Chapter-618 ステルス難聴

ライブ会場や工事現場など、大きな音を聞いた後に耳が聴こえなくなるということは日常的にあります。この聴こえにくさは数日で回復するため、これまで健康上の大きな問題とは考えられていませんでした。ところが、ここ数年の研究でこの考え方が大きな誤りであったことがわかってきました。

一時的であっても耳が聴こえにくくなるような音を聴くと、耳から脳に音の情報を伝える聴覚神経が大きなダメージを受け、しかもダメージを受けた聴覚神経は回復不能になることがわかりました。このような聴覚神経の損傷は通常の聴力検査では発見することができないためここでは「ステルス難聴」と呼ぶことにします。ステルス難聴のメカニズムは次のようなのです。

耳の穴(外耳道)に入ってきた音は鼓膜を振動させます。その振動は小さな骨を伝わって耳の奥にあるカタツムリの形をした蝸牛の内側の有毛細胞に届きます。

ステルス難聴

有毛細胞は毛の揺れを化学反応に変換する機能があり、毛の揺れの程度に応じた量の神経伝達物質(グルタミン酸)を放出し、その情報が脳に伝わって私たちは音として感じ取ります。

ステルス難聴

大きな音を聴き続けて有毛細胞がグルタミン酸の大量生産を続けると有毛細胞は次第に膨張し、やがて破裂して死んでしまいます。そのような状態でも聴覚検査では普通に聴こえてしまいますので、本人は自分の聴覚に異常が発生していることに気づきません。これがこの難聴がステルス難聴であるゆえんです。ですが、会話などの複雑な音を認識する能力は次第に低下していきます。

神経細胞が80パーセントくらい損傷すると聴覚検査に異常が見られると推定されており、80パーセントもの神経細胞が死んでしまった聴覚は元に戻ることはありません。

イラストはいずれも拙著
「身体をめぐるリンパのふしぎ」(技術評論社)93ページ
「カラー図解でわかる細胞の仕組み」(ソフトバンククリエイティブ)148ページ


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2016-09-10 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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