ATPは臭いだった

野生の動物にとって嗅覚はとても重要です。エサを見つけるのにも、敵の接近を察知するのにも、パートナーを見つけて子孫を残すためにも重要な感覚です。

遺伝子レベルで見ると人間は約400種類の臭いセンサーがあって、空気中の臭い物質が鼻の中に入ってくるのを待ち構えています。これらのセンサーからの情報が脳に伝えられて統合され、無限とも言える種類の脳の感覚を生み出し「好きな匂い」「危険な匂い」「異性の匂い」などが判断されます。  

ところで、アデノシン三リン酸、略称ATPという分子があります(下図)。

ATPは臭いだった

私達の体の中でATPはエネルギー源や神経伝達物質として重要な役割を果たしています。ところが、水の中で生きている生物にとってはATPは臭いであるらしいことがわかっていました。  

理化学研究所の研究チームはゼブラフィッシュを使ってATPが臭いであることのメカニズムの解明に取り組みました。ゼブラフィッシュを飼育している水槽にATPを入れるとゼブラフィッシュはATPの濃い場所を好んで泳ぎ回ります。また、ゼブラフィッシュの嗅覚部分を除去するとATPに反応しなくなりました。  

この実験からATPが嗅覚に作用していることが明らかになりましたので、ATPによって活性化される嗅覚神経回路の解析を行ったところ、ATPは外側糸球体という脳における臭いを感じ取る特定の場所を活性化することが分かりました。 ATPを臭いとして感じるために必要な遺伝子は全ての魚類と両生類で共通に存在しますが、爬虫類、鳥類、哺乳類はこの仕組みを持っていませんでした。

さらに、ATPは血液に多く含まれています。サメやピラニアは血の匂いに寄ってきて獲物を仕留めるといわれていますが、今回の研究結果からサメを誘引する物質は血の中に含まれるATPである可能性が出てきました。であれば、ATPやを散布して人間がいない方向におびき寄せ、サメやピラニアから身を守れる可能性も考えられます。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


関連記事
スポンサーサイト
2017-05-28 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

おびおのプロフィール

おびおがしかし

Author:おびおがしかし
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
苦手な食べ物:シーチキン、レバー、昆虫系
Web:ヴォイニッチの科学書
お気づきの点はメール
twitter:科学の自動会話プログラム ぼっとびお。

スヴァールバルの画像保管庫

スポンサードリンク

スポンサードリンク

ワトソンの検索窓

ロザリンド・フランクリンのダイアリー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

QRコード

QR