Chapter-564 原子の世界をのぞき見る

2015年8月29日 Chapter-564 原子の世界をのぞき見る

化学を勉強するときに誰もがつまずく亀の甲(=ベンゼン環)、つまり、6個の炭素と6個の水素が結合した有機化合物のキホンとも言える六角形のですが、ベンゼン環って本当にあんな形してるの? 誰かが見たというの? と思ったことはありませんか?
分子の構造は原子間力顕微鏡と呼ばれる顕微鏡で見ることができます。

原子間力顕微鏡は観察対象の分子に針を近づけ、針の先端の原子が分子を構成する原子と相互作用するその力を計測することによって観察する方法です。要するに実際に分子に触って、その手触りを記録しているようなものです。初期の原子間力は本当に観察対象に針を接触させてアナログレコードのように情報を読み取っていましたが、この方法では観察の結果表面が破壊されてしまうのでその後、技術改良によって非接触で引力を検知するしくみに変わりました。

IBMが発表したペンタセン分子の画像は紙に普通に書いたペンタセン分子、あまりのそのままだったのでむしろ多くの人が驚きました。これがきっかけになって、世界中の科学者が原子間力顕微鏡を使って様々な分子を可視化して構造決定や化学反応メカニズムの解明などに取り組んでいます。

さて、そういった形で有機化学の研究で多用されている原子間力顕微鏡に先行して開発された顕微鏡として、走査型トンネル顕微鏡というものがあります。走査型トンネル電子顕微鏡も針を使って観察対象物を調べる点は同じなのですが、針に電圧をかけ、観察対象物の表面との間で流れる電流を画像化します。1986年に発明者がノーベル賞を受賞した走査型トンネル顕微鏡も多くの原子を可視化することに成功しました。この方法はシリコンの表面構造など、金属や半導体を原子レベルで観察する目的で大活躍しましたが、電流で観察するという原理上、観察対象物が電気を流さない絶縁体だと電流が発生しませんので観察することができません。

その欠点を補ったのが原子間力顕微鏡でした。ちなみに、走査型トンネル顕微鏡と原子間力顕微鏡を発明したのは同じ人です。走査型トンネル顕微鏡で原子を見ることに成功したのは1983年、原子間力顕微鏡で原子を見ることに成功したのは1995年のことでした。



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