医学上の性差

医薬品の多くは体内での分解速度や、効果の出方、副作用の出方が男性と女性では顕著に異なります。 副作用が出る可能性は女性の方が男性よりも50~70%高いとされています。これは身体の大きさ、筋肉に対する脂肪の割合、ホルモンの影響といった多くの要素が異なるためです。

同じ量の薬を服用しても男性と女性では身体の体積が違い、一般に身体の小さい女性では体の体積当たりで考えると相対的に男性よりも多くの薬を服用していることになります。また、脂肪は薬を吸着して蓄える作用がありますので、女性の方がより体内に薬が残存、蓄積しやすくそれが副作用につながることがあります。

医学上の性差

新しい医薬品を研究する過程では多くの実験がネズミなど齧歯類のオスを使って行われます。動物実験で安全性と効果が確認された後に行われる臨床試験でも女性の参加者は非常に少ないため、女性への効果や副作用に関する情報が不足したまま医薬品として市場に出て行くケースが多くあります。ところが、病気には男女差が多いので問題が発生します。  

たとえばがんは総じて女性より男性に多い病気ですが、特に、肺がん、大腸がん、腎臓がん、肝臓がんによる死亡率は男性で高いことがわかっています。ところが、50歳以下ではがんによる死亡率が女性の方が高くなっています。また、がん治療に使われる抗がん剤フルオロウラシルの副作用は男性より女性の方がかなり重篤であることがわかっています。  

骨粗鬆症が女性に多いことはよく知られていますが、白人女性は白人男性より骨粗鬆症になる可能性が2倍高いことがわかっています。さらに不安症やうつ病と診断される患者数も女性は男性より2倍多く、アルツハイマー病の患者も3分の2は女性です。 心臓の疾患も女性と男性で異なります。女性の心不全は左心室の壁が硬く厚くなるために起こることが多いことがわかっています。心電図に見られる異常としては, 男性では不整脈が多く、女性では頻脈が多くなります。頻脈は医薬品の副作用としても見られるもので、ある種の医薬品を投与すると悪化し、命にかかわることもあります。血液凝固は女性でより顕著です。これは出産時の過剰な失血を防ぐように進化してきたためである可能性もあります。  

このように男女間で多くの違いがあるため、本来は医薬品の研究、治療方法の研究では男女別々に効果や副作用が検討されるべきですが、現在市販されている医薬品のほとんどは、当局がそのような解析を求めていなかったため、性差が考慮されず、平均的な患者向けにできています。この問題を受け、近年は個々の患者の遺伝子、環境、ライフスタイルまで考慮した医療を行おうとする試みが進められています。
参考:日経サイエンス 2018年1月号



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2018-01-15 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :
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