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北極圏に船舶型原発

ロシアの国営原子力企業ロスアトムは海上に浮かぶ船舶型の原子力発電所を2019年内にも北極圏で稼働させると発表しました。可動性を強みに北極海沿岸の電力供給に活用し、技術をアピールして中東やアジアなどへの輸出につなげたい考えです。ただし、テロや事故への警戒感も根強いものがあります。

船舶型原発「アカデミク・ロモノソフ」は全長144メートル、幅30メートル。原子炉2基を搭載し、7万キロワットの電気出力と毎時50ギガカロリーの熱供給能力があります。これは人口10万人規模の都市の電力を賄える能力です。ただし、自力航行はできず、移動時はタグボートがえい航します。

当面は、チュコト自治管区のペベク港に係留され、古い小型原発や熱供給発電所を代替することになっていますが、自由に北極海を移動でき、4年間は燃料(低濃縮ウラン)補給なしに発電を続けることができるため、北極の資源開発の電力源に使われるのではないかと周辺国は警戒を強めています。

一方で、このような可動式の船舶型原子力発電所はフィリピンのような島国の注目も集めており、各国に売り込みをかけているようです。一隻の価格は500億円だそうです。日本では100万キロワット級の建設費が1000億円から2000億円ですのでコストパフォーマンスはかなり悪そうです。


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2019-11-21 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

運動のしすぎが判断力を鈍らせる?

フランス、ピティエ・サルペトリエール病院の研究で、運動をしすぎると脳の疲労を招き、物事の判断力が鈍る可能性があることが示されました。研究者らは持久的スポーツをしている男性37人を対象に、3週間にわたって通常のトレーニングを行う群と1回当たりのトレーニング負荷を40%増やして疲れ果てるまで自分を追い込んで運動させる群、二つに分けて観察を行いました。

fMRIによる画像検査から、トレーニング負荷を増やし、疲れ果てるまで自分を追い込んで運動した群では、物事を判断する際に重要な役割を果たす脳領域の「外側前頭前皮質」の活性が低下していることが分かりました。また、運動負荷を増やした群では、将来の大きな報酬よりも、目先の小さな報酬を得ようとする確率が高い行動もみられました。

スポーツに限らず、政治や法律、金融といったさまざまな分野で間違った判断をしないためには、疲労の程度を見極めることが重要かもしれない、というのが結論です。


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阿佐ヶ谷科学食堂23
2019-11-20 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴァージンが民間初の火星無人ミッション

宇宙旅行を手掛けるヴァージン・ギャラクティック社のスピンオフ企業で、人工衛星の打ち上げを目的とするヴァージン・オービット社は、3つの小型無人宇宙船を火星に送り、科学調査を実施すると発表しました。これらのミッションはヴァージン・オービットの主力ロケットであるランチャーワンによる打ち上げを予定しており、早ければ2022年にも開始する計画です。もし計画通りに事が運べば、ヴァージン・オービットは火星に向かう初の営利企業となります。

ヴァージン・オービット社がランチャーワンを実際に発射したことはまだないのですが、「コズミック・ガール」と呼ばれるボーイング747がこのロケットを高高度まで運び、切り離し、その後にランチャーワンは空中でエンジンを点火し、宇宙空間に突入する計画です。

ヴァージンが民間初の火星無人ミッション

このように、ロケットを航空機で上空まで運んで空中発射する方式は、従来のロケット発射方式よりも少ない燃料で済み、ロケットも軽量になり、打ち上げ場所や天候に制限がなくなるメリットがあります。科学者らにとっても、このような発射方法で火星を目指すのは画期的だと言われています。このような打ち上げが可能になった背景には、探査機の小型化技術が進化したことが挙げられます。現在ヴァージン・オービット社が開発中のロケットは、空中で分離をしない一段式ですが、これでは地球の引力を振り切るには不十分と考えられ、同社は、ロケットが地球周回軌道を出て、小さな積載物を火星に送るのに必要な追加の推進力を得られるように、2段式ロケットにブースターを検討しているとのことですが、その中には電気推進装置の検討も含まれており、自動車や航空機だけではなく、ロケットまで電動化の波が及んでいます。

航空機による空中発射は、航空機の積載能力に制限があるため、ボーイング747でも小型のキューブサットを宇宙に放出するのが精一杯ですが、将来的には、地上打ち上げ型ロケットよりも安価で簡便で気象条件の影響を受けないメリットを生かし、国際宇宙ステーションなどへの生鮮食品輸送のような日常的な補給ミッションをしたり、小さな荷物を届けたりできるようになるだろうと考えられています。このような取り組みはいずれ、手ごろな宇宙旅行にもつながるものと期待されています。


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2019-11-19 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

古代帝国の滅亡を科学する

北海道大学の研究グループはメソポタミア文明 初の帝国アッカド帝国の崩壊に繋がった気候変動の詳細を化石サンゴの記録から明らかにしました。アッカド帝国とは、西アジアのチグリス・ユーフラテス川流域で約4,600年前に誕生した、メソポタミア文明で初の帝国です。この帝国は冬の雨季を利用した農業を発展させましたが、建国からわずか約400年で崩壊してしまいました。これまでの考古学的調査で、帝国の崩壊は乾燥化が影響したことが示唆されています。

北海道大学の研究グループは一か月単位の時間解像度で昔の気候を復元できる化石造礁サンゴ の骨格から当時の気候を復元しました。アラビア半島オマーン北西部の沿岸で発見された造礁性サンゴの化石群について、放射性炭素年代測定 を用いたところアッカド帝国の崩壊年代を含む4,500〜2,900年前に生息したサンゴであることがわかりました。これらのサンゴ化石の化学組成から、当時の海水温度、塩分濃度変動を導き出し、アッカド帝国が崩壊した時代の気候変動を復元しました。

その結果、アッカド帝国崩壊直後の約4,100年前の化石サンゴには、他の時代と比べて気候が冬に寒冷であったことが記録されていました。現在の気候解析から、このサンゴが生きていた、オマーン北西部は冬に寒冷で低塩分化する傾向があり、西アジア地域からアラビア半島に吹き下す風で、西アジア地域の乾燥を深刻化させ、砂嵐を引き起こします。冬に発生したメソポタミア地域の乾燥化と砂嵐は冬の雨季に農業を営むアッカド帝国の社会・農業システムに深刻な影響を与えたと考えられ、農業の困難化と飢饉の発生や砂嵐の多発による健康被害の発生などが起きたものと思われます。その結果、アッカド帝国は 死亡率と移民の増加により崩壊へとつながったと考えられます。

古代帝国の滅亡を科学する

今回の研究では季節ごとの高い時間解像度をもつサンゴの古い気候記録を基に気候変動が古代文明とその社会に与える影響を解明することに成功しました。季節変動は人類の生活、農業などに直結するため、サンゴ記録と考古学との学際的な研究は気候変動が過去・現在の社会にどのように寄与するかを解明する一歩になると期待されます。


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2019-11-18 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

キレッキレのダンスをコピーできるかも

東京大学の研究チームは霊長類コモン・マーモセット の大脳皮質運動野を光刺激して、腕を動かすことに成功しました。コモン・マーモセットは神経系が人間に似ているため、実験用にしばしば使われる霊長類です。

大脳皮質の運動野は、手や足などを動かすために必要な脳の領域ですが、運動野の中のさらに細かい領域ごとに、手をどう動かすか、足をどう動かすかをコントロールしている部位が分かれています。そのため、運動野の特定の領域の神経活動を活性化させると、その領域に対応する体の部位を動かすことができます。

一方、脳の神経活動を制御するための方法として、最近では光遺伝学 を利用する研究が増えてきています。この方法では、マーモセットの大脳皮質運動野の上部に非侵襲的に光ファイバーを設置して光刺激することで、腕の運動が誘発することができます。

大脳皮質運動野を小区画に分割して、それぞれの区画を光刺激したところ、たとえば、中央の区画では手が体の中心から外側に向かって上後方に、その両端の区画では下前方に動くこと、中央より左側の区画では肘を後方に引くのに対して右側の区画では肘を前に押し出すことなどがわかりました。

キレッキレのダンスをコピーできるかも

これらの結果から、マーモセットの運動野ではさまざまな向きの腕の動きが別々の領域でコントロールされていて、特定の神経細胞を活性化するとその細胞に対応した特定の動きが発生し、それらが協調的に機能することで複雑な腕の運動が形成されている可能性が示唆されました。

キレッキレのダンサーの動きをコピーして自分の体でやってみるとか、伝統芸能を脳のデジタルデータで保存するとか、保存したデータを体験するとか。人から人へ体の動きをコピーできるようになるかもしれません。


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2019-11-15 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

集団行動の起源

(ナショジオニュース 2019年10月21日から) 

5億年近く前の地層から10匹の三葉虫 が整列して海底をはっている化石が発見されました。集団で移動していた可能性があります。この化石は、地球の進化史の早い段階で動物たちの秩序立った行動が始まっていたことを示しています。

この三葉虫はまだ進化によって目を獲得する前のアンピクス・プリスクスという種の三葉虫ですが、きれいに直線上に同じ向きで整列しています。アンピクスは3本の細くて長いトゲを持っています。1本は正面に、2本は背中から後方向に伸びています。一列に整列した化石を見ると、前後の三葉虫のトゲが接触しているように見えます。したがって、三葉虫たちはお互いにトゲを使って触れ合いながら一列になって行進していたのではないかと推測されます。

集団行動の起源


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2019-11-14 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

全固体電池の現状

全固体電池の開発の進捗については、前回の阿佐ヶ谷科学食堂「科学史を好きなのはお前だけかよ( http://obio2.blog.fc2.com/blog-entry-284.html )」の質疑応答のコーナーで会場の専門家の方がわかりやすく解説して下さいました。全固体電池がリチウムイオン電池のように身近なものになるのは〇年後(科学食堂では具体的な数字でした)、リチウムイオン電池が苦手とする高温環境などでその威力を発揮することが期待でき、開発も〇社などで良い電池材料が発見されたことなどが展示会等で発表され、着々と進んでいる、ということでした。

それに関連して、今朝の日経新聞に同様の記事が掲載されていたので、こちらの方を要約し解説を加えておきます。

充電して使用し、使用後に再度充電して使用できる電池のことを「二次電池」といいます。それに対して、乾電池のように使い終わったら廃棄される電池を「一次電池」といいます。電池は「電極」と「電解質」が主要な部材ですが、リチウムイオン電池では電極は固体ですが、電解質は「電解液」とよばれる液体が使用されています。電解質はプラス極とマイナス極の間で(リチウムイオン電池の場合は)リチウムイオンが行き来して電流が発生します。この電解質を固体にしたものが全固体電池です。電解質に液体を使うと電解質の蒸発による劣化や液漏れなどいろいろとデメリットがあるのですが、固体の電解質はイオンの移動のしやすさにおいて液体に劣るため十分な出力が出ず、現在使用されている一次電池、二次電池は全て電解質には液体が使用されています。

そんなリチウムイオン電池の問題点を解決できる全固体電池は、村田製作所や太陽誘電などが量産化目前までこぎつけていますが、それらは小型のため、主にモバイル機器向けに使用されるものです。しかに、長年待ち望まれていた、電気自動車の電力源にも使用できるような大型の全固体電池にも最近、研究成果が出始めています。

リチウムイオン電池の発明で2019年ノーベル化学賞を授与される吉野彰さんらの研究チームが、車載用に必須だった大型化にメドを付け、試作品が完成したと発表しました。今はまだ、2センチ角と小型ですが、その特徴は電池がシート状である点にあります。これまでは筒状だった電解質を薄膜に成型することに成功したため電解質がシート状となり、大型化が可能になったものです。2022年には、車載はまだ無理ですが、シート状の全固体電池としては実用的なレベルにまで大型化したいとの考えです。電解質が薄いため、全固体電池がリチウムイオン電池に追い付けなかったイオンの移動度についても、リチウムイオンの移動が速くなったというメリットもあります。その結果、電池容量をより大きくできます。

全固体電池は安全性、出力、急速充電などの点で車載に適した電池であることから、トヨタ自動車は、今回発表された薄膜の全固体電池とは異なる、独自の全固体電池を開発中であり、2020年に試作品を搭載した車を発表する予定とのことです。

当然ながら、全固体電池を研究しているのは日本だけではありません。欧米・中国も研究を加速し、国を超えた出資や共同研究によって、2025年には実用化すると言われる全固体電池を搭載した電気自動車の覇権争いの膜が開いたといえます。

ちなみに、知識は広がり、理解は深まる阿佐ヶ谷科学食堂、次回第23回は下記の通りで開催します。前売りチケットはイープラスにて、2019年12月1日午前10時に発売開始です。チケット情報については下記、阿佐ヶ谷LoftA のサイトでご確認ください。
 https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/132395

阿佐ヶ谷科学食堂23
2019-11-14 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ホモ・サピエンスがあるのは絶滅した人類種のおかげ

オーストラリアのガルバン医学研究所が、現代人に備わる強力な免疫機構の一つが、すでに絶滅したデニソワ人由来、つまり、デニソワ人と交配した際、これは5万年前のパプアニューギニアやオーストラリアと思われますが、に免疫系遺伝子変異がサピエンスに取り込まれたことを発見しました。

この発見は、重度の自己免疫疾患を発症するある複数家族の遺伝子解析の過程で遺伝子変異として偶然発見されました。これら家族と同じ遺伝子変異をマウスで発生させたところ、この遺伝子変異は自己免疫疾患とは関係なく、むしろ免疫を強化し、ある種のウイルスへの抵抗性を付与する突然変異であることがわかりました。

さらに調査範囲を拡大したところ、この遺伝子変異「I207L」はシドニー出身の家系やメラネシア人、マオリ族、ポリネシア人などの先住民の家系でよくみられるものであることもわかりました。

この件以外にも、ホモ・サピエンスは絶滅した人類種から、酸素の少ない高地への適応能力や、病気の原因となるウイルスへの抵抗性などを獲得したことも分かっています。私たちホモ・サピエンスは、人類の最終形態だと思われますが、ここに至るまで、多くの絶滅した人類種が良い因子を私たちにリレーしてくれていたことがわかる研究成果です。


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2019-11-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ブラックホールの惑星に人は住めるか

NASAゴダード宇宙飛行センターの科学者が超大質量ブラックホールの近くを周回する惑星に生命の繁栄に適した環境が存在することは可能かどうかについて検討した論文を発表しました。

ブラックホールの惑星に人は住めるか

そもそも現代科学においては、生命体が存在するためには液体の水が必要であるとされています。つまり、惑星が何らかのエネルギー源によって温められる必要がありますが、超大質量ブラックホールは、それ自身が、ブラックホールに吸い込まれるガスから発生される電磁放射を行っており、これは膨大なエネルギー源です。膨大過ぎて、ブラックホールを取り囲む降着円盤(上図の青いディスク上の構造)は、数千度にもなり水を液体に保つには高温すぎます。そこで、ブラックホールから適度に離れることを計算したところ、惑星はブラックホールの重力半径(シュワルツシルト半径) の100倍離れた軌道を周回すればいい感じになることがわかりました。

あるいは、超巨大ブラックホールの近くの惑星はアインシュタインの相対性理論によってエネルギーを得られる可能性も導き出されました。その場合のエネルギー源は宇宙マイクロ波背景放射です。とはいっても、宇宙マイクロ波背景放射はほぼ絶対零度に近く、ほぼ温度はありません。

ところがここが科学者のすごいところで、相対性理論によると、ブラックホールの周辺では時空がゆがむため、惑星の地表では時間の進み方が遅くなります。時間が流れるのが遅くなるとドップラー効果 で光の青方偏移 が生じ、エネルギーが高まり温度が上昇します。この効果は惑星がブラックホールに近くなるほど大きくなります。この論文ではブラックホールの重力半径のすぐ外側を周回する惑星は、宇宙マイクロ波背景放射から十分な加熱を受けて、液体の水が存在できると算出しています。

 次の仮定は、惑星が属する超大質量ブラックホールが銀河中心にあるとした場合です。銀河中心は星の密度が非常に高いため、夜空は地球とは比べ物にならないくらい明るい、すなわちエネルギーを得ることができます。ラリー・ニーヴンのSF小説、リングワールドの逆バージョンのような、巨大日よけを宇宙空間に打ち上げる技術があれば、そのような惑星にも居住可能かもしれません。

 結論としては、この問題を解決しても今度は大量に降り注ぐニュートリノをどう防ぐか、ブラックホールが発する重力波の振動にどう耐えるか、ダークマターに満ちた環境でも生命は存在できるのか、いろいろな問題が噴出して、超巨大ブラックホールの周囲の惑星に住むには解決しなければならない問題がとても多そうです。


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2019-11-12 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

JWSTの進捗

JWSTはアメリカ航空宇宙局(NASA)が中心となって開発を行っている赤外線観測用宇宙望遠鏡で、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の後継機として位置づけられています。質量は6.2 t。ベリリウムを採用した反射鏡の主鏡の口径は約6.5mで、HSTの口径2.4mに対し、面積比で7倍以上になります。この巨大な反射鏡を打ち上げることができるロケットを人類は開発していないため、主鏡は一枚鏡ではなく18枚の六角形に分割されています。1枚の反射鏡の重さは約20kgです。反射鏡は打ち上げ後に展開されます。

JWSTの進捗

JWSTは赤外線で観測するために、熱がすべてノイズになってしまいます。太陽の日差しはもちろん、地球でさえ熱源となってしまいます。このノイズを克服して宇宙誕生初期の星や星雲をとらえるために反射鏡をマイナス220℃にまで冷却が必要です。そのため、ラグランジュ点(L2)と呼ばれる、太陽や地球の影響を受けない、地球からはるかかなたの軌道に配置されます。さらに、本体にはシート状の遮光板が装着されており、これも打ち上げ後に展開する仕組みになっています。

現在、JWSTは地上での組み上げが完成した状態ですが、反射鏡や遮光板を複雑に折りたたみ、展開を行うため、組み立て後の地上での試験も厳しい内容となっています.このたび、NASAは、重要な5層構造のサンシールド展開試験を実施し、それがクリアできたと発表しました。このサンシールドは直径5メートルのロケット内にその他の観測装置と共に収まるように小さく折りたたまれており、展開すると、厚さは髪の毛ほどなのに面積はテニスコートサイズにもなります。しかも、最適な日陰を作るために5層すべて形状が異なっており、耐久性を高めるために特殊なパターンが織り込まれています。

JWSTを開発するうえで最も難易度が高かったのが反射鏡とサンシールドでした。JWSTは宇宙空間のゼロG環境をシミュレートした状態で、すでに展開試験には合格しています。

今後は、包括的な電気テストと、発射振動環境をエミュレートする機械的衝撃テストを受け、その後、飛行前に最終展開試験と打ち上げのための折り畳みが行い、2021年3月の打ち上げを目指します。

JWSTの進捗


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2019-11-11 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

空腹に伴い味覚を調節する神経ネットワークの発見

世の中には「空腹は最上の調味料である」という言葉があります。元々はローマ帝国時代のキケロ という哲学者が言ったらしいです。意味としては、お腹が空いている時には食べ物がより美味しくなるということですが、良い意味でも悪い意味でも使われますが、いずれにしても、空腹は味覚に影響する、ということです。

科学的にも、空腹のときには味の感じ方や好みが普段とは異なることが知られています。興味深いことに、このような現象はヒトに限らず、マウスやショウジョウバエなど異なる種の生物でも観察されます。しかし、その原因はよくわかっていませんでした。

最近の研究で、脳にある特殊な神経細胞(AgRPニューロン)が空腹時に活性化することで食欲が生み出されることが明らかになってきました。

これを受け、日本の生理学研究所はおなかをすかせたマウスと通常にエサを与えたマウスを比較する実験で、おなかがすいたマウスは甘味など好ましい味はより食べたがる上に、苦味や酸味など腐った味を嫌う感覚が鈍くなることを明らかにしました。

AgRPニューロンを起点とした味覚調節システムの元来の役割は、飢餓が身近な野生環境において、糖など栄養価の高い食物を普段以上に好むように嗜好を変化させ、多少腐敗した食物でも妥協して食べるようにすることと思われます。

また、この神経ネットワークが不安・嫌悪など感情に関わる脳部位の活動を制御することも別の研究でわかっており、摂食時の生理状態(空腹・満腹など)により味の感じ方(美味しさ・まずさ)、さらには感情までもが変化するという現象の神経基盤であると考えられます。


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2019-11-08 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

光合成する家

大阪市立大学は、住宅メーカーと協力して、屋根の上にのせる光合成パネルともいえる、太陽光を受けて水と二酸化炭素からギ酸を作るパネルの研究を進めています。太陽光で作られたギ酸は、ギ酸分子(CH2O2)から水素を取り出して燃料電池で使用します。

光合成する家
日光に相当する光を照射する試験
(日本経済新聞より一部引用)

現在は瓦ほどの大きさのパネルを試作して性能を試験中とのことです。ギ酸から水素を取り出すと二酸化炭素が残りますが、この二酸化炭素も回収して再利用します。2020年度中に沖縄県の宮古島に試験住宅を建設する計画です。エネルギー効率は現在0.2%程度ですが、5%まで高めれば一軒分の水素エネルギーを賄うことができそうです。


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2019-11-07 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

搭乗型ロボ、巨大さ世界一認定

群馬県前橋市の産業機械メーカー榊原機械は搭乗型ロボットの開発を続けています。最新型が、登場型ロボットとして世界最大として、ギネス世界記録に認定されました。

このロボット「LW-MONONOFU(モノノフ)」は全長が約8.5メートル、重さが約7.3トン。頭部は戦国時代の鎧のようなデザイン、それ以外は初代ガンダムの雰囲気を漂わせたデザインとなっていて、ガンダム同様に、胸の部分に乗り込んで操作します。時速約1キロメートルで二足歩行し、上半身や腕を動かせる。右手の空気銃からはボールを発射することもできます。開発には6年かかり、2017年末に完成しました。


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2019-11-06 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

超電導モーター飛行機の開発

超電導というのはある種の金属や合金の電気抵抗がある温度以下で急にゼロになる現象のことです。超伝導体で作った回路は外からの起電力を遮断しても電流を流し続けることができます。この電流を永久電流といいます。1911年オランダの物理学者カマーリング・オネスが水銀の電気抵抗がある温度で急にゼロになることを発見しました。

 九州大学の研究者らは米国ボーイング社などと航空機用の超電導モーターの開発に取り組んでいます。航空機用には軽量で小型かつ強力な動力が必要です。小型機であるボーイング737型機を飛ばすためにも最大で20メガワットの出力が必要とされています。現在の試作品では、出力1キロワットしかでていません。メガワットクラスの出力を出すには普通のモーターでは重量が10トンにもなると考えられ、超電導モーターによる軽量化は、航空機の電動化に大きく寄与することが期待されています。

超電導モーター飛行機の開発

超電導モーターの電力源にはガスタービンを使用し、モーターの銅線の代わりに超電導線材を使ってコイルを作ります。超電導状態を作るには超低温が必要ですが、その冷却には液体窒素と気体の水素やヘリウムを使うことで液体窒素を減らし、モーターが回転するときの抵抗も減らす計画です。超電導モーターのメリットは、電気抵抗がゼロになるため、コイルに多くの電力を流すことができ、強力な磁場が発生させることができる点です。 重量については、通常モーターの10分の1の重さの超電導モーターで、2倍の出力が得られると試算されています。ガスタービンで発電する際や、そこからモーターに送電する際も全て超電導を利用して、損失を限りなく減らして効率化を狙います。

目標とする超電導モーターの大きさは直径50センチメートル、長さ約1メートル。これを機体に複数並べて飛ぶ想定で、推進システム全体の重量を2.5トンに抑えます。2030年には超電導飛行機の試験飛行を実施したい考えです。


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2019-11-05 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

人類はアルツハイマー病を克服するか

医療技術の進歩や衛生状態の改善などで、人類が遺伝子の想定を超える長寿命となった結果、がんをはじめとする多くの治療が困難な疾患が誕生しています。その一つが世界中の数千万人もの人々に影響を与える深刻な疾患であるアルツハイマー病です。アルツハイマー病の治療については、これまで、症状の進行速度を遅くする薬はありましたが、アルツハイマー病の症状を抑制する薬は無く、人類が克服できない疾患の一つでした。

ところが、2019年10月22日、バイオジェン社とエーザイ株式会社は、早期アルツハイマー病患者を対象に臨床試験を実施したアデュカヌマブ について、バイオジェンが米国食品医薬品局(FDA)との協議に基づいて、新薬承認をめざすことを発表しました。医薬品が市場に出るまでには臨床第I相試験(健康な人に少量を投与して安全性を確認する試験)、臨床第Ⅱ相試験(少数の患者に投与して、安全性と効果を確認する試験)、臨床第Ⅲ相試験(大規模に患者に投与して既存の治療方法に対してより有効であることを確認する試験)が行われますが、第Ⅲ相試験において、アデュカヌマブの高用量投与群がプラセボ群と比較して、統計学的に意味のある臨床症状の悪化抑制を示すことがわかりました。

アデュカヌマブを投与された被験者では記憶、見当識、言語などの認知機能において顕著な違いが見られました。また、金銭管理、掃除、買い物、洗濯などの家事や単独での外出などの日常生活動作においても違いが見られました。アデュカヌマブが承認された場合、本剤は早期アルツハイマー病の臨床症状悪化を抑制する最初の治療剤となるとともに、アミロイドベータ(Aβ)の除去が臨床上の意味があることを実証する世界初の薬剤となります。

アデュカヌマブは米国だけでなく、日本、ヨーロッパなどでも、各国の規制当局と協議の上、製造販売承認申請を行う予定だそうです。


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2019-11-04 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

宇宙のガソリンスタンド誕生か

宇宙のガソリンスタンド誕生か

米国のスタートアップOrbit Fab社は宇宙空間でのロボットによる人工衛星への燃料補給技術の開発に取り組んでいます。この会社はすでに2019年3月に国際宇宙ステーションに水を供給することに成功しています。ISSに物資を供給した初めてのスタートアップです。ISSへの水の供給は軌道上の人工衛星に燃料補給する技術にも使えることを実証するものです。イーロン・マスクはロケットを再利用可能にしましたが、オービット・ファブは人工衛星も再利用する時代を作り出そうとしています.

仕組みは簡単で、人工衛星メーカーは標準的なノズルを人工衛星の設計に組み込みます。オービット・ハブ社のガソリンスタンド衛星のロボット給油機がノズルを探し出し、カプラーを介してしっかりと人工衛星と接続し、推進剤を注入することになります。


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2019-11-02 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

一人一人の体調に合わせた寿司を提供

オンラインで寿司店を予約すると、健康状態を調べる検査キットが送られてきて、それを返送するとデータが解析され、予約客ごとに最適の栄養状態、おいしいと感じる味に調整されて出てくる寿司屋を開業しようとしている日本のスタートアップがあります。

店を訪れると店内には寿司職人ではなく、3Dプリンターやロボットアームが寿司を作る計画です。このような、まったく新しいスタイルの寿司店「寿司シンギュラリティ東京」を構想するのは「OPEN MEALS(オープン・ミールズ)」というプロジェクトです。ファウンダーは電通。マグロの食感を再現した「細胞培養マグロ寿司」など、3Dプリンターによる寿司を提供する計画です。2020年の開店を目指します。


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2019-11-01 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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