Chapter-428 ヒトES細胞から立体網膜の形成に世界で初めて成功

 ヒト網膜は傷つくと自然治癒力はほとんど無く、網膜色素変性症などの網膜の病気は失明に至る可能性があります。薬では治せないので幹細胞などを利用した画期的な再生医療の開発が期待されています。

 網膜の主要な部分は、光を感知する神経網膜とそれを助ける色素上皮です。神経網膜は視細胞、神経節細胞など多種類の細胞を含む複雑な多層構造を持ち、ES細胞やiPS細胞などからこうした複雑な組織を形成することはできていませんでした。

 今回、理化学研究所の研究グループは、細胞は人工的な環境で培養しても自発的に正しく集合して組織のような構造を作り出す性質を持っていること応用し、ヒトES細胞からも眼のもととなる「眼杯」と呼ばれる立体網膜組織を試験管内で産生することに成功しました。さらに、このヒト細胞由来の立体網膜組織を数週間~十数週間培養し続けることで、生体の網膜に見られる複雑な多層構造を有する網膜組織の立体形成にも成功しました。

 この組織は、5mmくらいの大きさで、神経網膜の主要細胞である視細胞、神経節細胞、介在神経細胞などを含む多層化した組織構造を有していました。さらに、ヒト細胞由来の立体網膜組織を液体窒素中に凍結保存する方法も確立し、高い品質管理のもとに長期保存を可能としました。

 これらの研究成果は、多能性幹細胞からヒトの網膜組織を人工的に大量産生し、保存・供給する技術体系の確立に貢献します。「生体に近い複雑な組織」の人工産生とその移植・使用により、高度な機能再生を目指す「次々世代の再生医療」の実現を大きく前進させるとともに、化学物質の安全性評価や創薬への応用も可能にするものとして期待できます。

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2013-02-02 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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