ヴォイニッチの科学書 Chapter-639 熱活性化遅延蛍光

大阪大学と英国ダラム大学の国際共同研究グループは刺激を与えるとその種類によって3色に変化して光る物質(=熱活性化遅延蛍光物質)の開発に成功しました。

ヴォイニッチの科学書 Chapter-639 熱活性化遅延蛍光

「引っ張る」「圧力をかける」「こする」「加熱する」「溶剤蒸気にさらす」などを行うことによって光の色を変えることができます(下図)。 この熱活性化遅延蛍光物質はすぐにでも有機ELの材料として使用できますし、刺激の程度を光で表示するセンサーとして使用することもできそうです。

今回の発明のすごい点は一つの材料で3色に光の色が変化することです。熱活性化遅延蛍光分子は外部から刺激を加えると分子が変形して電子配置などの状態変化が起きるのですが、分子には最も安定な構造があり(下の図では「赤」の状態)何もしなければその状態にあります。ですが、分子の構造を工夫すると二番目に安定な状態や三番目に安定な状態も出現する可能性があります(下の図では「黄」や「橙」の状態)。このような分子の一部は構造的に最も安定な状態とその次に安定な状態の間での構造の変化によって光を発します。  

これまで発見されていた熱活性化遅延蛍光物質は安定な状態が二種類しかないものばかりでしたので、光の色も二色の変化に限られていました。 複数の異なる色を発するマルチカラーな材料を作り出すことができれば、刺激による反応の(光の色の)バリエーションが増え、産業的価値はより高まります。 ですが、そのような分子を設計するに当たっては、一番安定な構造、二番目に安定な構造、三番目に安定な構造といった相互変換可能な複数の安定状態を生み出す必要があり、分子設計の難度が著しく高くなり、これまではそのような分子の設計に誰も成功していませんでした。  

ヴォイニッチの科学書 Chapter-639 熱活性化遅延蛍光

大阪大学などの国際研究チームはこの課題を解決するための研究を長年続けてきましたが、その集大成としてジベンゾフェナジン(前図の白い枠の中)という有機化学分子をベースにした、理論的には四種類の大きく異なる電子構造パターンに相互変換可能な分子を発明しました。  合成した化合物にさまざまな外部刺激を与えると、発光色が三色に変化するマルチカラー特性を示すことも確認されました。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


関連記事
スポンサーサイト
2017-02-07 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

おびおのプロフィール

おびおがしかし

Author:おびおがしかし
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
苦手な食べ物:シーチキン、レバー、昆虫系
Web:ヴォイニッチの科学書
お気づきの点はメール
twitter:科学の自動会話プログラム ぼっとびお。

スヴァールバルの画像保管庫

スポンサードリンク

スポンサードリンク

ワトソンの検索窓

ロザリンド・フランクリンのダイアリー

02 | 2017/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

QRコード

QR