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ヴォイニッチの科学書 第680回 表皮水疱症の決定的治療法

表皮水疱症という遺伝性の病気があります。治療薬は無く、死に至る可能性も高いこの病気を発症したドイツの7歳の少年に対して、大がかりな皮膚の再生手術が行われました。

水疱症は皮膚の細胞と細胞を強く結びつける結合組織(タイトジャンクション)に異常が生じ、皮膚のバリアが壊れるため、そこから雑菌が侵入し、細菌感染を起こします。この少年は全身の6割を水疱が覆っており、非常に危険な状態でした。

ヴォイニッチの科学書 第680回 表皮水疱症の決定的治療法


治療に際してはまず、少年の皮膚の健康な部分から皮膚幹細胞、つまり、新たな皮膚細胞を再生する能力を持っている細胞を採取します。この少年の病気の原因は遺伝子の突然変異によって、LAMB3遺伝子が異常になっていることがわかっていましたので、LAMB3遺伝子を修正する遺伝子治療を施しました。LAMB3遺伝子は、皮膚の最も外側の表皮の強化に必要なタンパク質の生成に関係している遺伝子です。この遺伝子を修正することによって皮膚のバリアが形成され、雑菌が侵入できなくなります。

次に、遺伝子が正しく治療された皮膚幹細胞をシート状の皮膚細胞に育て、体に移植しました。

この手術により、少年の皮膚の水疱は手術前には全身の6割を覆っていたものが、2割まで減らすことができました。同様の皮膚の再生手術はやけど治療のために小さなシートを使用することは行われてきましたが、今回のようにほぼ全身にわたるほど広い面積を遺伝子操作した細胞シートで治療をしたのは初めてのことです。  

表皮水疱症を患う患者は、活性化ランゲルハンス細胞がむきだしになるため、皮膚が非常に敏感になり、普通の人にとっては何でも無い皮膚への接触を凄まじい痛みとして感じます。病気は慢性的で皮膚には治療不可能な傷ができ、そこから感染症を起こして、最終的にはがん化します。表皮水疱症の患者は、世界中でおよそ50万人います。  

今回の治療の効果は、これまで行われたやけど治療における皮膚細胞シートの実施例から予測すると、少なくとも30年は続くと思われ、おそらくは完全治癒ができたと考えられます。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


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2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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