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腸内細菌叢が糖尿病の発症に与える影響を解明

日本の糖尿病患者数は1千万人以上で、患者数はさらに増加を続けています。糖尿病は発症すると治癒することがなく、重症化による失明や、腎機能の低下が原因で人工透析を受けることになります。人工透析にかかる医療費は1人あたり年間600万円で、日本の総医療費の約2%(8000億円)が糖尿病性腎症の透析に使われています。

糖尿病関連遺伝子の変異と腸内細菌叢の組成の違いが糖尿病の発症に関係があることが最近の研究でわかってきました。腸内細菌叢をコントロールすることによる、新たな糖尿病予防・治療法が開発できる可能性があります。 京都大学、島津製作所らの国際共同研究グループは、腸内細菌が生成した代謝物の4-クレゾールが膵臓のインスリン産生ベータ細胞の増殖と機能の刺激を誘導し、1型および2型糖尿病に対する抑止効果を発揮することを発見しました。

質量分析による腸内細菌代謝物の網羅的・解析手法を開発し、腸内細菌叢によって産生される分子を疾患と関連づけて解析できるようになりました。この技術を用いて、成人糖尿病患者と健康な対照群合わせて138人の血漿を用いた網羅的代謝物測定を実施し、体内に存在する代謝物の量的変化を分析しました。その結果、腸内細菌叢によって生成され特定の食品にも存在する有機化合物である代謝物4-クレゾールの血中濃度が対照群と比較して糖尿病患者で低いことを見出しました。

続いて、糖尿病と肥満のラットおよびマウスを用いて血中のブドウ糖濃度を調節するインスリンを分泌する膵臓ベータ細胞の機能および糖尿病の発症に対する4-クレゾールの効果を調べたところ、4-クレゾールによる刺激で肝臓の肥満と脂肪蓄積の減少、膵臓質量の増加、およびインスリン分泌と膵臓ベータ細胞の増殖の両方が得られることを発見しました。

糖尿病患者は病気の過程でベータ細胞が減少しますが、現在のところ膵臓のベータ細胞の増殖を刺激し、インスリン分泌を回復する機能を改善する治療法はありません。今回得られた結果は、低濃度の4-クレゾールによってベータ細胞に刺激が入り、糖尿病の改善につながる可能性が示されました。加えて腸内細菌によって生成された代謝産物を通じて腸内細菌叢がヒトの健康へ好影響を及ぼすことが確認され、糖尿病、肥満、脂肪肝などに対する新しい治療法の開発が強く期待されました。

今後は、腸内細菌叢の微調整を可能にして特定の細菌の増殖を促進し、その細菌の代謝産物を治療効果の現れる量まで上昇させる治療アプローチを開発する必要があります。


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2020-04-03 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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