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ボランティアDNAデータベースの問題点

米国では公開遺伝子データベースを使った未解決事件の犯人探しが行われています。これに関連して、ボランティアによって運営される大規模なDNAデータベースに重大なセキュリティ上の欠陥があり、米国人のDNA情報が他国に漏洩する可能性があることがワシントン大学の調査で判明しました。この情報を入手した国は、DNAサンプル1つで米国のほぼ誰についても90%以上の正答率で個人を特定できる可能性があります。

このサービスは「ジェドマッチ(GEDmatch)」と呼ばれるサービスで、DNA情報をクラウド・ソーシングによって収集しています。もともとは、親戚探しのためのツールとして始まり、5人のボランティアの手によって運営されていますので、セキュリティ専門家を雇う余裕がない状態で運営されています。ワシントン大学の指摘によれば、大規模な情報流出がすでに起きており、米国人のDNA情報が共産圏に流出している可能性が非常に高いとしています。

ボランティアDNAデータベースの問題点

米国ではすでに数万円で自分のゲノムを解析してくれるサービスが普及しており、自身の解析結果を自主的にこのようなクラウドデータベースサービスにアップロードして公開している人が多くいます。そして、その内容を他のユーザーのデータと比較することで、親戚を探すのです。

このようなデータベースが充実した結果、DNAデータが警察の捜査に使われるようになりました。実際に2017年、カリフォルニア州警察がジェドマッチを使い、殺人犯の身元特定につなげたと発表しました。その結果、警察が利用者のDNAを本人の同意なしで検索することに対する、プライバシーに関する議論が噴出しました。

問題は、米国人DNA情報の流出がシステムのハッキングなどではなく、正当な利用方法によって他国に持ち出すことが可能な点です。それを防ぐには、閲覧性や利便性、提供するデータの量や質を制限すればよいことですが、それではデータベースの利便性を損ねてしまいます。

ジェドマッチに登録されている件数は百数十万件ですが、これだけの数字があれば米国人3億人の「はとこ(親のいとこの子)」もしくは「みいとこ(親のはとこの子)」までの血縁関係はたどり着くことが可能です。ワシントン大学の研究者によると、これだけのデータがあれば、たとえば、米国人スパイや外交官の素性を突き止めたり、親戚を探し出したり、認知していない隠し子のような遺伝情報上の「コンプロマート(交渉材料になる弱み)」を見付けたりすることが可能だ、ということです。このようなデータベースが構築されているのは今のところ米国だけなので、米国は一方的にリスクを負っていることになる、と問題視しています。


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2019-12-31 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

企業の謝罪方法を科学する

企業の謝罪方法を科学する

神戸大学、名古屋大学、愛知医科大学、高知工科大学の研究グループは、企業のような組織や集団の謝罪はどのように行われれば、受け手は誠意を感じるかをfMRIを用いて科学的に調査しました。その結果、補賞を申し出る。外部の第三者委員会の調査をすすんで受けるといったコストがかかる謝り方をするほど、受け手の脳の特異的部分が活性化し、誠意が伝わることを発見しました。

本研究では、実験協力ボランティアに、企業が不祥事を起こした際の謝罪を仮定し、どのような謝罪が脳に強く影響を及ぼすかをfMRIで客観的に評価しました。例えば、ある会社の製品が発火事故を起こした場面で、その企業が「すぐに謝罪し製品の交換も行うと発表する場合」「単に製品の不具合について謝罪する場合」「調査中として謝罪しない場合」などでの脳の反応の違いを調査しました。

個人間の謝罪の場面では、相手の誠意を感じると、脳の情報処理ネットワークのうち、前頭前皮質、両側の側頭頭頂接合部、楔前部(けつぜんぶ)が活発化することが先行研究で明らかになっています。そのため、本研究でもfMRIを用いて、同じ部位を活発化するかについて調べました。

実験に参加した25人分のデータを分析した結果、両側の側頭頭頂接合部と楔前部(けつぜんぶ)ではコストがかかる謝罪の場合、コストなし謝罪や謝罪なしの対応よりも強く活動していました。

企業の謝罪方法を科学する

本研究結果は、謝罪を受ける側が、個人の行う謝罪と同じように集団からの謝罪を処理していることを示しています。つまり、個人間の場面で効果的な謝罪は、集団謝罪の場面でも有効であることが示唆されています。個人間の謝罪の機能は友好的な関係の回復にあります。企業の謝罪は集団の利益の保持など個人の謝罪とは異なる目的でなされるかもしれません。しかし、人々の脳は、それを対個人の場面と同じ場所で処理している可能性が今回の研究結果で示唆されました。

企業では不祥事が発生した際の謝罪方法についてシミュレーションしていますが、その多くはコンサルタントが用意したシナリオを朗読するようなものです。今後は、記者役の人をfMRIで観察しながら、原因に応じた適切な謝罪方法を検討するなど、企業対応にも科学的なアプローチを導入して炎上を抑える努力が必要になると思われます。


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2019-12-30 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ランカ・リーが歌うべき楽曲を設計する技術

アニメのテーマとして歌で宇宙の平和を、というのがよくあります。たとえば「マクロス・フロンティア」のランカ・リーは歌が、人類の敵として登場する宇宙生物バジュラに影響を及ぼすことが判明してからは軍事的に利用されるようになる緑髪のメインヒロインです。

このような設定において、多くの場合、冷めた人は歌を歌って敵がおとなしくなったり、戦争が終わったりするなら苦労はしない、などと斜に構えるわけですが、歌で戦争をやめさせることができそうである研究が発表されました。

南カルフォルニア大学の研究チームは、私たちが音楽を聴いた時に、そのピッチ、リズム、ハーモニーなどから生み出される、さまざまな脳活動や身体的反応、感情を機械学習で予測することに成功しました。これを逆に利用することによって、脳活動や身体的反応、感情を思いのままにコントロールできる音楽が作成可能かもしれません。 研究者はまず、確実に悲しみを感じさせる2曲と、確実に幸福感を得られる1曲を音楽ストリーミングサイトのタグ付から選び出しました。これらの曲を聞いたことのない100人の実験協力ボランティアを2つのグループに分け、3曲すべてを聞かせ、1つのグループはfMRIで脳の活動を調べ、もう1つのグループは皮膚に脈や熱、電気的反応を測定するセンサーを取り付け、感情の変化を10段階で評価しました。

その後、研究者は取得したデータをそれぞれの曲の74個の特徴(ピッチ、リズム、ハーモニー、音の強弱、音色など)と合わせて機械学習アルゴリズムに取り入れ、人の反応と曲の要素を関連付けました。その結果、たとえば音の周波数が高さから心拍数と脳活動度合いを予測することができました。

将来的には、特定の個人の要求に応じた曲を作曲したり、映画音楽への応用や、脳の特定の領域を刺激する音楽を作って精神障害のリハビリに用いたりすることができるようになるかもしれません。


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2019-12-27 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ブラックホールの周りに広がる新たな「惑星」の世界

ブラックホールの周りに広がる新たな「惑星」の世界

鹿児島大学と国立天文台の共同研究チームは、銀河中心の超巨大ブラックホールを公転する惑星が存在し得ることを世界で初めて理論的に示しました。

現在の惑星形成理論においては、原始惑星系円盤で塵や氷が互いに引き寄せあって成長し、やがて惑星になると考えられています。この過程で塵の塊はふわふわとした状態になり、メートルサイズまで成長します。この塊が互いに衝突したり自身の重力で収縮したりすることで密度を増しながら、やがて惑星へと成長します。研究チームは、このような塵の成長が巨大ブラックホール周辺の円盤でも起きることを計算で示しました。

巨大ブラックホールの近傍は高温のため非常に明るく光っていますが、その外側に位置するガスと塵から成る円盤内部は温度が低く、岩石の塵は氷をまとっているため、太陽系のような惑星系が形成される原始惑星系円盤に似た環境だと考えられます。計算によると、塵の成長が始まってから数億年程度で、惑星が約1万個程度ブラックホールの周囲に形成されると見積もられました。


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2019-12-26 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

深い眠りが脳の老廃物の除去を促す?

米国、ボストン大学は深い眠りについている状態であるノンレム睡眠中に、アミロイドβ などの脳内の有害物質が脳脊髄液 を経由して洗い流されるメカニズムを解明しました。脳は脳脊髄液の中に浮かぶように存在しています。

これまでの研究で、脳の活動で発生するゴミ物質は脳脊髄液が外へ組みだしていることがわかっていました。さらに、この脳の掃除のような作業は睡眠中に活発になることも分かっていました。しかし、そのメカニズムについてはよくわかっていませんでした。

研究者らは今回、MRIを用いて脳脊髄液の流れを観察し、脳波によって脳の活動を測定しました。その結果、ノンレム睡眠の中でも大きくゆるやかな波が現れる深い眠りの段階である徐波睡眠 中に、徐波が起こるたびに血流の速さや量が変動し、脳脊髄液が大きな振幅を有する波として脳内の隙間に流れ込んでいることが分かりました。これが脳内のゴミを運び出すことに有効に作用していると思われます。

深い眠りが脳の老廃物の除去を促す?

人は加齢とともに徐波の出現量が減少します。徐波が減ると、脳内の血流量にも影響が及び、睡眠中の脳脊髄液の波が減少し、ゴミ物質の蓄積と記憶力の低下をまねくと思われます。最近の研究では、健康な成人でも一晩眠らないだけで脳内のゴミであるアミロイドβが増加することが報告されています。


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2019-12-25 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

電気で潤うコンタクトレンズ

東北大学の研究グループは、新たに開発したハイドロゲル 素材を用いたコンタクトレンズの研究で、電流を流すことによってレンズ内に水流を発生させて、レンズの乾燥速度を遅くする技術の開発に成功しました。このコンタクトレンズは生体親和性のバイオ電池を搭載していますので、外部からの電源供給も不要だということです。

電気で潤うコンタクトレンズ

コンタクトレンズは視力の調節の他、美容やファッション用途まで含めると、日本人の5人に1人が使用しています。さらに、将来の技術としてコンタクトレンズ内に様々な回路やセンサーを組み込み、眼圧を測定したり、体液中の糖分を測定したり、視界に映像を重ねて表示したりする機能を持つスマートコンタクトレンズの研究も進んでいます。多くの人がこのような高機能なコンタクトレンズを使用できるようにするには、ドライアイなどコンタクトレンズ使用による弊害への対策が必要です。コンタクトレンズを装着すると目の水分の蒸発を促進させてしまいますので、多くの人がドライアイ状態になり、生活の質の低下、視覚障害の原因になる恐れがあります。

電気で潤うコンタクトレンズ
血糖を測定し無線でスマホにデータを転送するコンタクトレンズ(グーグルによる試作品)

 東北大学は新たなハイドロゲル素材でコンタクトレンズを作製し、レンズ内に電気浸透流を発生させることでレンズの保湿が可能であることを明らかにしました。電気浸透流とは、液体と固体が接している所に電圧をかけた場合に、液体が移動する現象のことです。電気浸透流に必要な電力を賄うために、今回の研究では2種類の生体適合性電池を試験しました。ひとつは、Mg / O2 電池、もうひとつは酵素触媒を用いるフルクトース/ O2 バイオ電池です。Mg / O2 電池はレンズの一端にプラチナ、一端にマグネシウムの電極を設置して回路を接続するとプラチナ側で酸素との酸化還元反応が起きて電流が流れる電池です。フルクトース/ O2電池はフルクトース脱水素酵素がフルクトースを分解する際に電子が放出される仕組みを利用した電池です。今回の実験ではいずれの電池においても同様の保湿結果が12時間程度得られていますので、十分な保湿効果のあるコンタクトレンズが実用化できるめどが立ったと言えます。 


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2019-12-24 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

軌道エレベーター研究の現状

宇宙旅行をするには現在はロケットが使用されますが、それを代替する手段として軌道エレベーターの検討が多くの研究者や建設会社によって進められています。軌道エレベーターとは、静止軌道に設置した宇宙ステーションからケーブルを地表まで伸ばし、そこにゴンドラを設置して地上と宇宙空間を行き来する昇降装置です。たとえば、日本のゼネコン、大林組はこのような技術で軌道エレベーターを2050年に実現する夢を持っています。

軌道エレベーター研究の現状

地球から軌道エレベーターに乗り込んだ人たちは、3日程度をかけて上空35,786キロメートルの静止軌道上にある宇宙ステーションに向かいます。平均時速は500キロメートル程度で、現在JR東海が建設中のリニアモーターカーとほぼ同じ速度ですので、普通の人が十分に耐えられる速度です。多くの研究者が軌道エレベーターは理論的には建設可能と考えていますが、問題になるのは数万キロメートルもの長さの丈夫なケーブルです。現時点でこのように長くて丈夫なケーブルを現実的な費用と材料で作る技術は存在していません。

最近注目されているのが、宇宙ラインという技術です。宇宙ラインは月に片方の端を固定したケーブルを地球に向かって伸ばす技術です。軌道上に宇宙ステーションを建設して軌道ケーブルを地球に伸ばすより、月から宇宙ラインを建設した方が容易だろうと最近は思われるようになりました。とはいっても、従来の考え方の軌道エレベーター同様にこのような長くて丈夫なケーブルを作製することが困難であることに違いはありません。

かつては、ケーブルの材料が存在しないと言われていた軌道エレベーターですが、1991年に日本の科学者飯島澄男氏が世界で初めて実物を電子顕微鏡で発見したカーボンナノチューブの登場によって一気に現実味を帯びてきました。中国の精華大学などは長さ数十センチのカーボンナノチューブの合成に数年前にすでに成功しており、現在は長さ1キロメートルを目指して研究が進められていると思われます。将来、これを連続して紡ぐ技術が開発されれば、カーボンナノチューブ紡糸装置を搭載した静止衛星を打ち上げ、実際にケーブルを展開し、その挙動などを調べることによって、より理想に近い軌道エレベーターはどのようなデザインになるのかもわかってくるものと思われます。


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2019-12-23 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

衛星コペルニクス・センチネル-6A報道陣に公開

地球温暖化に伴う大陸氷河の溶解と海水温度上昇による海水の膨張によって、現在、地球では海面上昇が進行しています。それを宇宙から正確に測定する欧州宇宙機関(ESA)の人工衛星「コペルニクス・センチネル-6A」公開されました。

コペルニクス・センチネル-6Aは、欧州宇宙機関(ESA)、NASAなどが共同で行う海面変動観測計画「センチネル-6」で打ち上げられる2機の人工衛星の第1弾です。これまでの人工衛星による観測で、海面は地球温暖化の影響により1993年~2018年の期間に年平均で3.2mm、2013年~2018年の5年に限ると年平均4.8mmのペースで上昇が続いています。この海面変動をより精密に測定し、データを今後の地球温暖化対策に活用しようという取り組みが、センチネル-6です。コペルニクス・センチネル-6Aは、高性能なレーダーにより、地球の海面の95%にあたる範囲を数cmレベルの高精度で測定し、地図を10日ごとに更新します。打ち上げは2020年11月にスペースX社のファルコン9ロケットで行われる予定です。ペアとなるコペルニクス・センチネル-6Bは2025年に打ち上げられる予定です。

衛星コペルニクス・センチネル-6A報道陣に公開


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2019-12-20 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

関節炎で骨を破壊する「悪玉破骨細胞」を発見

骨も新陳代謝しています。古くなった骨の細胞を破骨細胞が吸収して穴をあけ、その穴を埋めるように骨芽細胞が新しい骨を作り出す、これを全身の骨で絶え間なく行っています。

 大阪大学の研究グループは、破骨細胞には正常な破骨細胞とは性質も起源も異なる「悪玉破骨細胞」が存在することを世界で初めて明らかにしました。骨の新陳代謝における破骨細胞は言ってみれば善玉破骨細胞ですが、関節リウマチやがんの骨転移といった病気では、この破骨細胞が異常に活性化することで骨の破壊を起こすという「悪い働き」をしてしまうことが知られています。これまでの通説では、この破骨細胞は一種類であり、働き方が異なることで、「良い働き」や「悪い働き」を行うと考えられてきましたが、今回の研究で、これらの細胞は元々異なるものであり、病的な骨破壊を行う「悪玉破骨細胞」が存在することが確認されたものです。

関節炎で骨を破壊する「悪玉破骨細胞」を発見

マウスに関節炎を発症させ、関節組織から細胞を回収し独自の方法で解析したところ、炎症を起こした関節組織には、病的に骨を破壊する「悪玉破骨細胞」へと変化する特殊なマクロファージ(悪玉破骨前駆細胞)が存在することが明らかになりました。マクロファージとは、細菌・異物・細胞の残骸などを細胞内に取りこみ消化する力の強い大型の単核細胞です。このマクロファージを“arthritis-associated osteoclastogenic macrophage; AtoM(アトム)”と命名しました。さらに、AtoMができるときに必要な分子を同定し、これを抑制することで、AtoMや、そこから生じる「悪玉破骨細胞」が特異的に阻害され、骨の破壊を強力に抑えることを証明しました。今後、関節リウマチ患者の病的な“悪玉破骨細胞”を標的とした新たな治療薬開発が期待されます。


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2019-12-19 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

アルファベット「エブリデー・ロボット」が始動、ゴミ分別から

グーグルの親会社アルファベット社の基礎研究開発部門「X」は、ごく普通のことができる学習ロボットの開発を目指す「エブリデー・ロボット」プロジェクトを発表しました。ロボットにカメラと機械学習ソフトウェアを搭載し、ロボットが自らまわりの世界を観察し、普通の家庭や仕事場で起きている、あらゆるシチュエーションに自律的に対応させようというものです。

現時点は、プロトタイプ・ロボットは、ゴミの分別方法を学んでいるといいます。開発中のロボットがごみの分類を間違えるエラー率は現在5%以下です。ちなみに、人間の分別間違い率は20%だということです。

アルファベット「エブリデー・ロボット」が始動、ゴミ分別から

将来的には、家庭やオフィスなどの雑然とした環境で自然にふるまえるロボットの開発を目指します。


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2019-12-18 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

火星の酸素は春と夏に急増

火星の大気における酸素の含量は0.16%と見積もられていますが、2012年から観測を続けているNASAの火星探査車キュリオシティ が、火星の大気には、これまで予想されていた以上に多くの酸素が含まれており、しかも濃度が春と夏に大きく上昇していることを発見しました。火星大気については、メタン濃度が季節によって大きく変動することがすでに知られていました。火星の酸素は、光合成ではなく、大気中の二酸化炭素と水蒸気から、紫外線による化学反応で発生するため、この変動は生物の活動とは関係がありません。 

火星の酸素は春と夏に急増

来年、2020年は火星探査機が新たに2基追加されます。NASAの探査車「マーズ2020」は、サンプルを採取して、将来的に地球へ持ち帰る計画ですし、欧州連合とロシアは共同でエクソマーズ計画を進めており、探査車「ロザリンド・フランクリン」 を開発しています。ロザリンド・フランクリンは、火星表面に深さ1.8メートル以上の穴をあけ、火星の内部組成についての化学組成分析を行います。

火星の酸素は春と夏に急増
マーズ2020

火星の酸素は春と夏に急増
ロザリンド・フランクリン

大気中酸素濃度が春から夏に急上昇するメカニズムはまだわかっていません。火星の酸素を発生させている通常の太陽エネルギーはこれほどの変動をしないからです。従って、科学者は火星の表面に酸素を含む化学物質が、宇宙高エネルギー粒子の影響を受けて酸素を放出しているのではないかという説があります。火星の土壌は地球と比べて、鉄や硫黄を含む鉱物が豊富であることはわかっていますが、地下がどのような組成になっているのかはわからず、この説も単なる想像にすぎません。

 火星の大気と大気成分の循環について理解することは、将来の火星有人探査や火星移住の前に十分把握して準備する必要があります。地球においても大気組成の変動はありますが、それらは経済活動を含む生物の活動と火山活動が原因ですが、火星にはいずれも無いため、2020年に打ち上げられる探査機の活躍が期待されます。  これらの探査機の活躍で、土壌成分中に酸素がたくさんあることがわかれば、コケをまくよりも化学反応で酸素を作る方が簡単かもしれないので、そのような方法で酸素を作って植物や菌類を移植してその成長の様子をライブカメラで観測するような理科の勉強ができる時代が来るといいですね。人間が直接行って何かしなくても、地球の植物と中継カメラがあれば十分楽しいと思います。


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2019-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

2階建ての建物を現場で印刷

中国建築集団有限公司が、中建機械公司が設計・製造した建設用3Dプリンターを使用して高さ7.2メートルの2階建てのオフィスビルを印刷で建設したと発表しました。これは建設用3Dプリンターの画期的な進展です。印刷で作った部材を組み立てた多層階建築はすでにありましたが、まるごと多層階建築物を印刷で作り上げたのはこれが世界初です。

2階建ての建物を現場で印刷

しかも、この建設用3Dプリンターは、パソコンで全自動動作します。24時間ノンストップ・無人で建物の印刷を続け、2階建ての建物の主体部分を3日で一気に印刷します。一度で作業が完了するため、コンクリートが無駄になることなく、コンクリートの必要量を 60%以上削減しました。耐用年数についても従来工法に比べて若干短いものの50年の耐用年数があります。一般的には60年程度で大規模な改修が必要とされています。印刷用コンクリートも含めてすべて中国で開発された技術だけが使用されています。

 セメントは印刷用グレードを新規に開発し、幅5センチ、厚さ2.5センチのコンクリートを一層ずつ積み重ね、建築物の壁を作ります。この壁は中空構造になっていて断熱材を差し込むことができるようになっています。ただし、施工前に地下に基礎の鉄筋を埋め込む作業は従来通り手作業で行われました。

 建物を3Dプリンターで印刷するメリットは、前述の通りの材料の無駄が無いこと、無人で24時間建設を続けられること、そのため工期が著しく短縮できること、部材同士を接合するためのネジなどが減るために、環境に良いこと、結果として建物の価格が安くなること、などがあります。

 この中国の2階建てビルの価格は明らかにされていませんが、米国で平屋建てを印刷で建設したケースでは、17坪の住宅が60万円の費用で建設できました。坪単価3万5000円と格安です。

2階建ての建物を現場で印刷

ちなみに、日本においては、建築基準法で、建築に使用しなければならない素材や工法が非常に細かく決められているため、3Dプリンターで建物を作ることは、大学などの特区を除いては不可能です。


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2019-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ブルーライトは老化を早める?

米国オレゴン州立大学が、スマートフォン、パソコン、照明器具などが発するブルーライト に日常的に曝露すると、老化が早まる可能性があることをハエを使った実験で発見しました。LEDの技術は開発されてからまだ日が浅いため、生涯にわたるブルーライトの影響については分かっていません。そこでショウジョウバエを用いて、その影響を調べる研究を行ったものです。

その結果、毎日12時間ブルーライトを浴び、12時間暗闇の中で過ごしたハエでは、暗闇の中だけで過ごしたハエやブルーライトをカットした光の中で過ごしたハエに比べて寿命が統計的に意味があるレベルで短いことが分かりました。また、ブルーライトを浴びたハエは、網膜細胞と脳の神経細胞に損傷がみられ、運動能力も低下していました。遺伝子の変異で眼を失ったハエにおいても、同様の影響がみられたことから、ブルーライトを直視しなくても身体に浴びるだけでそのような悪影響が出ることも確認されました。

原因については、ブルーライトに曝され続けると、ストレス応答遺伝子が活性化することから、老化の過程でストレスが作用していると推定しています。人間で同様な現象が起きるかどうかは不明ですが、ブルーライトをカットするにこしたことはないと思われます。


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2019-12-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

AIで知られていないナスカの地上絵を発見

山形大学は、ドローンを活用した現地調査などにより、ナスカ台地と周辺部で新たに人や動物などの地上絵143点を発見し、そのうち1点はAIが発見したと発表しました。

新たに発見された地上絵には、全長100メートル以上の鳥やシャチ、蛇が人をのみ込もうとしているような珍しい図柄の地上絵も発見されました。制作年代はいずれも紀元前100年~紀元後300年とみられます。

AIによる発見は日本IBMの協力で行われ、すでに見つかっている地上絵をAIに学習させ、ナスカ台地の航空写真から地上絵を探す実験を行った結果見つかったものです。AIは500点以上を候補として選び出しましたが、その中から山形大学の研究者が確認を行い、一点がこれまで発見されていなかったつえを持つ人の形の地上絵であることを確認しました。

AIで知られていないナスカの地上絵を発見


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2019-12-12 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

特殊な免疫細胞を持っている人が110歳まで生きる

110歳以上の長寿の人をスーパーセンチナリアンと呼び、多くの人は健康でがんや心疾患になっていないことが知られています。理化学研究所と慶應義塾大学の共同研究グループは、スーパーセンチナリアンの特殊なT細胞であるCD4陽性キラーT細胞 を血液中に多く持つことを発見しました。

スーパーセンチナリアンは、免疫システムの司令塔の役割を果たすT細胞の構成が50~80歳と比べて大きく異なっており、特に、通常は少量しか存在しないCD4陽性キラーT細胞が高い割合で存在していることが確認されました。

T細胞は免疫機能に関係するリンパ球の1種ですが、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞とに大別されます。多くの人が持つCD8陽性キラーT細胞は、ウイルスに感染した細胞を殺処分しますが、感染が慢性化すると力が弱まります。このような状況下では、CD4陽性キラーT細胞が働きを補うことや、高い抗腫瘍効果を持つようになることなどが報告されています。つまり、50~80歳時点でCD4陽性キラーT細胞をたくさん持っている人は110歳まで生きる可能性が高いということです。


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2019-12-11 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

パリ協定の目標を達成できる国はわずか

地球温暖化抑制に関する、2015年のパリ協定では、産業革命以前と比べて、地球の平均気温の上昇を2℃未満に抑えることに各国が合意しました。この数値を実現するために、世界184カ国が二酸化炭素排出量の2030年までの削減目標を提示しています。ちなみに日本は、2030年度に2013年度比▲26.0%(2005年度比▲25.4%)の水準(約10億4,200万t-CO2)としています。一方で、各国の目標を達成しただけでは、温暖化を抑制するには十分とは言えないと考えられますが、それどころか、二酸化炭素排出量が増えている国が多くあるのが実態です。

パリ協定の目標を達成できる国はわずか

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)元関係者などの科学者集団の非営利団体ユニバーサル・エコロジカル・ファンドが最近発表した報告書「パリ協定の気候目標に隠された真実」によると、二酸化炭素排出の削減に失敗すれば、人間が原因の気候変動による異常気象や新たな気候パターンにより、2030年には世界は1日あたり最低でも20億ドル(約2175億円)の経済的損失を被る上に、人々の健康、生命、食、水、そして生物多様性もが脅かされるとしています。パリ協定では今世紀末までの気温上昇を2度未満に抑えるとしていますが、現状では今世紀末までに世界の平均気温は3~4度上昇すると見積もられています。

 その場合、永久凍土は溶け、海面が今より10~60メートル上昇し、温暖化は加速して止めることができなくなるものと想像されます。今世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるには、世界の二酸化炭素排出量を今後10年間で半分に削減し、2050年までには正味ゼロにしなければなりません。それに対して、今後10年間で半分に削減できない国は184カ国中4分の3にも達します。国別にみると、世界最大の二酸化炭素排出国である中国と、4位のインドは、2030年まで排出量が増加し続けます。排出量第2位の米国はトランプ大統領がパリ協定を破棄することを決定した上、化石燃料の輸出国に転じたため、二酸化炭素増加に転じる可能性が高いとみられます。先進国中では排出量3位の欧州連合(EU)だけが、2030年までに60%近くも削減できるペースです。

 この2050年までに世界的な二酸化炭素排出量を正味でゼロにする必要があるというのは多くの気候学者の共通した意見となっていて、そのためには先進国自身が、多すぎる火力発電所を廃止するなどして化石燃料の使用を削減する、焼き畑を回避して森林保護へ取り組む、物流の省エネや効率化を図る、食品の無駄を減らすなどの対策をとる必要はもちろん、貧しい国々へ技術を提供する必要などもありますが、それらの発展過程の国々では開発優先で温暖化対策はうまくいっていないのが実態です。科学者の提言の中には肉の消費量を減らすというのもあるのですが・・・。

パリ協定の目標を達成できる国はわずか


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2019-12-10 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

量子生物学

ウィーン大学は生体分子の「波」としてのふるまいを初めて測定したと発表しました。量子力学 においては、物体は粒子のようにふるまうと同時に、波のようにもふるまう性質を備えていますが、マクロな物質では波としての性質を測定することは困難です。ウィーン大学の研究者らは、マクロな生体分子が示す波としての性質を実証する自己干渉パターンの測定に初めて成功しました。この実証実験は量子生物学の新時代に道を開くものとなります。 これまで、電子や光子などの単一粒子が波のように自己干渉することは多数の実験で示されてきました。有名なのは、粒子が2本のスリットを同時に通過する二重スリット実験です。

量子生物学

あらゆる物体は本質的に量子であるため、すべての物体は波長を持ちます。厳密な実験を行えばマクロな物体も、ミクロの粒子と同様の波動の二重性を示すはずです。1999年にはフラーレンという炭素原子だけでできたサッカーボールのような分子で、粒子と波動の二重性が実証されました。そのような実験から、どれくらい大きな分子まで、波としての性質を持つことを実証可能かという点は非常に興味深いものです。

ウィーン大学の研究チームは、15個のアミノ酸で構成される天然抗生物質であるグラミシジン分子の量子干渉を初めて実証しました。

分子ビームというものがあります。分子ビームは、分子の気体や蒸気を狭い穴から高い真空中へ噴出させ、さらにスリットにより方向と太さをそろえてつくるビームです。ウィーン大学が開発した実験方法は、超低温グラミシジン分子の分子ビームを生成し、この分子ビームが自己干渉するときに生じる干渉パターンを測定するという手法です。干渉パターンが得られれば、分子が波のような性質を示す証拠となります。今回の実験では、グラミシジン分子は350フェムトメートルの波長を持ちますので、それを観測しました。

この実験手法を開発したことで、生体分子の量子特性のより詳細な研究が可能になるはずです。このような研究を量子生物学と呼び、生命体で機能する途方もなく複雑なプロセスを解き明かすのに役立つかもしれません。

量子生物学


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2019-12-09 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヒト歯周病の歯茎での脳内老人斑成分産生

九州大学と中国吉林大学の共同研究で、ヒトの歯周病の歯茎および歯周病原因菌であるジンジバリス菌(Pg菌)を全身に慢性投与したマウスの肝臓に、脳内老人斑成分である アミロイドβ(Aβ)が産生されていることが発見されました。

世界各国で高齢化が進むに伴い、認知症患者数が急増しています。認知症の7割を占めるのはアルツハイマー型認知症で、根本的な治療法がないため、患者はもちろん、家族や社会にとって大きな問題となっています。アルツハイマー型認知症の脳内では、ミクログリア 活性化に伴う脳内炎症と蓄積したアミロイドβ老人斑との相互作用で脳神経細胞が傷害され、認知機能が低下すると考えられています。

 欧米での臨床研究により歯周病の罹患と認知機能低下との正相関およびジンジバリス菌成分のアルツハイマー型認知症患者の脳での検出が報告され、アルツハイマー型認知症と歯周病との間意には関係があるのではないかと考えられていました。つまり、歯周病を原因とする全身炎症が炎症組織におけるアミロイドβの産生をもたらし、脳内病態のアミロイドβ蓄積にも関わるのではないか、とする考えです。

アルツハイマー型認知症の発症を遅らせる「先制医療」としての歯科医学アプローチは大きな意義があると考えられます。現在は、全身で産生されたアミロイドβの脳内への輸送可能性可能性についての解析が行われています。


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2019-12-06 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

経口の糞便移植で死亡例

糞便微生物移植(FMT)の臨床試験に参加した被験者で、ESBL産生大腸菌血症を発症した死亡例が出たことを米国・ハーバード大学が明らかにしました。今回臨床試験が行われた糞便微生物移植治療は再発性・難知性クロストリジウム・ディフィシル感染症の新たな治療法で、その有効性・安全性については先行する研究で明らかにされていました。

 今回の臨床試験は、ドナーから採取した糞便を米国食品医薬品局(FDA)による承認の下で液化や遠心分離、熱処理などを行って製剤化したものを経口投与したものです。糞便微生物移植治療は2019年1月にFDAのガイドラインが改訂されており、今はESBL産生菌、ノロウイルス、アデノウイルスなどを検査しなければならない決まりになっていますが、今回死亡例が出た臨床試験は2018年のものだったため、それらが検査されていないドナーの糞便が使用されてしまったものです。

 死亡した患者はもともとはESBL産生大腸菌は持っていませんでした。患者は重篤な敗血症で死亡し、最終血液培養の結果、ドナー経由での感染によるものと思われるESBL産生大腸菌が検出されました。 


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2019-12-05 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

宇宙は無限にループしているかもしれない

新たな研究で、宇宙は果てのある球体ではなく、四次元空間にある果ての存在しないループした球体である可能性がマンチェスター大学から発表されました。これまでは、ビッグバン宇宙論を根拠として、宇宙には果てがあり、無限に広がっていると科学者は考えていました。

ところが、欧州宇宙機関(ESA)の人工衛星プランクのデータを解析したところ、宇宙には果てがないと結論づけるべき証拠が2018年に見つかりました。科学の世界では、果てがある場合は「空間が開いている」、ループする場合は「空間が閉じている」と表現します。地球はどこまでも移動し続けることができるため、果てが無く閉じた世界です。

宇宙が、ビッグバンモデルで示すような火の玉が膨張している世界であれば、それはまさに地球のような三次元の球体構造であると推定されます。しかし、プランクによる宇宙マイクロ波背景放射データの解析からは、宇宙は四次元空間にある端がないループした空間である可能性が強く示唆されるのです。

マンチェスター大学の研究者による解析では、従来の予測を大きく超えた強い「重力レンズ効果」が見い出されました。つまり、光が大きく曲がっていたということです。ビッグバンの残光である宇宙マイクロ波背景放射の湾曲は、宇宙が閉じた球体とすることで説明がつくと指摘しています。このことは宇宙が膨張している事実とは矛盾しません。 


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2019-12-04 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

米陸軍「軍用ロボット犬」開発プロジェクト

世界中の軍隊が、監督していなくても、命令に従うことができる知能を持った軍用ロボットの開発を進めていると思われます。その中で、米国陸軍研究所(ARL:Army Research Laboratory)は、言葉による指示をロボットが理解し、タスクを実行して報告できるようにするソフトウェアを開発したと発表しました。命令を理解でき、ある程度のマシン・インテリジェンスを備えたロボットは、近い将来、戦闘の最前線で爆発装置や敵の探索をできるようになるものと思われます。

米国陸軍研究所の開発プロジェクトにはマサチューセッツ工科大学やNASAジェット推進研究所などの政府機関の他、ボストン・ダイナミクスなどの民間ロボット工学企業が加わっています。現在はこのようなロボットの代わりに軍用犬が活用されています。軍によると犬は、人間とチームを組むという点で、目指しているものの完璧な例なのだそうで、軍用ロボットの目指すところでもあるということです。軍用犬よりロボットがさらに優れた点として、タブレットを介してのコントロールも可能で、地図や画像の形式でデータを返すこともできるなどが挙げられています。

 深層学習によって敵を特定すると、ロボットは知識ベースを駆使してより詳細な情報を引き出し、命令の実行に活用します。たとえば、敵が車輪で走行する兵器だと認識すると、より有利な攻撃対象として車輪やエンジンを人間の判断を待つことなく認識することができます。

しかし、現状はまだ解決すべき問題が二つあると言います。ひとつは情報処理速度と、動作速度の両方が遅い問題。もう1つは故障や誤動作・判断ミスなど信頼性の可能性です。最前線で攻撃や探索を行う軍用ロボットの故障は人間兵士の生死に関わる問題となるのでより一層、信頼できるシステムを開発する必要があります。

米陸軍「軍用ロボット犬」開発プロジェクト
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2019-12-03 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

菌類が決断・記憶能力を持つことを発見

東北大学と英国カーディフ大学の研究チームは、木片から土壌中に伸びた菌類の菌糸体(いわゆる「カビ」状をした、菌類の本体 )が決断力、記憶力を持つことを発見しました。もちろん菌類は脳も神経も持たない単細胞生物です。

本研究では、土壌を敷いた培養シャーレ内で、担子菌(枯れ木や落ち葉の分解に主要な役割を果たすグループの菌類)の菌糸体の行動を観察することで、菌糸体が枯れ木が自分にとってどの程度の栄養価値があるかを判断して、自分の行動を決断していることを発見しました。

菌糸体を定着させた様々な大きさの木片を土壌シャーレに置き、菌糸体が土壌に伸びてきた後に、エサとなる新しい木片を少し離れた場所におき、菌糸体に「見つけさせ」ました。しばらく培養すると、小さいエサを見つけた菌糸体は、エサを見つけた後ももともと自分がいた接種源の木片から離れずに周囲の探索を続けましたが、大きいエサを見つけた菌糸体は、周囲の探索は終了して新しいエサに引っ越しを始めました。この結果は、菌糸体が新しいエサの大きさによって自分の行動を決断していることを示しています。

さらに、接種源からの生長が見られた際には、もともとエサがあった方向へより多くの菌糸生長が見られました。この結果は、菌糸体がエサのあった方向を記憶している可能性を示しています。
今回の実験で、脳や神経系を持たない菌類の菌糸体にも、決断や記憶を行う原始的な知性があることが示されました。菌類の菌糸体が何かを「考え」ながら土壌中で有機物の分解や菌根共生を行なっているというアイデアは、物質循環や土壌生態系に関する私たちのイメージを根底から覆す可能性があります。

菌類が決断・記憶能力を持つことを発見

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阿佐ヶ谷科学食堂23

2019-12-02 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書2017年年報【冊子版】残部僅少のお知らせ

Apple Podcast などで配信中の最新科学情報ポッドキャスト番組「ヴォイニッチの科学書」の2017年の話題を1冊の本にまとめた「ヴォイニッチの科学書年報2017年版」が残部僅少となりました。今後の増刷の予定はありませんので、現在の在庫が無くなり次第販売終了となります。
通信販売をしておりますので、興味がおありの方は、BOOTHヴォイニッチの科学書購買部をご覧ください。
コチラ https://obio.booth.pm/ 

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2019-12-01 : お知らせ : コメント : 0 :
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会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
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