Chapter-548 鼓膜の誕生

音を感じ取る時、空気の振動を鼓膜の振動として受け取り、骨から骨へと振動を伝えて神経へ伝達します。それらの音を伝える骨の一つ、中耳骨は哺乳類では3個の骨がつながっていますが、爬虫類-鳥類では1個しかありません。中耳骨は祖先では顎の関節の骨でしたが、進化の過程で劇的な変化を起こし、音を聴くための役目を持ちました。

聴覚というまったく同じ役目を担っている器官の構造がなぜ動物の種類によって全く異なるのでしょうか? その答えのヒントは顎の骨から耳の骨への変化の歴史の違いにあると考えられました。

東京大学を中心とした研究グループはマウスとニワトリを用いて顎の形成に関係する遺伝子を操作する実験を行い、耳の構造にどのような影響が生じるかを調べました。

受精卵から上顎と下顎が形成される過程を司っているのはDlx遺伝子群という一連の遺伝子です。生物をお腹側と背中側の二面に分けたとき、Dlx5/Dlx6遺伝子はお腹側で活性化し下顎を作ります。Dlx5/Dlx6遺伝子が活動していない背中側には上顎ができます。お腹も背中側もどちらでもこの遺伝子が活動しないようにすると、本来下顎になる場所は上顎になります。この実験はマウスでもニワトリでも同じ結果になりました。  

ところが、鼓膜を観察するとマウスでは鼓膜がなくなり、ニワトリでは鼓膜のサイズが大きくなったのです。このことは鼓膜の発生はマウスでは下顎に、ニワトリでは上顎に付随して生じることを示しています。

このことは哺乳類とは虫類・鳥類では鼓膜の進化的由来が異なる、つまり、別々に鼓膜を獲得し現在まで進化を続けたということです。哺乳類では、最初に鼓膜が獲得された位置が下顎側であったために、下顎の骨とそれに関節する骨が鼓膜から内耳の神経に音を伝達する骨として進化したと考えられます。



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2015-06-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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