ヴォイニッチの科学書 第698回 細胞の有線接続

ショウジョウバエの精子の研究をしていた米国ミシガン大学の研究チームが、細胞内で作り出されたタンパク質が、別の細胞に瞬間移動する現象を発見しました。何が起きているのか当初は想像もつかなかったのですが、1年後、研究者らは1個の細胞から別の細胞へとても細い管がつながっている写真を撮影することに成功しました。その後、この管は精巣の細胞同士を結び付け、細胞のコミュニケーションに関わっていることが明らかになりました。

細胞同士のコミュニケーションは神経伝達物質のような化学物質を使う方法がよく研究されていますが、それらは無線接続のようなものです。一方で、新たに発見された、細胞同士の管による接続は接続した細胞同士だけで情報をやり取りし、それ以外の細胞には情報を送らない有線接続だといえます。

ヴォイニッチの科学書 第698回 細胞の有線接続

血管やリンパ管、腸管、胆管など、多細胞生物の体内には多数の管が通っています。ですが、役目が明確なそれらとは異なり、近年発見される管には謎が多く、ウイルス粒子やプリオン、さらには細胞のエネルギー生産構造であるミトコンドリアが通過する管も発見されています。ですが、そのような管があることの意味はよくわかっていません。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、ハエの幼虫で翅(はね)が形成される過程で、翅の付け根になる周辺の細胞同士が多数の繊維でつながり、成長に不可欠な情報が伝達されているらしいことを突き止めました。このような情報はこれまで、自然拡散によって行われると考えられていましたが、実は細胞同士の接続で行われている場合が多くあるようです。  

そのような多くの研究の結果、私たちの体では、細胞同士がさまざまな方法でコミュニケーションしていることがわかってきました。今回発見されたような細胞同士が直接細い管でつながるネットワークは神経細胞のネットワークに似た構造や役目を持つことから、管状の接続からより緻密な制御が可能なニューロンに進化したのではないかという説もあります。  

管の重要性は医療の観点からも明らかになりつつあります。たとえばドイツ・ハイデルベルク大学の研究者らは、がん細胞の集団においては管で接続した細胞は、孤立したがん細胞よりも放射線治療がききにくいことを明らかにしました。放射線によって受けたがん細胞のダメージを管によって分散あるいは修復している可能性があります。


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2018-03-24 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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