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心の中の独り言の科学

(日経サイエンス 2018年1月号より)


私たちはよく、心の中で自分に対して語りかけることがあります。たとえば、飛行機に乗り遅れそうな時、心の中で「遅れる、やばいやばい、あと何分!?」などと言っていることがあるはずです。それを口に出して叫びながらエスカレーターを駆け上る人はアニメの中だけの話だとは思いますが、羽田空港でエスカレーターダッシュをしている人の多くは心の中でそう叫んでいると思います。  

また、私はしばしば入浴中に次の原稿で使えそうなナイスなフレーズや、次のイベントのテーマがまるで天から降ってくるようにわいてきます。これは多くの作家で見られる傾向で、このようないろいろな考えやイメージ、感覚が頭をよぎった時には多くの人が、頭の中でアイディアが言葉として表現されるのを感じるといいます。 このような声に出さず、頭の中で自分に語りかける現象を心理学者は「内言(ないげん)」といいます。内言とは内語ともいい、発声を伴わずに自分自身の心のなかで用いる言葉のことです。通常の会話は内言に対して外言と呼ばれます。外言は他人との意志伝達のため、内言は思考の用具として自己の行動を抑制、統御、調整するためであるとされています。  

一方で、声に出して自分に語りかけることを「私的発話」といいます。何かおもしろいものをみつけたとき、「ツイートしなきゃ!」と自分に指示するような場合です。私的発話も内言と同様に、自分の行動の計画と監視、感情の調節、独創的発想の促進などの目的があると考えられています。  

1930年代ロシアの心理学者、ヴィゴツキーは私的発話について、言葉というものは本来、他者の行動に影響を与えるために用いるものであるが、私的発話では他者ではなく自分の行動に自分で影響を与えるために用いている、と表現しました。つまり、私的発話は自分との対話である、と考えたのです。  

英国ダラム大学の研究者らがこの点についてfMRIを使った研究を行っています。それによると、内言にも私的発話にも両方共に脳の中の言語系が活動していることがわかりました。つまり、言葉を発する私的発話はもちろんのこと、言葉を発しない内言においても脳の中では普通に言語として処理されている、ということです。 会話と内言・私的発話は人間の独創性の起源に大きく関与していると考えられています。

つまり、自分自身と対話することによって架空の誰かとの議論を内在的に具現化することができます。自分の中で議論することによって脳の引き出しの中に埋もれている情報をひっぱりだしたり、それらの情報同士を結びつけたりすることが、あたかも他の人と議論して新たな結論を導き出すことと同様に可能になるようなのです。 さらにこの研究は思考とは何なのか、という興味深い問題へアプローチするための方向付けであるともいえます。


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2017-12-18 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
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