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地球生命は孤独かもしれない新シナリオ

宇宙にどのようにして生命が誕生したのか。特に、DNA に遺伝情報を保存して次の世代に伝えるという高度なメカニズムが、非生物的にどのようにして誕生したのか、そのメカニズムを解明することは非常に難しい問題だと考えられます。

生命の起源で有力な説として、RNA ワールドがあります。現生生物は、主に遺伝情報はDNAが担い、代謝などの生物的活性はタンパク質が担っていますが、RNAは一つでその二役の機能を持つため、最初の生命はRNAから始まったとする説です。これは広く支持されている説ですが、そもそも最初に生物的活性を持つRNAがどのように誕生したかは、説明できていません。RNAが遺伝情報を保存するには多数の分子が暗号の規則に従って配列する必要があります。生命活動を可能にするだけの高度な情報をもった長いRNAが偶然できあがる可能性はゼロに等しいといえます。

東京大学の研究者らは、最新の宇宙論に基づいて生命誕生の新たな仮説を打ち立てました。1980年代に提唱されたインフレーション宇宙論は多くの宇宙論研究者に支持されている理論です。天の川銀河に太陽のような星は約一千億個、138億光年の半径内に約10の22乗個あると計算されますが、このような計算によれば、インフレーションで拡がった宇宙には、10の100乗個以上の星があることになります。まず、これだけ大量の星があるなら、そのどこかでは、ランダムな化学反応だけで偶然に生命は誕生できるのではないか、と仮説を立てました。

次に、ランダムな反応で、生命誕生に必要な長さと情報配列を持つRNAが生まれる確率と、宇宙の中の星の数を結びつける方程式をつくりました。RNAとしての機能を持った分子が成立するには、最低でも40個程度の分子が結合する必要があると考え、計算を行うと、そのようなRNAが偶然に生まれるためには、宇宙の星の数は10の40乗個ほど必要であることがわかります。100個の分子が必要であれば、10の180乗個の星が必要となります。これは、私たちが観測可能な星の数である10の22乗個をはるかに超えますが、インフレーション宇宙の大きさを考えれば十分に可能な数字です。つまり、「インフレーション宇宙のどこかで生命が生まれればいい」と考えるなら、ごく普通の化学反応で生命は誕生しうるということです。

この仮説が正しいとすると、ランダムな化学反応という、十分に起こりうると期待できるプロセスだけで、宇宙の中に自然に生命が発生できることを示したことになります。一方でこのシナリオに基づけば、生命を育む惑星は、太陽系や銀河系どころか、我々が観測可能な半径138億光年の宇宙の中で、この地球ただ一つということになります。


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2020-02-24 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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