ヴォイニッチの科学書 Chapter-648 悪液質

がんなどの重病に患者が痩せ衰えるのは非常に多くのケースで見られます。それは悪液質という疾患であるケースが多いことがわかっています。悪液質は代謝異常の一種で、全世界に約900万人の患者がいて進行がん患者の80%がその中に含まれているとされています。典型的な症状は体重と筋肉量の著しい減少で、そのため日常的な活動が困難となり、感染症などの致死的な合併症にかかるリスクも高まります。悪液質は、カロリーを摂取させても改善されません。つまり、末期の患者にたくさん食べものを食べさせても衰えは回復しない、ということです。

悪液質になると見た目で死が近づいていることがわかるため、非常につらい状況となりますが、これまでは悪液質を単独の病気として治療を行うことはほとんどされていません。ですが、近年は悪液質を治療可能な別個の疾患と考えて治療を試みることが行われ始めました。悪液質の治療は末期患者の苦痛を緩和し、がんなどの根本的な疾患の治療に耐える体力をつけることにもつながると考えられるようになったからです。ですが明確な治療方法は見つかっていません。

悪液質は炎症や代謝バランス異常によってタンパク質合成の低下とともに筋タンパク質の破壊が進む病気らしいことが明らかになっています。この時の筋肉でE3ユビキチンリガーゼという、破壊するべき不要タンパク質に目印をつける酵素が活性化していることがわかりました。もともとこの酵素はがんなどの疾患に免疫系が対抗する時に活性化している酵素であるため、本来はがんなどへの対抗措置だったものが、患者自身を攻撃するようになった一種の免疫疾患であることもわかりました。

免疫系を抑えることは患者の病気への抵抗力を低下させることにもつながるため、治療薬の研究が難しく、いまのところ成功した臨床試験の無い難病です。ですが、悪液質治療薬の研究はがん治療の副作用の軽減などにもつながり、患者の生活の質を改善するすることにつながるため、重要な研究領域だと思われます。


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2017-04-10 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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