FC2ブログ

べん毛モーター 最近の発見

大阪大学などの国内大学による共同研究チームが、細菌のべん毛モーターが細胞にどのような仕組みで固定されているかを明らかにしました。  

細菌はたくさんのタンパク質でできた部品を組み立てたモーターを使って、べん毛という波平さんの髪の毛のようなものをスクリューのように回して泳ぎます。べん毛モーターは、直径約45 ナノメートルと非常に小さいのに、毎秒約300回転という猛スピードで回転し、しかも瞬間的に回転を逆転させることもできます。さらに、べん毛モーターを構成しているタンパク質はモーターが回転中でも交換することができ、まるで自動車のエンジンを動かしながら不良となった部品を交換できるかのようです。

べん毛モーター 最近の発見

べん毛モーターには、電気モーターと同様に回転子と固定子があり、両者の引き合う力と反発力で回転します。水中を泳ぐ細菌には水分子による強力な粘り気が発生していますので、この力に負けないようにべん毛モーターを動かすには、べん毛モーターをしっかりと細菌に固定する必要があります。でなければ、べん毛を回転する力が水の粘性に負けて、細菌の細胞壁の中でモーターの方が回転してしまいます。

べん毛モーターの固定子は、多くの病原菌に存在する細胞壁のペプチドグリカン層(上図:PG)に固定されると考えられていましたが、どのように固定されているかはわかっていませんでした。そこで、大型放射光施設SPring-8でのX線結晶構造解析と核磁気共鳴(NMR)法を用いて生きた細菌での観察を行ったところ、固定子を細胞壁に結合させる際には、固定子のタンパク質がイオンを通しやすい活性型固定子に構造変化していることがわかりました。この現象は試験管内では観察することができない変化でした。

べん毛モーターの構造は年々少しずつ明らかになっていますが、今回の研究は上の図で言えば、「PG」と書かれた部分に下(細胞の内側)から突き刺さっているピンク色のパーツの上側の固定部分がどのような構造になっているのかが明らかになったということです。 べん毛モーターは、イオンの濃度差をエネルギー源とし、100%に近い高いエネルギー変換効率で高速回転するなど、現在の技術では人工的に実現できない高性能なナノマシンです。その作動原理の解明はまだ途中段階ですが、これまでにない超高効率モーターやナノサイズのモーターの開発を目指す上で極めて重要な研究です。

また、病原菌はべん毛モーターで体内を泳ぎ回って感染し、細胞壁は多くの病原菌に存在する一方でヒトや動物細胞にはないことから、今回明らかになった細胞壁へのタンパク質の結合を制御するしくみは、ヒトに副作用のない新しい作用メカニズムの抗菌薬開発の手がかりにもなるかもしれません。

べん毛モーター 最近の発見


関連記事
スポンサーサイト
2018-04-29 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :
コメントの投稿
非公開コメント

« next  ホーム  prev »

おびおのプロフィール

おびお

Author:おびお
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。
ツイッターアカウント:@cradiobio
ものことごはん:http://obio2.blog.fc2.com/

スヴァールバルの画像保管庫

スポンサードリンク

スポンサードリンク

ワトソンの検索窓

ロザリンド・フランクリンのダイアリー

07 | 2018/08 | 09
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

QRコード

QR