Chapter-576 臓器の電子ブロック

2015年11月21日 Chapter-576 臓器の電子ブロック

電子ブロックはあらかじめ電子部品や配線が組み込まれたブロックを並べることで電子回路を組んで実験が行える電子玩具です。1965年に最初のモデルが発売され、1986年まで様々なモデルが登場しました。最近、生物でも同様のことができるようになってきた、という話題です。  

たとえば医薬品の開発や、殺虫剤の安全性を調べる場合などに、かつては実際の動物を使った実験が一般的に行われていましたが、今は生身の動物の代わりに、動物の細胞を使って実験を行うことも多くなっています。

この場合、細胞をプレートと呼ばれる実験用の容器で培養し、調べたい医薬品や殺虫剤などを添加するのですが、このような方法で細胞を育てると、平面状に細胞は成長して膜のような状態になります。ですが、動物の身体は決して膜のような構造をしていないので、動物の本来の機能を再現できていないことがほとんどでした。そのため、どのような研究を行っても、細胞を使った実験と動物を使った実験の間には越えられない壁が存在していました。

細胞用3Dプリンターを使ったり、ゲルの中で細胞を育てたりする方法が開発され、細胞を立体的に育てることは可能になってきました。ですが、それでもまだ不十分です。というのも、細胞を単に立体的に育てただけで再現できるほど動物の身体は単純ではないからです。おそらくは、膨大な種類の細胞を同時に培養したり、引っ張ったり圧縮したりの物理的な刺激を与えることによって、より動物に近い培養細胞ができると推定されています。

その解決策として数年前から盛んに研究が進められ、いくつかの応用研究も登場しているのが組織・臓器機能再現デバイスである“organ on a chip”です。このシステムは非常に小さな培養システムに複数の細胞を同時に培養して細胞と細胞の相互作用や物理的刺激を再現したもので、たとえば、米国ハーバード大学の研究チームは肺を再現することに成功しましたし、最近では東京大学の研究チームが人間の胎盤の局所構造を再現することに成功しています。

ハーバード大学の肺の細胞システムでは、炎症性の原因になる物質や外来異物である微生物をこのシステムに投入することによって、肺の細胞に免疫細胞が接着する生体応答を再現できることを示しています。他にも腎臓チップや気管チップなどが発明されていて、将来的にはいろいろな臓器をチップ上で再現し、それらを配管で接続することによって、人間の身体の機能をチップで再現できる時代が来るかもしれません。  

これはちょうど、学研の電子ブロックの臓器バージョンと言えますので、いろいろな細胞チップを組み合わせることによって、これまで知られていなかった全く新しいバイオテクノロジーが創造できる可能性もあります。



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