ヴォイニッチの科学書 Chapter-637 化学兵器

化学物質が兵器として初めて本格的に使われたのは第一次世界大戦中、ドイツ軍と連合国軍によるベルギー近郊連合国支配下の重要拠点での戦いでのことでした。この時に使用された化学物質は「塩素ガス」で当時のドイツで容易に化学兵器に転用できる保有量があり、中和剤入りのマスクで被害を容易に防ぐことが出来たため、味方にはあらかじめ防護策を講じ、原因のわからない敵には大きなダメージを与えられるという点で非常に優れていました。塩素を吸引するとまず呼吸器が損傷し気管支が痙攣を起こします。激しい咳と嘔吐で戦闘どころではなくなり、呼吸不全や肺水腫で死に至ります。

塩素ガスの使用がきっかけとなり、連合国側も同じ兵器を使用するに至った結果、敵の手の内さえわかっていれば防護が容易な塩素ガスは毒ガス兵器としてすぐに役に立たないものとなりました。

そこでドイツ軍は1917年7月に硫化ジクロロジエチルを使った毒ガス兵器を使用しました。硫化ジクロロジエチルはマスタードに似た臭いを持つことからマスタードガスと呼ばれます。硫化ジクロロジエチルは皮膚や粘膜にやけどと同じ損傷を起こし、眼や呼吸器を損傷させるほか、ゴムや皮に染みこんで通り抜けるため塩素ガス対策のような簡易なマスクが役に立ちません。

結局、第一次世界大戦においては39種類もの化学物質が毒ガス兵器として使用され、100万人以上の被害者を出しました。その後、戦争における自然科学の応用は化学から物理学へ、すなわち核兵器へ向かっていくことになります。 化学兵器による悲惨な事態を防ぐために1997年には世界中のほぼすべての国が締結した化学兵器禁止条約が発効し、化学兵器の開発・生産・貯蔵・使用を全面的に禁止するとともに査察機関による確認が行われています。


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2017-01-21 : トップニュース : コメント : 0 :
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