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脳画像から「やり抜く力」を予測する


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東京大学、帝京大学、国立精神・神経医療研究センターの共同研究グループは、脳の特定部分の構造から「やり抜く力」の個人差を予測する手法を発見しました。

語学や数学、芸術やスポーツ、健康行動などのさまざまな分野において、一度立てた目標を達成するためには「やり抜く力」が不可欠です。「やり抜く力」は個人差が大きく、目標を達成するまでやり抜くことができる人と、三日坊主になりがちな人がいます。近年、目標達成に関わる脳内メカニズムについての研究が発表され始めていますが、脳の中の何がその人の「やりぬく力」の指標となるのかは知られていませんでした。

研究グループは、まず健康な実験協力ボランティアに、解くまで数十分を要するハノイの塔というパズルに取り組んでもらいました。ハノイの塔は、3本の杭の左端に円盤が円錐形に積み上げてあり、定められた規則 に従って、すべての円盤を右端の杭に移動させるパズルです。数学的にはn枚の円盤を移動させるには最低でも2のn乗マイナス1回の移動が必要な複雑なパズルです。

このパズルを最後までやり抜いたのは、約半数(65人中34人)でした。パズルに取り組んでもらう前に計測した脳のMRIデータを用いて、やり抜いた人と途中であきらめた人を比較すると、脳の中の前頭極という、目標指向性や未来予測などを担っていると考えられている部位にある神経細胞体の集合である灰白質(かいはくしつ)の体積とそこから伸びた軸索が通る白質部分に特徴的な関係があることがわかりました。次に、脳MRIデータから計算したこれら前頭極の構造の特徴を、「やり抜く力」の指標として「やり抜く力」の傾向予測コンピューターモデルを開発しました。このコンピューターモデルによる「やり抜く力」の予測手法を用いて、1ヵ月間毎日30分の運動学習と3ヵ月間毎日1時間の英語学習を、最後までやり抜けそうか否かを予測したところ、80パーセント以上の精度でやり抜く人と挫折する人を正しく予測することができました。

つまり、前頭極の構造が、数十分、1時間、3ヶ月と目標達成にかかる時間にかかわらず、「やり抜く力」の予測に寄与することが明らかになりました。一方で興味深いことに、「やり抜く力」が低いと予測された人であっても、目標を細分化して小さい目標ごとに達成感が得られるような目標達成プログラムを用いると、明らかな前頭極構造の可塑的変化が観察され、最後までやり抜くことができました。

この研究成果は、一人一人の「やりぬく力」を予測し、目標達成までのプログラムを個人ごとに最適な内容にすることによって、多くの人が目標を達成できることを示唆するものです。
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2020-05-19 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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