Chapter-533 分子磁石

分子磁石は単分子磁石とも呼ばれますが、1個の分子が磁石として振る舞う数ナノメートルしか大きさの無い非常に小さな磁石です。

分子磁石の研究は材料化学の最先端研究分野の一つで、高密度の磁気記録や超高速な計算機などの開発を可能にする未来の材料だと期待されていますので、世界的な開発競争が展開されています。  

磁石の性質を持つ分子の構造が最初に明らかにされたのは1993年のことです。この分子は12個のマンガン原子を分子内に含んだマンガン12核錯体とばれる分子でした。その後、マンガン12核錯体とは全く異なる構造の分子磁石が次々に発見されました。その中には日本人が発見した分子もあります。  

2004年には鉄原子を持つ分子磁石有機化合物が発見されました。この分子磁石の磁力は203テスラもあります。普通の磁石と単分子磁石の磁力は単純には比較できませんが、肩こりに効くという貼る磁石で0.2テスラくらい、病院の検査装置のMRIで数テスラです。MRIは病室に鉄パイプのベッドを誤って持ち込むとベッドを宙に浮かせて装置の中に吸い込んでしまうほどの磁力ですが、分子磁石は非常に小さいのでそのような恐ろしいことは起きません。

最近、九州大学などの研究チームがフラーレンの分子磁石バージョン、つまり炭素原子で出来たボール状分子の分子磁石を作ることに成功しました。 実は小さな分子で単分子磁石を作ることは比較的簡単なのですが、フラーレンのような複雑で大きな分子で分子磁石を作ろうとすると、分子の内部で磁力が打ち消し合って失われてしまうことが普通なのです。

研究チームは分子の構造や鉄イオン同士の磁気的相互作用を精密に設計し、分子全体として磁力を持つ分子を開発しました。この分子は、コンピューターを使って精密に設計されており、全体として磁性の向きが揃うようになっており、これまでに報告されている1分子が持つことのできる磁力の強さの世界最高値をもつ高性能な分子磁石です。しかも、地球にありふれて存在する、炭素、窒素、酸素、鉄などで構成された分子なのレアメタルなどとは異なり材料はふんだんにあり、価格も安い点も特徴です。



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2015-02-22 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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