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ヴォイニッチの科学書 第698回 遺伝子を書き換えて病気を治す臨床試験開

実はすでに私たちは人間の遺伝子を自由に書き換える技術を開発しています。そのひとつがクリスパー(CRISPR)技術で、人間細胞の遺伝子が初めて書き換えられたのが2013年のことでした。

私たちが発症する病気の多くは特定の病気を発症しやすい状態に遺伝子が書き換わって(変異して)いることが原因です。であれば、遺伝子を適切に書き直せば病気の治療ができるはずです。そのような遺伝子に対して治療を施す医療を遺伝子治療といいます。

遺伝子治療には遺伝子を封入したウイルスを感染させるなど、いくつかの方法がありますが、クリスパー技術で遺伝子を書き換えて病気を治療する最新の方法の実現も目前に迫っています。 クリスパーの臨床試験はこれまでいくつか計画されてきましたが、いずれも遺伝子を書き換えるに当たっての懸念事項が払拭できず延期が続いていました。ところがついに、2018年に欧米でいくつかの臨床試験が始まりそうです。  

そのうちの一社、米国マサチューセッツ州のクリスパー・セラピューティクス社が行うのは遺伝性血液疾患のベータサラセミア(地中海性貧血)治療です。同社はこれに続いて、鎌状赤血球症の臨床試験の申請を2018年中に行う計画を明らかにしています。  

地中海性貧血も鎌状赤血球症もヘモグロビン、つまり全身に酸素を運搬する赤血球内の重要なタンパク質の遺伝子に異常が生じている人が発症します。

ヴォイニッチの科学書 2018年1月20日配信 第698回 遺伝子を書き換えて病気を治す臨床試験開
上の写真は楕円状の健康な赤血球とゆがんだ鎌状赤血球が同時に写っている電子顕微鏡写真  

鎌状赤血球症患者は米国に多いことから、米国スタンフォード大学でも同様の臨床試験を2019年に開始する計画で研究を進めています。  

クリスパー・セラピューティクスもスタンフォード大学もいずれも患者の骨髄から幹細胞を取り出し、クリスパー技術で遺伝子を修正し、細胞を患者に戻します。この手法は血液疾患の他に代謝疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、メラノーマ、肉腫、多発性骨髄腫、遺伝性失明などにも応用可能だと考えられています。

一方で、先行している中国では、すでにいくつかのクリスパー臨床試験ががん治療を目的として進行中ですが、現時点でがん治療に成功したという報告は出てきておらず、クリスパー治療の難しさが見え隠れしています。クリスパーの臨床試験が本格的に始まるのは2019年のことだと予測されていますが、臨床試験の開始、治療効果を慎重に見守りたいと思います。


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2018-03-30 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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