコンの中の電子スピンを用いたシリコン量子ビットは、既存のシリコン技術で作製可能であり、現状のシリコン集積回路との接続性の良さなどから注目を集めています。しかし、現状のシリコン量子ビットは、熱エネルギーによるかく乱を防いで電子を局在化させるためにその動作には0.1K(約-273℃)以下という極低温環境が必要でした。この温度を作り出す冷却装置は、1台あたり1億円程度と高価で広い設置スペースも必要です。

そこで理化学研究所と産業技術総合研究所の共同研究グループは、従来よりも高い温度で動作するシリコン量子ビットの開発を試みました。  

電子を局在化させるためには2つの方法があり、ひとつは電子を狭い領域に3次元的に閉じ込める量子ドット構造を用いること、もう一つの方法は不純物を利用する方法です。今回採用されたのは後者の方法で、均一なシリコンの中で不純物が局在する場所で形成するエネルギー準位を利用するものです。不純物として、これまではリンなどが使用されていましたが、それらによる電子の局在化は弱いものでした。より有効な不純物としてアルミ-窒素不純物が見いだされ、これによって生じるエネルギー準位を用いました。

シリコン量子ビットの高温動作に成功

量子ビットの状態を電気信号として読み出すためにトンネル電界効果トランジスタ素子 を採用し、スピン閉鎖現象 を用いてスピンの状態を読み取る仕組みを構築した結果、最高温度10K(-263℃)での量子ビット動作に成功しました。10Kを超えると熱によるかく乱で電子が局在化できなくなりますが、この点についても不純物にさらに工夫を加えることによってより高い温度でのシリコン量子ビット動作をできるアテがあるとのことですのでより高温で動作可能な量子ビットも開発されそうです。  

いずれはこういった仕組みを使ったコンピューターが普通のものになるわけなので、日本の素材メーカーはもう少ししっかり量子コンピューター用材料の研究をするべきと思います。
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2019-02-12 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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