【再掲】 Chapter-382 大型低温重力波望遠鏡「かぐら」 

2012年3月3日 Chapter-382 大型低温重力波望遠鏡「かぐら」
 http://science-podcast.jp/voynich/382.htm

 重力波はアインシュタインの一般相対性理論からその存在が予言されているものの、いまだに直接検出されていません。この重力波の世界最初の直接検出を目指し、東京大学宇宙線研究所を中心に国立天文台や高エネルギー加速器研究機構 (KEK) などが参加して進めている大型低温重力波望遠鏡 (Large-scale Cryogenic Gravitational wave Telescope : LCGT) 「かぐら」の建設が、いよいよ岐阜県飛騨市神岡町の地下で始まりました。

 神岡鉱山内という極めて地面振動が少なく、温度・湿度の安定な環境に設置するということです。実は地面は、風や打ち寄せる波、地球自身の固有な振動で常に振動しています。それが地下に潜ることにより低減され、神岡鉱山内の振動は地上の1/100まで小さくなっています。このことは重力波検出装置を長時間運転し、観測する上で大きな利点となっています。

 アインシュタインの一般相対性理論によると、質量をもった物体が存在すると、それだけで時空にゆがみができます。さらにその物体が運動をすると、 この時空のゆがみが光速で伝わっていきます。これが重力波です。重力波はあらゆるもの貫通し、減衰しないと考えられています。

「かぐら」による観測成果で科学者たちが期待しているものは、
・アインシュタインの一般相対性理論の検証
・宇宙誕生のより初期の情報の取得、および宇宙重力波背景放射の検出
・非常に強い重力場での物理現象の観察
などです。

 重力波が到来すると、二つの物体の間の距離が変化して見えます。しかも重力波による物体間距離の変化は、直行する二つの方向のうち、片方が伸びた時はもう片方が縮むという変化を繰り返します。その伸縮量は、物体間距離が離れていればいるほど大きくなる性質があります。その距離の変化を検出することが重力波望遠鏡の基本的な仕組みです。

 ところが、問題はその距離の変化がほんのわずかしかでしかないと言うことです。たとえば、銀河系とは違う他の遠い銀河で発生した現象による重力波が地球に与える影響は地球と太陽との間の距離を、わずか水素原子1個分動かす程度なのです。けれど、そのような天体現象が、銀河系の中で発生すればその数十倍程度に大きな時空の変化となるので現在の技術でもその重力波を捕らえることが出来ます。けれど、銀河系の中で検出可能な重力波を発生させるほどの激しい天文現象が起きる確率は数十万年に一回しかないので、遠くの銀河で発生した重力波も検出できるほど高性能な重力波望遠鏡を建設しようとしているのです。

 さて、その重力波の検出方法ですが、重力波は、全てのものを貫通してしまうため、マイクやCCDのような仕組みでは検出できません。けれど、光は重力波によってゆがんだ空間に沿って走る性質があり、それに時空は直行方向で伸縮するという性質を利用して検出することが可能です。このような仕組みの装置を「マイケルソン干渉計」といいます。長さを測るには、同じ光を直行するニ方向に向けて発射し、遠くに置いた鏡で反射させ、戻ってきた光の到達時間を両方で比較します。重力波によって伸びた方向に走った光のほうが帰ってくるのに時間が長くかかるため、伸縮の有無が分かります。ただし、地球上では地球が丸いという理由から、光が走る腕の長さはせいぜい4キロメート ル程度にしか取れません。そのため鏡を二枚用意して、その間を何度も反射して折り返させ光が70キロメートル程度走るようにしています。

 現在世界で最も感度のよい重力波望遠鏡は、数百年に一度の重力波イベントを捉える能力がありますが、世界の重力波観測グループは、感度をさらに10倍改善することで、人類初の重力波の直接検出を行い、さらに感度を向上させることによって1年に数回の重力波イベントの観測による重力波天文学の創生を目指しています。

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