酸性脳

健康な人の脳は中性に保たれていますが、脳が急激に活動して糖を分解してエネルギーを作り出すと脳が酸性になることがあります。さらに、脳の酸性化がパニック障害など精神疾患の患者で起きている可能性を示すデータも報告されています。 死亡した患者の献体による研究では統合失調症と双極性障害の患者の脳では酸性度の実測値が高く、つまりpHが低いことがわかっています。  

遺伝子を改変して人間のパニック障害を再現したマウスでも同様に脳は酸性化しており、脳が酸性化する原因となる化学物質の乳酸も通常のマウスより高濃度で検出されました。つまり、脳の酸性度と精神疾患は関連している可能性が高いといえます。  

このことを確認するためには生きている人の脳でも酸性度が高まることを確認する必要がありますが、生きている脳のpHを測定するのは難しく、これまでの研究では磁気共鳴分光法でパニック障害患者の乳酸レベルが高いことによって間接的に確認されるに留まっています。

脳の酸性度が高まる原因として、患者の脳の神経活動が通常よりも活発である可能性や、細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアの機能不全である可能性、あるいはその両方が起きている可能性も考えられます。 ですが、それらの結果はいずれも現象を観察しているに過ぎず、脳が酸性状態になることが認知や行動に変化をもたらすのかについては謎です。

細胞環境が中性か酸性かによって神経伝達物質をやり取りする受容体タンパク質の構造が変化し、神経伝達物質を受け取る能力に影響が出ることは想定されますので、起こりうることではありますが、まだ動物実験で脳の酸性度と精神活動を結び付けた明確な報告は出ていません。
参考:日経サイエンス2018年1月号



2018-01-16 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

世界のがんの6%は糖尿病と肥満が原因

世界の糖尿病患者は約4億人、過体重または肥満(BMI 25以上)の人は約20億人と推定されていますが、糖尿病の人、肥満の人はがんになるリスクが普通の人より高いという調査結果があります。

英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らは世界がん統計などの175カ国のデータを詳細に解析し、世界中で2012年に新たにがんを発症した1400万人のうち6%に相当する80万人は糖尿病と肥満が原因であったと発表しました。

特に、欧米の所得が高い国においてはがんの原因の40%が糖尿病と肥満でした。一方でアフリカのマラウイでは0.6%でした。マラウイの平均寿命は64歳、日本ではがんの発症は50歳から70歳にかけて増えていきますので、平均寿命の問題ではなく、先進国特有の不健康な生活習慣ががんの発症に大きな影響を及しているようです。

糖尿病と肥満が原因のがんの割合は今後さらに上昇すると予想されていますが、こういった生活習慣病とがんは共に医療費が高額になる傾向があり、保険の圧迫などを考えるとこの傾向は憂慮すべきものといえます。


2018-01-16 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

砕くと色が濃くなる物質の発見

押したり、叩いたり、外部から機械的刺激を与えると色が変化する材料のことをメカノクロミック材料とよび、センサーやスイッチなどに応用可能な機能性材料です。ですが、これまでのクロミック材料のほとんどは刺激を与えると発光色を変化させる物質がほとんどでした。

東京大学の研究者らは、機械的刺激により見た目の色を大きく変える新たな物質を合成することに成功しました。見た目の色は光の吸収に依存しますので、これまで多く知られていたメカノクロミック材料とは全く異なる性質の物質です。

砕くと色が濃くなる物質の発見

この物質は、フルオレニリデンアクリダンと名付けられた分子です(下図)。このような構造では、炭素同士の二重結合が分子全体の構造を一定に保とうとする一方で、結合部分が一カ所しかないために、折れ曲がったり、ねじれたりの構造変化が起きます。分子が折れ曲っているか、ねじれているかによって電子の配置が変化するために、光の吸収や電流の流れに変化が生じます。

砕くと色が濃くなる物質の発見

この分子は結晶の状態では分子は折れ曲がった状態で固定されて黄色ですが、結晶を砕くと分子の一部にねじれ構造への変化が生じ、濃い緑色に変化します。一般的な結晶では砕くと色が薄くなることが普通ですので、それらとは逆の珍しい現象です。また、この物質では色の変化と同時に物質中の電気の流れやすさも変化することがわかりました。機械的刺激という入力情報を、見た目の色と電気特性の変化という2つの出力情報に変換できるため、色が変わるタッチパネルや光学的および電気的に検出する応力センサーなど、新しいデバイスに応用される機能性材料となることが期待されます。  

発光色ではなく、見た目の色が変わるということは普通の塗料に使えるということですので、さらなる用途の広がりも感じます。


2018-01-16 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

男性脳と女性脳を切り替えるスイッチ

男性と女性では、同じものを見たり聞いたりしても、受け止め方に大きな違いがあります。これは脳の活動に男女差があることを示しています。

脳内で性フェロモンの検出に携わっている細胞な男女で細胞の形態が異なる特殊な細胞です。東北大学の研究グループは、ショウジョウバエの脳回路の雌雄差の研究を通じて、遺伝子のオン・オフを司る一つのタンパク質の働きにより、この脳細胞が突起を持つ男性型と突起のない女性型の形態の違いを生み出すことを突き止めました。 今回発見されたスイッチタンパク質はTRF2と呼ばれ、雌の脳では雄型突起を抑制する遺伝子の読み取りをオンにして、脳細胞を雌型にします。雄の脳では、雄型突起抑制遺伝子をほぼ完全にオフにすることがわかりました。  

このスイッチが発現する仕組み、つまり遺伝子的な男女幸の関係や細胞突起の意味については今後解明しなければならない問題です。


2018-01-16 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

林業用アシストスーツ

住友林業が林業用アシストスーツを発表しました。  

今回発表された「TABITO-03」は傾斜面の歩行を支援する林業用アシストスーツです。足の裏に配置した圧力センサーと各関節の角度センサーで作業者の姿勢を読み取り、動くタイミングに合わせてモータが駆動します。上り坂では足の振り上げと踏み込みをアシストすることで作業者の体を持ち上げ、踏み込む足を楽にします。下り坂では膝の動きにブレーキを掛けることで装着者の膝への負担を軽減します。

その結果、筋力負荷を最大17%軽減できるようになりました。モータは腰の左右に各1個、膝に各1個の計4個使用し、バッテリー駆動時間は3時間です。バッテリー持続時間がもっと長くなれば観光登山などにも用途が広がるかもしれません。

林業用アシストスーツ


2018-01-16 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

医学上の性差

医薬品の多くは体内での分解速度や、効果の出方、副作用の出方が男性と女性では顕著に異なります。 副作用が出る可能性は女性の方が男性よりも50~70%高いとされています。これは身体の大きさ、筋肉に対する脂肪の割合、ホルモンの影響といった多くの要素が異なるためです。

同じ量の薬を服用しても男性と女性では身体の体積が違い、一般に身体の小さい女性では体の体積当たりで考えると相対的に男性よりも多くの薬を服用していることになります。また、脂肪は薬を吸着して蓄える作用がありますので、女性の方がより体内に薬が残存、蓄積しやすくそれが副作用につながることがあります。

医学上の性差

新しい医薬品を研究する過程では多くの実験がネズミなど齧歯類のオスを使って行われます。動物実験で安全性と効果が確認された後に行われる臨床試験でも女性の参加者は非常に少ないため、女性への効果や副作用に関する情報が不足したまま医薬品として市場に出て行くケースが多くあります。ところが、病気には男女差が多いので問題が発生します。  

たとえばがんは総じて女性より男性に多い病気ですが、特に、肺がん、大腸がん、腎臓がん、肝臓がんによる死亡率は男性で高いことがわかっています。ところが、50歳以下ではがんによる死亡率が女性の方が高くなっています。また、がん治療に使われる抗がん剤フルオロウラシルの副作用は男性より女性の方がかなり重篤であることがわかっています。  

骨粗鬆症が女性に多いことはよく知られていますが、白人女性は白人男性より骨粗鬆症になる可能性が2倍高いことがわかっています。さらに不安症やうつ病と診断される患者数も女性は男性より2倍多く、アルツハイマー病の患者も3分の2は女性です。 心臓の疾患も女性と男性で異なります。女性の心不全は左心室の壁が硬く厚くなるために起こることが多いことがわかっています。心電図に見られる異常としては, 男性では不整脈が多く、女性では頻脈が多くなります。頻脈は医薬品の副作用としても見られるもので、ある種の医薬品を投与すると悪化し、命にかかわることもあります。血液凝固は女性でより顕著です。これは出産時の過剰な失血を防ぐように進化してきたためである可能性もあります。  

このように男女間で多くの違いがあるため、本来は医薬品の研究、治療方法の研究では男女別々に効果や副作用が検討されるべきですが、現在市販されている医薬品のほとんどは、当局がそのような解析を求めていなかったため、性差が考慮されず、平均的な患者向けにできています。この問題を受け、近年は個々の患者の遺伝子、環境、ライフスタイルまで考慮した医療を行おうとする試みが進められています。
参考:日経サイエンス 2018年1月号



2018-01-15 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :
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おびおがしかし

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