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ヴォイニッチの科学書 第703回 体内時計を薬で調節する

私たちの身体の中には、ほぼすべての細胞にそれぞれ体内時計があってだいたい24時間のリズムを刻んでいます。夜になったら眠くなるのも、朝になったら自然に目が覚めるのも体内時計の仕業です。その他、私たちが直接感じることはありませんが、ホルモンを分泌したり、代謝活動の上げ下げをしたりするのも体内時計の仕事です。

体内時計のリズムが乱れると時差ぼけになります。アルバイトのシフトが変わったり、海外旅行に行ったりすると発生します。さらに明け方まで起きてゲームをして、昼過ぎまで寝ているような太陽の動きを無視した生活をしても体内時計は狂ってしまい、それが原因で肥満、心臓疾患、がんなどのリスクが高まることが知られています。体内時計の狂いが薬で修正できるととても便利だろうと思うのですが、体内時計を修正する薬はこれまでありませんでした。

ところで、医薬品を作る、という研究に目を転じると、薬の開発には10年以上の歳月と数千億円もの費用がかかります。しかも、時間とお金をかけても研究開発に失敗する確率は非常に高いのが新薬研究です。画期的新薬を発明するのが難しくなった時代で「既存薬再開発」という考え方が進んでいます。既存薬再開発とは、すでに発売されている薬の中から、別の病気の治療へ使えるものを見つけ出す研究です。たとえば、バイアグラは狭心症治療薬を勃起不全治療薬として製品化したものです。

ヴォイニッチの科学書 第703回 体内時計を薬で調節する
バイアグラの構造式

体内時計の本体は「時計遺伝子」と、その遺伝子から作られる「時計タンパク質」です。それらの「活性化」と「沈静化」がだいたい24時間周期となって、そこから様々な生理現象の24時間リズムが作り出されます。

既存薬再開発で体内時計を調節する薬を見つけることはできないだろうか、と考えた名古屋大学などの研究チームは、細胞の24時間周期に合わせて細胞が光るように遺伝子を組み替えた細胞に様々な薬を振りかけて体内時計の変化を調べました。

約1000種類の既存薬を調べてみたところ、46種類の薬が体内時計周期を長くし、13種類の薬が体内時計を短くする作用を持つことを発見しました。 これらの薬には特に法則性は見いだせず、抗がん剤、抗菌剤、ホルモン剤、避妊薬、中枢神経系の薬、皮層疾患薬、消化器系薬、ビタミン剤、心疾患系の薬など 様々なものが含まれていました。つまり、私たちが普段飲んでいる薬の5パーセントが体内時計に何らかの影響を与える性質を持っている、ということです。

時差ぼけは日本から米国方向に移動するときと、ヨーロッパ方向に行く時では性質が異なることが知られています。アメリカに行くときには体内時計が無理矢理早送りされ、ヨーロッパに行くときは無理矢理遅れさせられます。西に向かって移動し、体内時計を遅らせるのはそれほど肉体の負担にはならないとされていますが、体内時計を早送りする薬はアメリカ旅行に、体内時計を遅らせる薬はヨーロッパ旅行に使うと、旅の時差ぼけが軽減できる可能性があります。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


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2018-05-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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