Chapter-608  匂いの好き嫌いを決める脳内メカニズムを解明

2016年7月2日 
Chapter-608 匂いの好き嫌いを決める脳内メカニズムを解明

良い匂いと不快な匂いを嗅ぎ分けることは、動物の生存にとって大変重要です。例えば、食べ物の匂いを快いと思うことで、エネルギー源にたどり着くことができます。一方、腐敗物や捕食者の匂いに嫌悪感を覚えることで、危険を回避できます。しかし、匂いの好き嫌いを決める脳内メカニズムは解明されていませんでした。

そこで、少数の神経細胞で、哺乳類と類似した機能を発揮するショウジョウバエ成虫の嗅覚回路に着目し、神経活動から匂いの嗜好を解読することが試みられました。 研究チームは匂いの好き嫌いを評価するため、ハエの行動に応じて匂いや景色が変化する“仮想空間”を構築しました。仮想空間内では、ハエは固定され、羽ばたくことで景色の方が動きます。匂いの強さも景色の変化に応じて変化させることによって、ハエが匂い空間の中を飛行する時間が長ければその匂いを好む、すぐに旋回して匂い空間の外に逃げれば嫌うと解釈できます。

実験の結果、ハエは84種類の多様な匂いに対して誘引(留まる行動)から忌避(逃げる行動)までさまざまな反応を示しました。また、研究チームは嗅覚情報を処理する触角葉という脳の領域が、匂いに対してどのように応答するかを調べました。触角葉は約50個の糸球体という球状構造で構成されています。各糸球体は、異なる匂い情報を伝達する経路として見なすことができるため、匂いは糸球体群の神経活動パターンとして脳内に表現されることになります。

糸球体群の活動からハエの匂いの嗜好を解読する数理モデルを作成したところ、ハエの行動は、各糸球体の活動を全てを足し合わせることで説明できました。この数理モデルによる解析から、匂いの好き嫌いは絶対的なものではなく、直前に嗅いだ匂いの種類や頻度によって変わることが予測され、実際その通りにハエの匂い嗜好は環境依存的に変化することを見出しました。  

本研究で行った神経活動を解読するアプローチは、ブレイン・マシン・インターフェースの改良など、さまざまな応用も期待できます。


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2016-07-25 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :
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