Chapter-604 二度あることは三度あるかどうかを予測するメカニズム

2016年6月4日 
Chapter-604 二度あることは三度あるかどうかを予測するメカニズム

たとえば、ガタン物音がするたびにビクッとする、などという経験は誰もがあると思います。これは、過去に経験した同様のシチュエーションを記憶の中から引っ張り出し、その時には次に何が起きたのかを思い出して、これから何が起きるのかを予想した結果です。つまり、過去にガタンと物音がした後にお化けが出てきた経験があるとすると、その後は似たような物音がするたびに怖い体験がよみがえってくるものです。  

とはいっても、物音がするたびにお化けが出てくるわけではありません。物音がしても何も起きないという経験が積み重なるとそれらの相関が薄れていきます。このことを「随伴性の低下」と呼びます。お化けの例では随伴性が低下すると、物音がしても次第に恐怖を感じなくなります。  

このプロセスは言い換えれば「2度あることは3度あるかどうか?」を脳が判断し、その結果によって身体の反応を変えていると言えますが、そのメカニズムは不明でした。  

理化学研究所などの国際共同研究チームはラットを使ってこのメカニズムの解明に挑みました。ラットを「箱に入れ」、ある音を聴かせた後に電気ショックで痛い目に遭わせることを繰り返すと、ラットは音がすると痛い目に遭うことを覚えます。翌日、ラットに音を聴かせると、嫌な体験を思い出して身体を縮こまらせます。これを繰り返しつつ、たまに音を聴かせずにいきなり電気ショックを与えることによって予想と違う結果を経験させました。すると、やがて音と痛い目の関係に関する記憶が曖昧になり、音に反応しなくなりました。  

このような変化はこれまでも知られていましたが、ラットは音に代わって「箱に入ること」と痛い目を結びつける結果、音との随伴性の低下が起きているのだと考えていました。  

そこで、箱の中に入れられたという情況を理解する脳の海馬領域の機能を止めたラットで同じ実験をしたところ、音との相関に変化がありませんでした。もし、頭の中で箱と音とで混乱しているのであれば、箱のことを覚えられないラットでは音と痛みの記憶が持続するはずです。  

様々な解析の結果、ラットはこのようなシチュエーションにおいて痛みの手がかりや随伴性の不確定性をある数理モデルに近い方法で無意識のうちに計算して自分がどう行動するべきかを導き出している可能性があることが示されました。これまで二度あったことが三度目にあるかどうかを計算で判断しているというこのメカニズムは今まで知られていなかった全く新しいものです。    

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