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海底の岩石にも微生物


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微生物は地下深くから、上空高くまで、また私たちの身体の中まであらゆるところにまんべんなく生息している、非常にたくましい生物です。とはいえ、微生物が生きるためにはエネルギー源が必要ですので、地下深くの冷たくて固い岩盤などについては、微生物の生育環境としては、あまり注目されることはありませんでした。ところが、2013年になって太平洋の海底からさらに265メートルも掘った地中深くの火山岩の中に、微生物の群集が発見されました。その後、微生物はどの程度深いところまで生存範囲が広がっているのか、という大きな疑問が生まれ、より深い場所での微生物探索が始まりました。

今回、東京大学の研究者らは、南太平洋の非常に古くて冷たい海洋地殻でも、微生物の群集が存在していることを発見しました。微生物が発見されたのは火山岩という硬い岩石の中でしたが、岩の亀裂には幾分やわらかい粘土がつまっており、そこに微生物が大規模な群集を作って生存していたのです。海底の地殻は海嶺 から湧き上がるマグマと、海溝に沈み込む岩盤がベルトコンベアのように30億年以上も動き続けています。海嶺で作られたばかりの海底の岩石は海水が循環できるため、海水中の酸素や岩石に含まれる金属を利用して微生物は活発に活動することができるものと思われます。海底の岩石は次第に冷え固まります。そうすると岩石中に封じ込められた海水の酸素はやがて微生物によって消費されてなくなってしまいますが、そこでは水と玄武岩 が反応して水素が発生しており、微生物は水素イオンをエネルギー源として利用しながら数百万年間、細々と生き続けることができます。

それがわかったのは2010年前後の調査によるもので、このときには、南太平洋の水深5800メートルもある深海の掘削調査が行われました。水深5800メートルとなると魚類や甲殻類などの生物はほとんど生息していません。そういった地点の海底を100メートル以上ボーリングし、1億年前ごろに形成された地殻の試料を取り出し詳細な調査を行いました。その結果、すべての試料の微細な亀裂には鉄を豊富に含む粘土が詰まっており、そこに微生物が発見されました。このような深海底の岩盤の中に生物がいる可能性は低いと多くの科学者は考えていましたので、これは微生物の驚異的な生命力を示すものとして注目されました。

発見した微生物の遺伝子解析を行った結果、このような過酷な環境に生物する微生物は、亀裂の粘土に含まれていた有機物を少しずつ使って、時間的な意味において細く長く生きる性質の微生物であることがわかりました。また、今回の研究結果は火星など、地球外での微生物の存在の可能性を強く示唆するものでもあります。火星にも玄武岩は豊富に存在し、しかもかつて海があったことは確定事項ですが、であれば何らかの原始的な代謝反応が起きていた可能性はあります。可能性としては単細胞生物がいたかもしれません。それらの代謝物が、干上がった現在の火星の土壌中に残っており、それを大切に使いながら1億年以上もゆっくりと生きる微生物がいてもふしぎではありません。
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2020-05-04 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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おびお

Author:おびお
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
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