Chapter-582 今年注目する科学と科学技術

食品用3Dプリンター  
 
 今年、食品用3Dプリンターがいよいよ普及期に入る予定で、すでにチョコレートやピザなどを印刷で作ることは実現していますし、NASAが国際宇宙ステーションで食料を印刷で作ることによってメニューのバリエーションを増やすことも検討されています。また、栄養価値が高いものの敬遠されがちな食材である昆虫も凍結乾燥で粉末にし、食品用3Dプリンターで印刷することによって形を変えて食べやすくする工夫も検討されています。  

 現状、もっとも相性が良いのはチョコレートやケーキ類ですので、そう遠くないうちに自宅や電車の中でスマホを使ってケーキ屋さんのアプリでオリジナルのケーキをデザインし、それを注文すればケーキ屋さんの3Dプリンターで希望通りのケーキができあがって購入できるようになるものと思われます。冷蔵ショーケースの中でオンラインで注文されたお客さんの独創的なデザインのケーキが次々に印刷で作られていく様子は見ているだけでも楽しそうです。

お菓子用3Dプリンター

超高速列車ハイパーループ

 ハイパーループは米国の実業家が2013年に構想を発表した次世代交通システムで、2016年にカリフォルニアに120億円をかけて全長8キロメートルの試験コースを建設することが計画されています。 空気を抜いて減圧されたチューブ内を浮上してファンで高速走行するこのシステムの目標最高速度は音速に近い時速1300キロですが、2017年初頭に完成予定の試験コースではまず技術と安全性の検証を行い、2018年には人が乗っての試験走行を開始する計画です。 最終的な運行ターゲットはサンフランシスコ-ロサンゼルス間の高速移動システムです。現在この区間は電車で7時間半、飛行機でも1時間半かかりますが、ハイパーループは35分で結ぶことが可能です。

ハイパーループ

 移動は便利になりますが、その一方で食堂車はなくなり、夜行列車もなくなり、ついには窓も無い筒の中に入って移動する時代になるというのは旅の楽しさという点では少し残念な気もします。

ハイパーループ

エアロゲル

 エアロゲルは、ゲル中に含まれる液体を超臨界乾燥で抜き取って気体を封入した多孔性の物質で、容積の95%が空間なので固体にもかかわらず見た目は煙のようです。この空間は非常に小さいので、その中の気体が振動せず、従ってすさまじく軽量でしかも熱を通さないという特徴があります。  エアロゲル物質が最初に作られたのは1931年とかなり昔のことですが、近年、樹脂や炭素などを材料にして性能が向上したエアロゲルが次々に開発され、NASAの水星探査機「スターダスト」には彗星の尾を構成する補足装置としてエアロゲルが採用されました。

 その他、吸着剤や燃料電池材料などに用途が広がっています。エアロゲル、多孔性液体、多孔性セラミックなど今年は小さな穴の機能を活かした素材がいろいろと登場しそうです。

エアロゲル

低温廃熱の利用技術  

 工場から出る廃熱は重要な熱源ですが、日本は省エネ技術が進んでいますので多くの熱はすでに再利用されていて特に100度を超える高熱は化学反応やボイラーの熱源として有用です。  

 一方で数十度の低温熱源は、用途が限られるためこれまでは海水で冷却するなどして捨てられていました。ですが、それらの使途が「熱電発電」「野菜工場」「バイオレメディエーションを中心とする次世代バイオテクノロジー」の三つの領域で注目されています。熱電発電は熱をそのまま電気に変換する技術です。野菜工場には土地と、水と、電気と、熱が必要ですが、これらが最初から備わっているのが日本の工場地帯です。   

 バイオレメディエーションは微生物等の働きを利用して汚染物質を分解等することによって土壌地下水等の環境汚染の浄化を図る技術のことですが、その技術の延長上で電子機器の廃棄品、いわゆる都市鉱山からレアメタルなどの希少元素を微生物を使って回収する研究が進んでいます。ここで注目されているのが好熱菌、超好熱菌とよばれる特殊な微生物です。好熱菌は50度前後、超好熱菌は80度以上で活発に生育します。このような環境を好む微生物は工場廃熱の温度と非常に相性が良く、また、培養系に雑菌が繁殖することを防ぎ、しかも化学反応は加速して進行するというメリットがあります。

野菜工場

宇宙太陽光発電  

 宇宙太陽光発電は、宇宙空間に巨大な太陽電池パネルを浮かべ、夜も曇りもない宇宙空間で24時間太陽光発電を行う技術です。宇宙空間で得られた電気は地上に無線送電されます。2015年3月にJAXAと三菱電機がマイクロ波無線送電実験に成功し、宇宙太陽光発電を行うに必要な基礎的技術が一通り完成しました。直径2~3キロメートル太陽電池パネルを使えば、原発1基分(100万キロワット)相当の発電ができると試算されています。  

 このような巨大太陽電池の製造についても、レアメタルなどを多く含む小惑星を捕獲して月軌道まで運び、小惑星上に太陽光発電パネル工場を建設することによって、地上から資材を打ち上げることなく実現する方法を検討しています。  ですが、電気仕掛けで野菜を育てることが可能になった今、宇宙で発電して地上に送電するより、人間の方からエネルギー源の近くに住んでしまえ、という発想も出てきそうです。ラリー・ニーヴンの「リングワールド」の世界ですね。
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2016-02-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :
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会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
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