Chapter-549 脊髄神経回路による制御

あなたの目の前にコーヒーの入ったカップがあると想像してください。
あなたはそのコーヒーカップを右手で取るために手を動かし始めます。その直前の右手の位置は定まっていません。そのため、筋肉をどちらの方向にどれだけの距離動かすかは常に異なるはずです。  

でも、あなたはそれを意識しますか?  
腕の傾きは今のままで前に20センチ伸ばせばいいな、とか、まずは肩の関節を30度回転させて24度腕を下ろして、など考えないはずです。 脳がコーヒーカップをつかめ、という行動の目的を指令したとき、全身のどの部位でどのようにして、状況によって毎回異なる筋肉の動きに変換されているのかは不明でした。  

脊髄にも神経回路があって、たとえば、熱い鍋に触れたときのとっさの行動などは脳からの司令を待たずに脊髄の判断で行動が行われます。そこで国立精神・神経医療研究センターの研究者らは、脊髄神経回路に運動指令を変換する機能の一部が備わっているのではないかと予測して実験を行いました。

華道の剣山のような形をした「多極アレイ電極」という針の1本1本を独立して制御できる特殊な電極があります。これをサルの脊髄に埋め込み、脊髄のあらゆる場所を細かく分割してピンポイントで電気刺激する実験を行いました。

脊髄を電気刺激すると手や指が動きます。刺激する場所を変えるとその動き方も変わるのですが、電気刺激を与えるときのサルのポーズを変えたとき、手の動き方がどのように変化するのを調べました。

実験の結果、予想通り筋肉の電気反応は事前のサルのポーズにより大きく変化することがわかりました。 電気刺激は脳からの指令と同じ意味を持ちますので、サルのポーズをいろいろ変化させた状態で脊髄の同じ部分への電気刺激を行った際、事前のポーズによって手の運動が変化したということは、脊髄で脳からの指令が変換されていると考えることができます。

つまり、私たちが目の前のコーヒーカップをつかむとき、手や指の状態に応じて脊髄が脳からの指令を最適な筋肉の動きに変換していたのです。



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2015-06-18 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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