古典「明月記」で知る太陽磁気嵐の地球直撃

古典「明月記」で知る太陽磁気嵐の地球直撃

太陽活動は刻々と変動し地球に影響を与えます。現代においては太陽活動が激しくなり、磁気嵐が発生することで、大規模な停電が発生したり、人工衛星の電子機器が故障したりします。また、大きな磁気嵐の時には、日本でもオーロラが観測されることが知られています。

最近では2003年10月下旬に太陽活動が激しくなり、多くの人工衛星が故障する「宇宙災害」に見舞われ、スウェーデンの南部では停電が発生し約5万人が影響を受けました。日本では二日間にわたり北海道でオーロラが観測されています。

過去の時代におけるこのような天文現象の発生を探るために京都大学の研究者らは鎌倉時代初期の歌人・藤原定家の日記『明月記』に記録された、「赤気(オーロラ)」の記述に注目しました。『明月記』には、1204年2月21、23日の京都の夜空に「赤気」が現れて恐ろしい様子だという記述が残されています。これは、現在調査されている日本の文献の中では、最古の「長引く赤いオーロラ」の記録です。

明月記
1204年2月21日、晴れ。日が暮れてから北及び東北の方向に赤気が出た。その赤気の根元の方は月が出たような形で、色は白く明るかった。その筋は遠くに続き、遠くの火事の光のようだった。白いところが4、5箇所あり、赤い筋が3、4筋出た。それは雲ではなく、雲間の星座でもないようだ。光が少しも翳ることのないままに、このような白光と赤光とが入り交じっているのは、不思議な上にも不思議なことだ。恐るべきことである。
1204年2月23日、晴れ。風が強い。日が暮れてから、北・東北の方向に再び赤気が現れた。それは山の向こうに起きた火事のようだった。重ね重ねとても恐ろしい。

さらに研究グループは古典書籍を研究し、中国の歴史書『宋史』に明月記と同じ日に太陽活動が記録されていることを発見しました。

宋史
1204年2月21日、太陽の中に黒点がありナツメのように大きい。


地磁気の北極はつねに揺れ動いていますが、「明月記」が書かれた頃の地磁気の北極を調べたところ、極が日本の方へ近づいている時代に相当し、過去2000年間で日本からオーロラが最も観測しやすい時期であったことが明らかになりました。今回、2つの古典の記録から約800年前の大規模な太陽活動が実在したものであり、太陽の異常を反映して日本の空にオーロラが出ていたことが確かめられたことになります。

さらに「宋史」で900年代~1200年代の記録を調べると、長引く赤いオーロラが見られた記述が十数例見つかりました。また、樹木年輪の炭素同位体比から、当時の太陽活動の歴史を復元しました。その両者を比較した結果、11年周期の太陽活動の極大期付近に、長引く赤いオーロラが多く記述されていることが明らかになりました。

古典、特に日記や歴史書の中に記録された天文現象、地質学的出来事を年輪の変化などの科学的に検証できる事実と結びつけて解釈することによって、単に科学的な「太陽の活動でオーロラが現れた」という事実を知るだけで無く、自然に対する捉え方が現代の私達とは大きく異なるはずの当時の人たちがどう感じたのかを知ることはとても興味深く、とても重要なことで、科学の面白さの一つでもあると思います。


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2017-05-28 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :
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