Chapter-558 カニとエノキタケが煮崩れする温度

2015年7月18日 Chapter-558 カニとエノキタケが煮崩れする温度

エノキタケは広葉樹の枯れ木などの腐った木に生える菌です。スーパーで売っているエノキタケはもやしのように白くて細いですが、野生のものはかさの直径が数センチもあり、茶褐色をしている食用キノコです。

エノキタケを使った料理はいろいろありますが、鍋料理に入れることもよくあるかと思います。エノキタケは鍋で煮ても煮崩れしないので、割と扱いやすい食材です。同様に、カニも鍋に入れても溶けないので便利です。

JAMSTEC海洋研究開発機構の研究者らは高温・高圧状態で観察可能な特殊な光学顕微鏡を使って、エノキタケとカニの甲羅が何度で溶けるかを観察しました。その結果250気圧の高圧下ではカニの甲羅に含まれるキチンが400℃で分解される様子を観察することに成功しました。実はカニの甲羅とエノキタケというのは分子レベルで見るとそっくりで、キチンを主成分とした細胞壁をもつエノキタケの細胞の構造は、200℃以上で煮崩れ始め、最終的に400℃近辺で完全に分解されたそうです。

キチンは植物の細胞壁の主成分であるセルロースに次いで豊富に存在する自然資源なので、これらを資源として有効活用する取り組みが進められています。最近では、キチンと様々な無機材料を高温・高圧下で複合化し、再生医療、ドラッグデリバリー、水処理などに役立つ機能性材料を作り出す研究も行われています。けれど、これらの研究開発を進める上で重要となる、高温・高圧水中でのキチンの安定性に関する化学的知見はほとんどなかったということです。

なお、キチンが、高温・高圧水の中でも高い安定性を示す理由はよく分かってはいません。また、今回実験で観察されたキチンが煮崩れする圧力と温度は深海熱水噴出口とほぼ一致します。深海熱水噴出孔にはハオリムシ(チューブワーム)やゴエモンコシオリエビなど、キチン質からなる構造を持った深海生物が生息していることが知られています。深海に棲む生物が持つ独自の構造機能を応用した技術開発研究にもこのようなデータは役立つものと思われます。



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