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フラミンゴ、ピンク色が濃いほど攻撃的


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英エクセター大学によると、フラミンゴは体のピンク色が鮮やかなほど攻撃的であることがわかりました。これまでの研究で、鮮やかなフラミンゴは健康で、交尾の相手を見つけやすいことがわかっています。フラミンゴは、甲殻類のほか、藻類、珪藻(けいそう)、藍藻(らんそう)など赤やオレンジの色素カロテノイドを大量に含むエサを食べ、ほかの個体に、自分は健康だと伝えています。今回の研究ではそれに加え、ピンク色が鮮やかな個体は攻撃的でもある事を明らかにしたものです。

色鮮やかな羽毛を持つ健康なフラミンゴは、餌場においても支配的な立場にあります。色鮮やかな個体は摂食環境を支配することで、鮮やかな体を維持し、その結果、同じように健康で色鮮やかな交尾の相手を引き付けることができることになります。

鳥から魚まで、さまざまな種でカロテノイドの効果がわかりつつあり、カロテノイドによって色が鮮やかになった個体は、摂食の能力が高く、病気からの回復も早く、全体的に体の状態がいいことがわかってきています。

現時点では、ピンクの色合いと攻撃行動の相関関係が確認されただけであり、因果関係ははっきりしていません。ピンクが濃いフラミンゴがより攻撃的なのか、攻撃的なフラミンゴが濃いピンクなのかについては、生物学的にはとても大きな違いなので今後のさらなる研究が待たれます。
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2020-06-30 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

コールドスリープにつながる技術開発に成功


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哺乳類の中には、外気温が著しく低下した期間、代謝を下げエネルギー消費を抑え、冬眠するものがいます。冬眠中の動物は正常時と比べて数%まで酸素消費量が低下します。この状態では、体温は外気温よりも数度高い程度の低体温になりますが、何ら組織障害を伴うことなく春になれば自発的に元の状態に戻ります。しかし、冬眠動物がどのように代謝と体温を下げるのかは未解明です。これは、通常使用される実験動物であるマウスやラットが冬眠をしないこと、冬眠動物を実験に用いることにもさまざまな障壁があり、冬眠動物といえども研究室の環境では簡便に冬眠状態にすることは困難でした。

筑波大学らは、マウスの視床下部の一部に、そこを刺激するとマウスの体温が数日間に渡って大きく低下し、併せて代謝も著しく低下する場所を発見し、そこにある神経集団をQ神経(Quiescence-inducingneurons :休眠誘導神経)と名付けました。

さまざまな外気温下(8~32℃)においてQ神経を刺激して代謝を下げたマウスの体温と代謝を計測したところ、Q神経を刺激して代謝を下げたマウスを低い温度で飼育すると、体温は約20℃前半で維持され体温の基準温度がさがっていることが分かりました。

すなわち、Q神経を刺激すると、マウスの代謝は下がり、体温は著しく低下してはいるものの、環境の変化に適応すべく適切に制御されていることが分かりました。「体温の基準温度低下」および「寒冷刺激に適応した体温制御」というこれら二つの特徴の共存は、冬眠中の動物においてのみ報告されていることから、マウスは冬眠に似た状態であることが示唆されました。

冬眠様状態を経験したマウスと通常のマウスの運動能力・記憶力などを計測したところ、両群に差はみられず、脳・心臓・筋肉など諸臓器の組織観察においても差がみられませんでした。また、冬眠様状態は同一個体で繰り返し行うことも可能であることから、この状態は可逆性のある安全な低代謝状態、すなわち冬眠に似た低代謝状態であることが分かりました。

すなわち、Q神経を特異的に刺激することで、人間のような冬眠をしない動物でも冬眠を誘導できる可能性が見いだされたのです。本研究による、非冬眠動物におけるQ神経・冬眠様低代謝の発見は、人工冬眠の実現可能性を大きく前進させるものです。
2020-06-29 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

星間有機物が地球の水の起源に


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北海道大学、桐蔭横浜大学、岡山大学、九州大学、海洋研究開発機構生物地球化学センター、東京大学の研究グループは、星間分子雲のチリに大量に含まれている有機物を加熱すると、水が大量に生成されることを発見しました。

星間分子雲とは、絶対零度に近い極めて低い温度でガスの圧力が非常に小さい星雲のことで、0.1マイクロメートル程度の珪酸塩、有機物、氷と水素分子のガスからなります。一例として、オリオン座の馬頭星雲があげられます。これまで,地球に水をもたらした物質としては、彗星の氷などが候補になっていました。しかし、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査によって彗星の氷の寄与はほとんどないことがわかり、地球の水の起源は不明となっていました。
2020-06-25 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

腸内細菌の代謝産物が認知症リスクに関連


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国⽴⻑寿医療研究センターは、同センターもの忘れ外来を受診した患者の便検体を収集し、腸内細菌と認知機能との関連を解析しました。その結果、アンモニアなどの代謝産物は認知症患者において有意に増加し、乳酸は減少していました。この結果は、年齢などといった危険因⼦とは独⽴して、糞便中のアンモニアや乳酸濃度が認知症と関係することを⽰唆しています。
2020-06-24 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

植物が寒さを無視して花を咲かせる理由


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気温や日照は決してなめらかな変化はせず、日々大きく変動します。それにもかかわらず、植物は咲き時を知っています。春に開花する花は、つぼみから開花までの過程での昼夜の気温変化が激しく、植物は頻繁に低温を経験します。植物が春の訪れをとらえ正しく開花するためには、春の寒さを無視して春の暖かさのみに応答する必要があると考えられますが、そのしくみはわかっていませんでした。

モデル植物であるシロイヌナズナでは、花の形成を抑制するFLC 遺伝⼦がヒストンとよばれるタンパク質による制御を受けることが知られています。このヒストンタンパク質は抑制型と活性型をとり、そのバランスがFLC 遺伝⼦の働きを決めます。植物が⻑期間の低温にさらされると、抑制型のヒストンが蓄積し、それに伴いFLC 遺伝⼦の発現が低下することがわかっていました。

京都大学の研究者らは、2年間にわたって抑制型ヒストンと活性型ヒストンの量の季節変化を調べました。その結果、抑制型と活性型のヒストンが相互作⽤することでFLC 遺伝⼦の発現が気温の⻑期傾向に応答できることがわかりました。

また、昼夜の気温変化が激しい春のFLC 遺伝⼦の制御様式を詳しく調べた結果、気温の低い時期に抑制型のヒストンが蓄積し、FLC 遺伝⼦が春の寒さに応答しなくなることが分かりました。すなわち、このしくみが⻭⾞の⻭⽌めのような働きをして、春にFLC 遺伝⼦発現が⼀⽅向的に上昇し、逆⾏しないことが明らかになりました。このしくみにより、植物は春の暖かさを感じて、春の寒さを無視することができると考えられます。
2020-06-23 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

怖い体験が夢でよみがえる仕組み


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大人の脳では、病気や事故で失われた神経細胞は再生しませんが、最近の研究で、記憶に重要な働きをする海馬では、成長期を過ぎた大人になっても、記憶に関連して神経細胞(ニューロン)が再生していることが分かってきました。これを受けて、筑波大学と東京大学の研究チームは、超小型の脳内視鏡を用いて、恐怖体験をすることによって、その後の睡眠中のニューロンの誕生と成長に関する海馬の活動がどのように変化するかを調べました。

その結果、マウスの脳内に怖いという感情を伴う記憶が定着するプロセスのうち、とりわけレム睡眠中には、新生ニューロンの活動が全体的に大きく低下することを発見しました。レム睡眠は眼球がピクピクと動くことが特徴で、身体は骨格筋が弛緩して休息状態にあるものの、脳が活動して覚醒状態にある睡眠状態のことです。夢を見るのもレム睡眠中です。

一方で、恐怖学習の最中に活動していた新生ニューロンは、逆にレム睡眠中に再び活動が上昇することが判明しました。もしレム睡眠中の新生ニューロンの活動が恐怖記憶の定着に重要なのであれば、その活動を人工的に抑制することで記憶になんらかの変化が起きる可能性があります。そこで、新生ニューロンの活動を光刺激によりピンポイントで操作する技術(光遺伝学的手法)を開発し、新生ニューロンの活動と記憶の定着との関係を調べました。

新生ニューロンは2ヶ月程度で完全な神経細胞に成長します。この成長過程のさまざまなタイミングで新生ニューロンの活動を操作したところ、神経細胞の誕生から1ヶ月程度の新生ニューロンの活動をレム睡眠中に抑制したときに限って、マウスが恐怖記憶を忘れてしまうことが分かりました。これまでほとんど分かっていなかった、レム睡眠中の記憶の処理の仕組みについて 今回のような実験でより深く理解することで、トラウマ記憶からの回復を促進する方法論の開発が可能かもしれません。
2020-06-22 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

フィルターを使って淹れるコーヒーが心臓に良い可能性


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スウェーデン・ヨーテボリ大学が51万人を20年間追跡調査した研究によると、コーヒーを飲むのなら、フィルターを使って淹れるコーヒーが最も健康的であることがわかりました。コーヒーを日常的に飲んでいる人は、コーヒーを飲む習慣がない人と比べて寿命が長いことはいろいろな研究でわかっていますが、これが当てはまるのはフィルターで濾過して抽出したコーヒーを飲んでいる場合のみで、エスプレッソなどフィルターで濾過しないコーヒーを飲む人では寿命の延長は認められなかったということです。エスプレッソコーヒーはごく細かく挽ひいたコーヒー豆を用いて、圧搾蒸気を利用して一気にいれた濃いコーヒーのことです。

解析結果としては、コーヒーをほとんど、あるいは全く飲まない人と比べて、フィルターで濾過して抽出したコーヒーを日常的に飲む人では全死亡リスクが15%低く、コーヒーを飲む習慣がある人の間では、虚血性心疾患や脳卒中による死亡リスクは、フィルターで濾過して抽出したコーヒーを1日に1~4杯程度飲む人で最も低く、逆に、死亡リスクが最も高かったのは、フィルターで濾過しないコーヒーを1日に9杯以上飲む人でした。

原因については究明していませんが、フィルターで濾過しないコーヒーは、挽いた粉が熱湯に触れる時間が長いことが特徴としてあるため、コーヒー由来の脂肪分が多く抽出され、血中コレステロール値を上昇させるのではないかと考えられています。
2020-06-18 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

屋内のCO2濃度上昇で認知機能が低下する


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二酸化炭素の排出量の増加は、地球温暖化の原因となるだけでなく、認知機能にも悪影響を与える可能性があることが、米国コロラド大学の研究で示唆されました。大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると屋内の二酸化炭素濃度も高まり、2100年までに、屋内の二酸化炭素濃度は1,400ppmに達し、現在の屋外の二酸化炭素濃度の3倍となり、意思決定能力や思考力に悪影響を与えるレベルにまで上昇すると推定されるとのことです。

今回の新型コロナウイルス禍においても、在宅勤務などで引きこもりがちになると、密閉した室内で気がつかないうちに二酸化炭素濃度が高まって在宅勤務の効率が落ちるので換気が推奨されていましたが、80年後にはその状態が常態的になるようです。
2020-06-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

空中打ち上げロケットの初試験に失敗


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米国の人工衛星企業であるヴァージン・オービットは、5月25日、同社の主力ロケットであるランチャーワンの初飛行試験に失敗したと発表しました。7年間かけて開発とテストを重ねた後の初の飛行試験でした。ランチャーワンはボーイング747「コズミックガール」によって輸送され、カリフォルニア沖の太平洋上で切り離されました。ロケットは数秒間落下した後、空中でエンジンを点火して地球を周回する低軌道に突入するはずでしが、点火はしたものの軌道には乗らず、海上に落下したということです。

ヴァージン・オービット社は、失敗の原因は飛行の第1段階で異常が発生したためとしており、現在エンジニアが情報の収集と解析を進めているということです。
2020-06-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ハビタブルゾーンの広さ


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東京工業大学による実験とシミュレーションによると、惑星に液体状の水と岩石があり、複雑な生命体が存在できる「ハビタブルゾーン」は、従来考えられていたよりも広い軌道範囲に広がっている可能性がでてきました。 ある惑星系で、どこからどこまでがハビタブルゾーンかというのは、中心星の表面温度と中心星からの距離で決まります。太陽系の惑星では地球はもちろんハビタブルゾーン内にありますが、金星は熱すぎで火星軌道がハビタブルゾーンの外側の端あたりになります。そのような位置の情報に加えて、中心星の活動が性や惑星の質量、自転の様子、大気の量と組成などが関与します。

今回の東京工業大学の研究においては、哺乳類や爬虫類などの空気を取り入れる生物が必要とする窒素、二酸化炭素大気分圧の限界値を、実験と理論予想をもとにして導き、この限界値から複雑な生命体のハビタブルゾーンを新たに求めました。

 地球上の生物は二酸化炭素分圧約0.15バール、窒素分圧約3バールを超えると麻酔効果が現れ、この状態に継続的に置かれると致命的になる可能性が高くなることを新たに発見しました。一方で、雲による惑星の冷却や惑星の温度変化をパラメーターとして組み込むと結果として、複雑な生命体のハビタブルゾーンはこれまでの見積もりより約35%広くなることが示されました。

この結果は、太陽よりも温度が高い恒星や低い恒星など、さまざまな恒星に当てはめることができるため、宇宙全体で見ると複雑な生命体のハビタブルゾーンはコレまでの予測よりもかなり広くなることがわかります。
2020-06-15 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

メモ書き・・・・

ウィリアム・ハーシェル(1738 - 1822)が根本的に興味があったのは天界(今で言う天の川銀河、当時はそれが宇宙全体と考えられていた)の三次元構造でした。当時の天界に対する認識は、天の川銀河のような個別の銀河の概念はなく、宇宙=天の川銀河(正確にはちょっと違いますが、それ以外に表現のしようがない)のようなものでした。つまり、宇宙の形はどのようであるかを探ろうとしたのです。ハーシェルは1785年に「星計測法」という方法を考え出し、星の密度が高い方向ほど宇宙は遠方まで広がっていると考えました。自身が作成した48センチ反射望遠鏡を使い、次の三つの仮説に基づいて観測を行いました。

1.48センチ反射望遠鏡は宇宙の果てまで見通している
2.星の明るさはどの星も一様である
3.星の光を遮るものはない

結論から先に言えば、ハーシェルの三つの仮説はすべて間違っていたので、できあがった宇宙像も間違ったものになりました。とりあえずハーシェルは恒星の中で最も明るいシリウスまでの距離を1として675個の恒星の方向と相対距離の観測を行い、星の位置を三次元的にプロットして宇宙の姿を描き出しました(次図)。この図を見るときに注意しなければならないことは、この図は現在知られている銀河系の断面図によくにていますが、ハーシェルは決してそれを予言したわけではないという点です。そもそもの仮説が三つとも間違っていますので、誤った仮説から正しく見える結果が導き出されたとしても、それは偶然の一致であると考えるのが科学的考察の基本です。 

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

ハーシェルは次々に口径を大きくした反射望遠鏡を作成しましたが、たとえばオリオン星雲のようなものを星にまで分割することができないことに落胆し、48センチ反射望遠鏡で宇宙の果てまで見通せるという仮説1.が間違いであると気づき、自説を取り下げることになります。そもそもが宇宙の果ての星まで見通せないという問題の他に、当時は星団と惑星状星雲(ちりやガスの集まり)の区別が付いておらず、惑星状星雲を一個一個の星に分解できないこと(今の私たちはそれは星ではないと知っています)で限界を感じたのではないかと時代背景から推測します。

そこでハーシェルは1817年に新しい観測手法を考えつきます。「等光度法」というこの第二の方法は、ややこしいので詳細は省略しますが、等光度法で天空のあらゆる方角を観測し、銀河面に対して直角になる方向(銀河の厚さの方向)については、見通すことに成功したと考えましたが、銀河面については望遠鏡の性能が足りないことを認め、その結果から銀河面の方向には望遠鏡の能力を超えた広い範囲にわたって宇宙は広がっていると考え「深遠な銀河系」と呼ばれる宇宙を描き出しました(次図)。ハーシェルは自慢の122センチ反射望遠鏡をすでに持て余していた感があり、年齢も80歳を超えていましたので、ハーシェルによる銀河の観測はここまでとなります。次図の中央の○は人間の肉眼で見える範囲、上下の横線は望遠鏡で観測した宇宙の果てで、左右方向はどうなっているかわからないとしています(1818年)。

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史



次のターニングポイントは、ウィリアム・パーソンズ(1800 - 1867)による「巨大海獣」と呼ばれる、口径183センチ反射望遠鏡の完成(1845年)によるアンドロメダ銀河の観測です。ハーシェルは星雲が星に分解できるのかどうかで悩みましたが、それはそのはずで、当時星雲とひとまとめにされていたものには星の集まりとガスやちりの集まりが混在していました。パーソンズらは、オリオン星雲とアンドロメダ星雲を観測対象として星への分解が可能であるかどうかの検討を行いました。現在の観測では前者はちりやガスの集合体です。ただし、内部では多数の星の誕生があります。パーソンズらはM51、M99など星に分解できる渦巻き星雲を14個発見しました。しかし、1846年の時点でパーソンズはオリオン星雲については星に分解できるかどうか悩んでいるとしています。オリオン星雲は前述の通り、生まれたばかりの星とガス・チリの集合体なので、今で見ればパーソンズはかなり正確な考察をしていたことになります。ちなみにガス星雲の確認は1864年になってのことです(ウィリアム・ハギンス)。

同時代、星までの距離を測定するための「恒星視差」の観測もハーシェルを含め多くの天文学者によって行われていました。恒星視差は地球が太陽を公転することによって位置を変えるため、地球の位置によって恒星の見える角度が変わるはずという三角測量です。

フリードリッヒ・フォン・シュトルーベ(1793-1864)は1847年に『恒星天文学エチュード』という本を著したドイツ系ロシア人の天文学者ですが、この時代には35個の恒星について恒星視差が測定されていました。当時、恒星はどれも太陽に似ていると考えられていましたので、ハーシェルの等光度法に恒星視差を組み込み、1等星までの平均距離を約15.8光年と推定し、途中の計算は省略しますが、6等星までの距離は1402光年、9等星までの距離は5958光年と推定しました。これに基づいて恒星を観測し次のような銀河の構造を推定しています。

・銀河系は扁平な構造をしており、中心の銀河面から両側にほぼ対象的に層状構造を成す
・星の空間密度は銀河面からの距離と共に減少する
・銀河系における太陽の位置は銀河面から少し外れている
・星団や星雲は銀河面に近いところほど多く存在し、分布は不規則である
・恒星間空間には光を吸収する物質が存在する
これを図にしたものが次です。

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史


その後も、ヤコブス・コルネリウス・カプタイン(1851 - 1922)、ユーゴー・ハンス・フィン・ゼーリガー(1849 - 1924)などによって銀河系の形の考察は進められましたが、それらは主に星の分布による輪郭線の推定に関するもので、いわゆる腕状の銀河内部構造の発見に至るものではありませんでした。

次に大きな転換点となるのが、コルネリス・イーストン(1864 - 1929)の推論です。イーストンはパリの新聞記者でアマチュア天文学者でした。イーストンは星が全天に均一にではなく、ムラになって見えることが銀河系の構造と何らかの関係があると考えていました。イーストンは「ボン星表」という恒星のリストに従って観測を行い、1900年にアマチュアながら、銀河の構造について「銀河系は円環構造を持ち、太陽は中心より外れたところにある」という新たな説を天文雑誌に投稿しました。さらに、自らの新説で描き出した銀河の構造が、地球から観測される他の渦状銀河に似ていることから、銀河系は渦状構造を持つと述べました。また、銀河系の中心ははくちょう座の方向にある、と現在の観測と一致する結果を導き出しています。私(中西)が調べた範囲では、銀河系の渦巻き構造に言及したのはこれが初めてのことです。前述のゼーリガーがイーストンの説に強く反論している記録がありますので、両者が同時代の天文学者であることを考えるとこれは間違いないでしょう。次の図はイーストンの銀河構造です。作図上地球が中心に描かれていますが、銀河系の中心はその左側にあるとし、円周上に星座が記載されていますが、銀河中心方向は「シグナス」=はくちょう座とされています。

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

この頃並行して、他の天文学者らによりアンドロメダ銀河のような天体が、銀河系内の天体(原始太陽系説)なのか、それとも銀河系の外にあり、銀河系は島宇宙なのかという論争が繰り広げられています。

この議論については、エドウィン・ハッブル(1889 - 1953) がアンドロメダ銀河の赤方偏移を測定し、ドップラー効果から銀河系の外にある銀河であることを明らかにしていますが、その前段階としてベストー・メルビン・スライファー(1875 - 1969)の観測があります。スライファーは元々惑星の観測をしていた天文学者で、パーシヴァル・ローウェル(1855 - 1916)の提唱する火星運河説に陶酔し、火星には文明人がいることを主張した若干イタイ人です。1909年から星雲の分光観測を開始しました。これはアンドロメダ銀河が原始太陽系のようなものであれば光のスペクトルが太陽に似ているのではないかという当時の上司からの指摘でした。上司というのはパーシヴァル・ローウェルなのですが・・・。スペクトルの撮影は困難を極めましたが、プリズムやカメラなどをいろいろ工夫し、1913年にアンドロメダ星雲が秒速300キロメートルで地球に近づいているという結論を出しました。スライファーは、果たしてこれは本当にドップラー効果なのだろうか、と当初は自身の観測結果を信じられなかったようですが、1915年までに15個の渦巻き星雲の視線速度を測定し、そのうち10個は太陽から遠ざかっていることを明らかにしました。途中、1914年にアメリカ天文学会で15個の渦状星雲の視線速度の観測を発表しています。そこでは、多くの渦状星雲は太陽から遠ざかっていると結論づけています。1917年には25個の星雲についてスペクトルの測定に成功し、同様の結果を支持するデータを増やしました。

ところで、1914年の学会には若きエドウィン・ハッブルが参加していました。まだ25歳頃です。ちなみにスライファーは1914年に渦状銀河が自転していることも報告しています。スライファーは現在の膨張宇宙論の一歩手前まで近づいていたのですが、1939年で突然天文学者をやめてしまい、活動家になってしまいました。そこで登場するのがハッブルです。

1923年、ハッブルはアンドロメダ銀河の星の薄い部分で新星を探し、それらしい星を3つ発見しましたがそれらは新星ではなく変光星でした。1924年にはそれらがケフェウス型変光星であることを確認し、すでに知られていた変光周期と星の真の明るさの関係から計算すると、アンドロメダ星雲までの距離は825,000光年と算出され、アンドロメダ星雲は銀河系の外にある天体だという結論を得ました。同年さらにM31, M33, NGC6822にもケフェウス型変光星を発見し、いずれも銀河系外の天体であると結論づけています。このあと宇宙の膨張論につながるわけですが、それは銀河系の形とは関係がない話なので話が拡散するのを避けるためにここでは触れないでおきます。

ハッブルは1926年に『銀河系外星雲』という論文を発表し、銀河系外星雲の進化について検討を加えています。約400個の星雲を形で分類し、見かけの等級と星雲の角直径の相関が得られたことから、ハッブル系列と呼ばれる銀河進化を提案しました(次図)。現在では、銀河は、銀河同士の衝突などで劇的に姿を変えるために、このような単純な変形はしないと考えられています。

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

その後、アンドロメダ星雲を星に分解して観測する試みが成されます。その代表者はドイツの天文学者ウォルター・バーデ(1893 - 1960)です。1943年頃の観測で21等級の暗さの星まで撮影に成功し、円盤周辺の青い星や、円盤中央(バルジ)付近の赤い星の観測に成功しました。それらの分布は太陽近傍の星と、太陽から遠く離れた球状星団の星の分布に非常によく似ていました。21世紀初頭までは銀河系はアンドロメダ銀河のような渦巻き銀河と考えられていたのは、このあたりの観測結果が銀河系とアンドロメダ銀河とで良く一致したためではないかと想像しますが、銀河系とアンドロメダ銀河は似ていると言い出した人が誰なのかよくわからないので情報が欲しいところです。

20世紀になると電波天文学が急速に進展します。ヤン・オールト(1900 - 1992)は銀河系の構造に注目した久しぶりの天文学者です。この間、ちょうどアルベルト・アインシュタイン(1879 - 1955)の活躍の時代に当たり、宇宙を相対論的に見る研究や、宇宙は永遠不変か変化しているかが議論の中心となり、銀河の構造の研究については情報がありません。

1944年、中性水素から放出される波長21.1センチメートルの電波が星間ガス中に観測される可能性が指摘され、オールトも追試を行ってそれを確認しました。この電波は発生源から地球に届くまでの間に星間物質に吸収されることがないため、可視光線では観測不可能だった銀河全体の観測が可能になると期待されました。複数の研究者によって銀河構造を探る観測が成されましたが、その中でオールトが1958年に発表した図が次です。

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

この図で太陽系の位置は、中心から少し上の、電波が一点に集まっているように見える場所で、図の中央が銀河系の中心です。これによって銀河系がアンドロメダ銀河のような渦巻き状になっていることが実測データで明らかとなりました。

1980年代になると銀河系は棒渦巻銀河ではないかという議論が出てくるとWikipediaにかかれていますが、この記述は根拠ははっきりしません。少なくとも2000年代になってからのスピッツァー宇宙望遠鏡による観測まで明確に根拠を持って銀河系が棒渦巻銀河と述べた天文学者はいないのではないかと推察します。

またヴォイニッチの科学書2006年2月11日号ではスローン・デジタル・サーベイのデータを根拠として「アンドロメダ銀河から天の川銀河を見ると、十分に成長して安定した形の渦巻き銀河、あるいは、中心部にわずかな棒状構造をもつ棒渦巻き銀河であると思われています」と述べられています。この配信では想像として銀河系はNGC613(次図)のようではないかと補足されていますので、ちょうど銀河系に対する見方が渦巻き銀河から棒渦巻銀河に変わる分水嶺がこの頃だったと思われます。

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

より明確に棒渦巻銀河が意識されるのは、ヴォイニッチの科学書においては2008年9月20日配信分で、以下に引用します。

天の川銀河はかつて、レモンのような形の星の集団だと考えられていました。その後、地球から恒星までの距離を測定する方法の発見に伴い、天の川銀河は整った形をした渦巻き銀河であると認識されるようになりました。ところが、より正確な銀河の3次元地図が作成されるようになると、天の川銀河はこれまで想像していた整った渦巻き銀河ではなく、中心付近に棒のような形に集まった星の集団が存在し、4本の腕を持った棒渦巻き銀河であることがわかりました。その後、天の川銀河の周辺には多数の伴銀河のような星の集団があることや、腕は4本ではなく2本であるらしいこと、天の川銀河を取り巻く星のリボンが存在することなど、それまで予想もしなかった天の川銀河の構造が次々に明らかとなりました。

一方、現在、世界各国の天文学者が協力して、宇宙の地図を作ることを目的とした宇宙全体を網羅する大規模な観測プロジェクトが行われており、これをスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)と呼びます。

このSDSSに含まれるプロジェクトの一環として、天の川銀河にある2500万個の星について、星が宇宙空間を移動する速度の計測が行い、速度ごとに星を分類した結果、このたび、天の川銀河の外側を取り巻く星の流れ11本が見つかりました。星の流れはすでに2007年6月に天の川銀河を取り巻く3つのリングとして発表されていましたが、今回さらに11本が見つかったことになり、今までに発見されたものを含めた大小14本の星の流れは、互いに交差するなどして入り乱れ、複雑な構造を見せています。

リングを形成する星の由来についても検討が行われていますが、14本のうちの1本は、天の川銀河の射手座方向にある伴銀河が天の川銀河の重力によって引き伸ばされたものであるらしいことがわかっていますが、それ以外の流れの具体的な起源は明らかになっていません。

銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

その後さらに情報が追加され、現在では4本の腕を持つ棒渦巻銀河とされ、NASAによる想像図も若干の修正が加えられています(次図)。
 
銀河系がどんな形をしているかに関する研究の歴史

2020-06-14 : 雑談 : コメント : 0 :

経済的に豊かになることと心身の健康との関係


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一般に、貧困状態にある人よりも裕福な人の方が健康状態やメンタル状態は良いと考えられますが、米国・ノースウェスタン大学政策研究所は、貧困から抜け出して経済的成功を収めた人の場合は必ずしもそれが当てはまらないという研究結果を報告しました。 1990年代から米国人1万人規模の追跡調査を行い、貧困家庭で生まれ育ち、成人後に経済的な成功を収めて社会的地位が上昇した米国人は、生涯にわたって貧困生活を送る米国人と比べて、ストレスが少なく、抑うつ症状を抱えている人の割合も低いこと。一方で、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症などを有する割合は、経済的レベルが向上した人たちと貧困層の人たちの間では、社会的地位が上昇した人の方が若干高いことがわかりました。
2020-06-11 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

糖尿病患者由来のiPS 細胞で動脈硬化因子発見


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糖尿病は動脈硬化などの心血管疾患の重大なリスク因子です。糖尿病患者の中には心血管疾患になりやすい人となりにくい人がいることが知られていますが、その仕組みは十分に解明されていませんでした。どうして心血管疾患になりにくい人がいるのか、その仕組を解明することができれば、心血管疾患に対する新たな治療法の開発につながると期待されます。

東北大学は米国・ハーバード大学と共同で、慢性的な進行した糖尿病に罹患(りかん)しているにも関わらず動脈硬化などの心血管疾患を持たない患者群と、糖尿病になってからの時間が短いにも関わらず動脈硬化を示した患者群から iPS 細胞を作製し、さらに、血管細胞(内皮細胞と血管平滑筋細胞)に分化させて、遺伝子発現を比較しました。その結果、心血管疾患を示さない糖尿病患者の血管平滑筋において、小胞体内エステラーゼであるアリルアセタミドデアセチラーゼ(AADAC)の遺伝子の発現が上昇していることを見出しました。

アリルアセタミドデアセチラーゼの活性化は、次のふたつ、
(1)中性脂肪などの細胞内貯蔵脂肪を細胞膜のリン脂質に変換することで貯蔵脂肪を減少させること
(2)血管平滑筋の増殖能・移動能を減少させることで動脈硬化の進行を抑える効果があること
を明らかにしました。また、アリルアセタミドデアセチラーゼの発現を血管平滑筋で増強させると、動脈硬化モデルマウスで動脈硬化が軽減すること、逆に、アリルアセタミドデアセチラーゼの発現を低下させたマウスでは動脈硬化が悪化することを明らかにしました。
2020-06-10 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

アフリカでバッタが大量発生し食料不足の危機に


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東アフリカ、ケニアなどでサバクトビバッタの大群が発生し、穀物を荒らしています。サバクトビバッタは適した環境が発生すると、個体数は3カ月ごとに20倍にも増え続けます。今回は、2018年から2019年にかけて、地球温暖化に伴う海水温の異常な上昇によってサイクロンがインド洋からアラビア半島に次々と上陸し、アラビア半島の砂漠が水浸しになった結果、サバクトビバッタが急増したものです。その後、2019年6月までに、サバクトビバッタの大群は、紅海を渡ってエチオピアとソマリアに到達、そして、10〜12月に東アフリカで降り続けた異常な大雨に助けられ、南のケニア、ウガンダ、タンザニアまで拡大しました。サバクトビバッタの成虫は自身の体重と同じ量の作物を1日で食べることができる食欲を持ちます。サバクトビバッタの体重は約2グラムですが、群れは700億匹に達することもあり、約13万6000トンもの作物が1日で失われる計算になります。

今回の大量発生は数十年ぶりのものですが、不幸なことに新型コロナウイルスと同時に発生したため、バッタ対策が後手に回ってしまいました。国連食糧農業機関(FAO)は、東アフリカの最大2500万人が2020年、食料不足に見舞われると試算しています。

現在、東アフリカに滞在しているサバクトビバッタは、東アフリカの環境が繁殖に適した環境にあるため、現在も勢力を急拡大しており、さらに最悪なことに、今回の繁殖期が、東アフリカにおける、主要な作物の生育期に重なったため、サバクトビバッタに作物の新芽を食べられ、甚大な被害が発生しています。政府は殺虫剤の散布を行って駆除をしようとしていますが、新型コロナウイルスの影響で、航空貨物便が飛ばないため、殺虫剤の確保が難しくなっています。また、バッタの移動を追跡する衛星技術などが無いため、現地の人からの電話やスマホのチャット連絡によりバッタの移動を把握する事態になっている点も対応が後手に回っている原因となっています。
2020-06-09 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

国際宇宙ステーションに宇宙アバター設置


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日本の無人宇宙貨物船「こうのとり」9号機がH-IIBロケット9号機で5月21日に打ち上げられましたが、この中には「space avatar 」と名付けられた、遠隔操作のロボットのような、具現化されたアバターが搭載されていました。これは、ANAホールディングス株式会社、ANAグループのavatarin株式会社そして、JAXAによる共同プジェクトで、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」を活用し、『宇宙アバター事業』を作り出すための実証プロジェクトです。

このアバターは、遠隔操作で動作するアームの上にカメラが載った、Webカメラのような装置で、このspace avatarは「きぼう」の窓に設置されます。地上の特設会場から一般の人がアバターを自由に操作し、宇宙や地球の景色等を地上に配信することで、あたかも自身が宇宙にいるような世界初のアバター体験を得ることができるプロジェクトです。2020年内に東京都内に特設会場を設置した上でイベントを実施し、そこで体験をする形式を取ります。当面は1台のアバターを「きぼう」の窓に設置して外を見るだけですが、将来的には複数のアバターが国際宇宙ステーション内を自由に浮遊しながら移動し、まるで宇宙飛行士になったような体験を提供する計画です。また、プロジェクトの最終段階では、国際宇宙ステーションの船外活動の体験や、未来は月面や月周回有人拠点における、小型分散型のアバター技術の実証にも取り組む計画になっています。

なお5月21日に打ち上げられた「こうのとり」9号機は、「こうのとり」として最後の機体で、技術実証機から最終9号機までトラブル無く打ち上げに成功したことになります。こうのとりの打ち上げに用いられてきたH-IIBロケットも今回の9号機をもってこうのとりと共に退役します。
2020-06-08 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

地球から一番近いブラックホールを発見


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天の川銀河内には20個のブラックホールが見つかっていますが、このたび、地球から約1000光年の最も近い距離にあるブラックホールが発見されました。ぼうえんきょう座の方向約1000光年の距離にある恒星「HR 6819」5.3等級の星です。これまでのスペクトル観測で、HR 6819は二つの星からなる連星であることがわかっていました。ヨーロッパ南天天文台(ESO)の観測チームが詳細な観測を行ったところ、連星系を構成する片方の星がふらついていることがわかり、これは、連星系の片方の星がさらに別の天体との連星になっている三重連星であることを示しています。

連星の周期から天体の質量を求めたところ、新たに発見された三つ目の天体は太陽質量の約4.2倍以上の星であり、本来であれば青白い星のスペクトルを持つはずですが、実際のHR 6819の光には3つめの天体の光は含まれていないことが確認されました。この見えない天体の質量が太陽の4.2倍もあることから、研究チームはこの天体はブラックホールであると結論づけました。見えない天体として可能性のある白色矮星は1.4太陽質量、中性子星は2.6太陽質量以上のものは存在しないことがわかっているためです。さらにこのブラックホールは周囲の物質を吸い込んで形成されるガスでできた「降着円盤」を持たない真っ黒の珍しいブラックホールであることもわかりました。

冒頭で天の川銀河には20個のブラックホールが見つかっていると述べましたが、天の川銀河の年齢を考えれば、すでに膨大な量の恒星がその寿命を終えてブラックホールになっているはずで、実際には膨大な数のブラックホールが天の川銀河内にあるはずです。それらが発見されないということは、HR 6819のような静かで真っ黒なブラックホールが至る所に潜んでいる可能性を示唆しています。
2020-06-04 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

パラジウム/銅錯体触媒による酸化反応の完全解明


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東京農工大学、大阪大学、京都大学の共同研究チームは放射光を用いて触媒反応溶液を直接観測することで、芳香族化合物同士を炭素―水素結合の切断により直接的に二量化する反応を触媒するパラジウム/銅錯体触媒による酸化反応の反応機構の完全解明に成功しました。この反応は、工業生産にも利用されていながらこれまでメカニズムは未解明でした。工業用途では、芳香族ポリイミドの合成などに使用されており、今回の成果により高強度プラスチックや、印刷技術により電子装置を作成するプリンテッドエレクトロニクスの基盤などに使われる原料の効率的な合成が期待されます。

本研究は、大型放射光施設SPring-8において、太陽の100億倍明るい「放射光」という光を使い、銅原子の原子核を選択的に観測・追跡することで触媒反応中の銅錯体の単結晶X線構造解析に成功しましたものです。 その結果、反応当初は二核構造をしていた酢酸銅(II)錯体が、触媒反応溶液中で単核の酢酸銅(II)二水和物に変化していること、2当量の酢酸銅(II)が0価のパラジウムを酸化して2価の酢酸パラジウムを再生していること、その際に生成する酢酸銅(I)が反応溶液中にある酢酸と酸素存在下で反応して2価の酢酸銅(II)が再生することを世界ではじめて実験的に証明しました。
2020-06-03 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

細胞中の温度を画像化する技術の開発


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東北大学は、細胞の中にある水を特殊な顕微鏡で観察することで、細胞内の温度を計測する新たな手法を開発しました。健康状態を知るために体温の計測を行うように、細胞の状態を知るために、細胞ひとつひとつの温度測定が必要な場合があります。これまでの単一細胞の温度測定方法は、温度に応答する蛍光色素を細胞内にあらかじめ導入する必要がありました。今回の研究では、ラマン顕微鏡と呼ばれる手法を用いて細胞内の水を観測することで、蛍光色素を用いることなく、細胞内温度を測定することに成功しました。研究グループは、細胞内にもともと存在する水に着目し、水分子の間で形成される水素結合の強さが温度に依存するため、この水素結合の強さを測定できれば、細胞内の水の温度、すなわち細胞の温度を測定できると考えました。細胞内の水分子の水素結合の測定は、ラマン散乱を画像化するラマン顕微鏡 で行うことができます。

ある波長の光を観察対象に照射すると、観察対象に当たった光が散乱された光の中に、照射した光とは異なる波長の光が含まれることがあります。照射した光の波長と散乱された光の波長の差が、観察した分子の振動エネルギーに一致する散乱光をラマン散乱光と呼びます。ラマン散乱光の測定から分子の振動スペクトルを得ることができます。細胞内にある水分子の酸素原子と水素原子の間の水素結合の伸縮振動のスペクトル が水素結合の状態によって変化するために、それを解析することで細胞の中の水の温度が得られます。

この手法は、たとえば、薬剤を細胞内に導入した際の、細胞内温度の上昇を測定することなどに応用できますし、がん細胞は正常細胞よりも温度が高いことなど、既知の情報と組み合わせ、様々な生理現象や疾患の発症機序の解明にも応用が期待できます。
2020-06-02 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

培養肉で食料自給率向上を


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農林水産省のWebで公開されている最新、2018年度の食糧自給率データ によると、牛肉の自給率は36%、豚肉は48%、鶏肉は64%といずれも低い数値です。さらに、畜産用も含めた穀物全体の自給率はわずか28%にとどまっています。

ところで、昨今の新型コロナウイルス禍においては、マスクや防護服、人工呼吸器などの国内生産ができていないことが大きなリスクであることが露呈しました。これは食料においても同様で、世界的緊急事態になるとお金をいくら積んでも他の国は日本に食料を売ってくれなくなります。そこで問題になるのが、コメやイモなど比較的自給率が高い食料に対して、現代人にとって重要なタンパク源である肉の自給率の低さです。

それに加え、ここ数年、畜産が地球温暖化に与える影響が思いのほか大きいことが問題となっています。にもかかわらず、食肉の消費量は年々増加を続けており、地球温暖化の抑制と将来にわたる食肉の安定供給の両方の観点から食肉問題を真剣に考える必要が出てきました。植物肉は米国ではすでに広く市販され、さらに、世界各国で人工肉・培養肉の研究が進んでいます。培養肉、つまりブタやウシの細胞をほんのわずか採取して、それを実験室で培養して食べられる大きさの肉にまで培養する研究において、初めて食べられるレベルの肉を作ったのは2011年のオランダ・アイントホーフェン工科大学の研究チームでした。この、ブタの筋肉細胞を培養して作られた肉は食肉というよりは培養した肉細胞のかたまりに過ぎず、脂分も無いためパサパサで全くおいしくない上に、価格は200グラムで3000万円でした(ヴォイニッチの科学書2011年4月16日 第336回)。

この時、実用的な人工肉の開発にはあと10年はかかるとされていましたが、それをまたず、2019年3月に東京大学と日清食品の共同研究チームは3年がかりで開発した、1センチ角の赤身サイコロステーキを発表しました。これは、ウシの細胞を培養し、食紅でおいしそうに着色したものです。畜産農家から直接仕入れた新鮮なウシの筋肉細胞にビタミンCなどを加えた特殊な培養液を開発してシート状に細胞培養し、肉シートを重ねて厚みのあるステーキ肉を作成しました。2025年頃には本格的なステーキ肉が完成しそうとのことです。今回のコロナ騒動に端を発する物資不足をきっかけに「食べられる肉の量が3分の1になったらどうしよう」と考えてみてはいかがでしょうか。

培養肉で食料自給率向上を
2020-06-01 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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