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植物の記憶力

植物の表面には気孔という穴があります。気孔は太陽光に応答して開閉し、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みや、水と酸素の放出(蒸散)などを行います。一つの気孔は一対の孔辺細胞と名付けられた細胞により構成されています。名古屋大学と横浜市立大学の共同研究チームは、気孔が日照時間の長さを記憶し、それに応じて気孔の開き具合を調節していることを発見しました。

植物の記憶力

今回研究チームは、植物のモデルとしてシロイヌナズナを使用して実験を行いました。8時間しか日を当てない日照時間の短い環境を再現して育てたシロイヌナズナと、16時間、日を当てた環境で育てたシロイヌナズナを比較したところ、日照時間が16時間の場合は、気孔がより大きく開くことがわかりました。自然界のシロイヌナズナは日照時間が8時間しかない場合は花を咲かせることなく成長のみ行い、16時間の日照時間があると花を咲かせ子孫を作る準備を始めます。これは花成ホルモンFTというホルモンによって制御されており、このホルモンが異常となったシロイヌナズナは日照時間が長くなっても開花の準備をしなくなります。

さらに興味深いことに、日の長い環境から日の短い環境に植物を移動しても、少なくとも1週間は気孔が大きく開く効果が持続する、つまり植物は自分が過去に置かれていた環境を記憶していることを発見しました。これは、遺伝子の発現制御に重要な働きをもつタンパク質であるヒストンの修飾状態が日の長さと関連しているためでした。 16時間日を当てて育てていたシロイヌナズナを8時間条件に変更して1週間育てた場合、開花の準備状態は維持されており、関係している遺伝子も発現状態が高いまま維持されていました。この記憶システムのメカニズムを探るために、遺伝子発現に重要な役割を果たすことが知られているヒストンのメチル化とアセチル化の状態を調べたところ、関連する遺伝子の周辺では、ヒストンのメチル化が引き起こされていることが明らかとなり、ヒストンのメチル化が孔辺細胞の記憶を担うメカニズムの一つである可能性が示唆されました

植物の記憶力

 日照時間は単純に長くなり続けたり短くなり続けたりするわけではなく、天気の影響を受けて変動しますので、それらの変動にいちいち開花が対応することがないよう、ある程度の長期的な日照時間の変動を記憶して開花を行うためにこのようなメカニズムが存在しているものと思われます。 


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2019-08-12 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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