FC2ブログ

ヴォイニッチの科学書 第674回 2017年ノーベル賞 自然科学三賞概要

10月7日配信の第674回ではノーベル賞自然科学三賞の概要をお話しました。ノーベル賞については今年も詳細と子供たち向け解説を日教弘ライフサポート倶楽部から配信準備中です。こちらもご期待下さいね。

▼生理学・医学賞 体内時計のメカニズムの解明

 2017年ノーベル生理学・医学賞は地球上のあらゆる生物が地球の自転周期と一致した24時間周期の生命現象を営む、サーカディアンリズムを制御する分子メカニズムの発見でした。
 生物は体内に時計機能を持っていることは古くから知られていました。それによって開花、行動、ホルモンレベル、睡眠、体温、代謝などの生理現象はほぼ24時間の周期で繰り返されています。ですが、体内時計がどのような仕組みで働いているのかは長年のナゾでした。
 今回ノーベル賞を受賞したジェフリーC.ホール、マイケル・ロスバシュ、マイケル・W・ヤングらはショウジョウバエを使った遺伝子レベルの実験によってその仕組みを明らかにしました。 ショウジョウバエの様々な遺伝子について、1日周期で活動が変化する遺伝子を探したところ、ある遺伝子が昼間に活性化し、夜間に沈静化する24時間周期の振動をしていることを発見しました。この遺伝子が突然変異を起こすと、そのショウジョウバエは1日のリズムが壊れることから、この遺伝子は体内時計に大きく関わっていることがわかりました。
 さらに遺伝子を詳細に調べたところ、受賞者らがピリオド遺伝子、タイムレス遺伝子と名付けた2種類の遺伝子がそれぞれPERタンパク質とTIMタンパク質と名付けられたタンパク質を作りだし、この2種類のタンパク質が結合したり離れたりすることによって細胞に24時間の周期性が表れることを確認しました。両者が結合することによって、自分たち自身の設計図であるピリオド遺伝子とタイムレス遺伝子の活動をフィードバック制御していたのです。
 また両タンパク質の結合は朝になってショウジョウバエが光を浴びると分離することもわかりました。このような朝の光によってリセットされるタンパク質の結合と分離のメカニズムが体内時計として私達の生活に1日周期を作り出していたのです。光の全く当たらない部屋で長い時間生活すると次第に体内時計がずれることがわかっていますし、海外旅行などで時差ぼけがおきるのは体内時計の周期と外界の昼夜の不一致が起きることが原因です。



▼物理学賞  重力波の確認

 重力波とは100年前にアインシュタインによって存在が予言されていた宇宙空間に発生するさざ波です。海にさざ波があるのと同様に宇宙空間にもさざ波があるとアインシュタインは予言していたのです。  
 重さのある物体はすべて周辺の空間をゆがませます。ゆがみ方はそこにある物体が重いほど大きくなりますが、非常にわずかなゆがみなので太陽ほど重くなければ人類の観測技術では検出が不可能です。
 空間をゆがませている物体が移動すると周辺の空間のゆがみも一緒に移動するために、ゆがみの波が発生します。これが重力波です。波はさらに観測が難しいので、巨大ブラックホールの衝突のようなとてつもなく重い物が、急加速しながら宇宙空間を移動するすさまじい天文現象が起きなければ観測することは出来ません。  
 人類が初めて重力波の観測に成功したのは2015年(報告は2016年)のことでした。この時には2個のブラックホールが衝突するという、すさまじい天文現象によって放出された重力波を地上に設置された重力波望遠鏡LIGOがキャッチしました。LIGOは長さ4キロメートルの観測装置2基を組み合わせて空間のゆがみを測定する望遠鏡です。  
 重力波は光と同じように天体観測に使用することが出来ます。LIGOが重力波の観測に成功したことによって、人類は新しい宇宙観測手段を手に入れたと言えます。  LIGOは、20カ国以上の1000人以上の研究者との共同プロジェクトで、今回受賞した研究者らはほぼ50年、研究者人生のすべてを重力波検出にかけてきました。



▼化学賞 クールな電子顕微鏡の発明

 2017年のノーベル化学賞はみずみずしい生体分子を観察できるクライオ電子顕微鏡技術の開発でした。 百聞は一見にしかずというフレーズがあるとおり、写真のインパクトは強烈です。かつて、美味しい料理を「シャッキリポンと、舌の上で踊るわ!」なんて複雑なセリフで語っていたところも、最近のインスタ映えに一蹴されてしまいました。
 科学の領域でも、今まで見ることが出来なかったものが画像化された時に知識が大きく前進することはよくあることです。これまで材料工学のような非生物の領域では電子顕微鏡観察技術は著しい進歩を遂げていました。 ところが、たとえば医薬品がタンパク質に結合する場面などの生化学領域においては、人類の映像化技術は分子レベルにまで到達していませんでした。
 電子顕微鏡は観察したいものを真空中において拡大観察するのですが、細胞のほとんどは水のため、電子顕微鏡の真空状態では水が蒸発してしまって干からびてしまうので、その状態で見える物は細胞が生きている時とは違う物になってしまっている可能性が高いのです。
 1990年に電子顕微鏡を用いて原子レベルの解像度でタンパク質の3次元画像を生成することに成功し、これがブレイクスルーとなり、水を急速冷却してガラス化することによって、生体分子が崩壊することを防ぎ、生体分子が真空中でも自然な形を保つようになりました。  
 今ではタンパク質はもちろん、ウイルスの表面の様子までが増加することが出来ます。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


関連記事
スポンサーサイト



2017-10-22 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

おびおのプロフィール

おびお

Author:おびお
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
ツイッターアカウント:@cradiobio
ものことごはん:http://obio2.blog.fc2.com/

スヴァールバルの画像保管庫

スポンサードリンク

スポンサードリンク

ワトソンの検索窓

ロザリンド・フランクリンのダイアリー

10 | 2019/11 | 12
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

QRコード

QR