ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗

冬の花形競技の一つ、アルペンスキー競技ダウンヒルでクラウチング姿勢を取るレーサーが受ける空気抵抗は下腿部が最大であることが筑波大学と民間企業との共同研究でわかりました。
  ※下腿=足の膝から足首までの部分

筑波大学スポーツ流体工学実験棟に設置された低速低乱風洞実験装置による解析結果です。これまでも風洞実験での空気抵抗を計測して競技器具やウエアの開発は行われていましたが、身体の部位ごとの空力特性を詳細に明らかにし、可視化した実験は非常に珍しいものです。

ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗
風洞実験の様子、選手はマネキン

下の図は時速144キロで滑る選手周辺の空気の流れを示しており、下腿部が真っ赤になっているのはこの付近の空気の流れが最も激しい(=最も抵抗が大きい)ことを示しています。
ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗

次の図は選手の身体の周辺の渦を可視化した図です。青色は時計回り、赤色は反時計回りの空気の渦で、色が濃いほど強い渦巻きです。
ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗


2017-03-07 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

宇宙リチウム問題

宇宙は約138億年前に起こった「ビッグバン」でスタートしましたが、その10秒後から20分後にかけて「ビッグバン元素合成」が起こり、水素、ヘリウム、リチウムなどの軽い元素が生成されました。これらがどれくらいの量生成したかを算出することによって宇宙誕生のシナリオを明らかにすることができます。

いろいろなビッグバンのシミュレーションが行われていますが、水素とヘリウムについては現在の予測で観測結果をうまく説明できるものの、リチウムについては同位体の一つであるリチウム7(7Li)が観測値が理論値の約3分の1しかないという重大な不一致が知られています。この不一致を「宇宙リチウム問題」と呼び、この問題がもし解決できなければビッグバン理論が何か未知の問題を抱えていることになります。

リチウム7はベリリウム7が崩壊して生成されたと考えられていますので、これまでの科学者らはベリリウム7がどのくらい初期宇宙で作られたかに着目して研究を続けていました。ですが問題は解決できませんでした。

京都大学の研究者らは発想を転換し、ヘリウム4からベリリウム7を合成する反応が起きる確率を測定し、これまでビッグバン元素合成の理論計算に広く用いられていた推定値が大きすぎる誤りがあることを示しました。

宇宙リチウム問題


2017-03-06 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

やる気スイッチ

慶應義塾大学などの共同研究チームは脳の線条体部位が傷つく事によってしばしばやる気を無くする患者の治療過程の情報を参考にした「やる気」を生み出す仕組みの研究を行いました。その結果、ドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロン(D2-MSN)細胞集団がやる気に大きく関わっている事を発見しました。

実験者が神経毒でD2-MSNの細胞を殺すことができる遺伝子改変マウスを作り出し、課題学習実験をしている途中でD2-MSN細胞を徐々に殺す実験を行いました。 その結果、わずか17%の細胞死によってマウスはやる気を無くしてしまうことが分かりました。


2017-03-05 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

ストレスは心新血管疾患の原因になる

慢性的にストレスに晒されるとホルモン系や自律神経系に変調が現れますが、脳の中でこの変化に大きく関わっているのが扁桃体という領域です。ストレスによって扁桃体が活性化すると心血管疾患の発症につながることが米国マサチューセッツ総合病院が293人の症例解析研究で明らかになりました。このことを逆に利用し、扁桃体の活性化の増大を心血管疾患発症の予兆として予防医療に活用できる可能性もあります。扁桃体の活性化の状態はPET/CT検査で画像診断することができます。  

また脳の特定の部位とそこか離れた場所で心血管疾患が発症する仕組みについては、扁桃体の活性化によって骨髄の活性、動脈の炎症が起きそこから間接的に心血管疾患発症するらしい事もわかりました。

ストレスによって動脈硬化やそこから心血管疾患が発症する事がわかってもなかなか今の世の中ストレス無しで生活する事は難しいですよね・・・また、画像診断のような大がかりな検査ではなくてもっと簡単な検査方法も見つけて欲しいところです。血液中のC反応性タンパク質というモノが扁桃体の活性化と関係しているらしいので、血液検査で容易に予測できれば良いな、と思いますが・・・


2017-03-04 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

血液検査で自殺を未然に防げるか?

うつ病は、気分の落ち込み、意欲の低下に加えて、罪悪感、自殺願望など様々な症状を来たす病気です。自殺に至る危険性が高いため、事前の察知は重要ですが、これまでは精神科医による診察・面接により行う方法が一般的でした。  

今回、九州大学病院など複数病院を受診した患者を対象として、専門家面接による診断と患者自身が回答した問診票、さらに質量分析-メタボローム解析と呼ばれる方法を用いて患者の血液の100種類以上の成分解析を行いました。その結果、3-ヒドロキシ酪酸、ベタインなど20種類の物質が抑うつ重症度に関連する血中成分であることが確認されました。 この相関を元に血液分析結果から自殺願望の重篤度を予測するアルゴリズムの開発にも成功し、この解析手法を用いれば、精神科以外の医療機関や健康診断でうつ状態の客観的評価が出来るようになるものと思われます。  

そう遠くない将来、交通系カードなどにそのような診断機能がついて、改札口をタッチするときに血液の流れ、汗の成分と量、脈拍などから総合判定して「この人は飛び込み自殺しそう」といった予測を瞬時に行い、駅員さんに自動通報する装置などもできるかもしれません。駅のホームを歩くたびに駅員さんがついてくるんだけど・・・と思ったら病院で見てもらった方がいいサインになるかもしれないですね。
2017-03-02 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

インドが一機のロケットで104基の人工衛星打上げに成功

インド宇宙研究機関(ISRO)が現地時間の2017年2月15日に一機のロケットで104基の人工衛星を打上げ、世界記録を達成しました。地球観測衛星「カルトサット2」の相乗り衛星として欧米から委託を受けた重量5キロ程度の小型衛星を大量に放出したものです。  

インドは年間1000億円程度の宇宙開発予算の中で火星探査機を火星周回軌道に投入するなど、近年の技術進歩が著しい国です。  

なお、カルトサット2はインド国内の都市や農耕地を写真撮影し、都市開発や農業のIT化などに必要なデータを収集します。とはいっても、インドは貧困層を2億人以上かかえており、宇宙開発への風当たりが強い事実もあります。
2017-03-01 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

すでに検討中の方法でアルツハイマーは回復できるかもしれない

アルツハイマー病患者の脳ではアミロイドベータタンパク質(Aβ)が集まってAβオリゴマーと名付けられたかたまりを作って神経細胞を損傷させていることがわかっていて、この初期段階のAβの異常化がアルツハイマー病の直接の引き金だと考えられています。

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターはAβオリゴマーの除去で神経細胞の損傷が回復するかもしれないことを細胞動物で確認しました。 実験では、神経細胞を2つのグループに分けてそれぞれAβオリゴマーで処理して損傷させた後、一つのグループは引続きAβ処理を行い、もう一つのグループはAβを除去する処理を行いました。その結果、Aβ処理を続けた細胞はさらに神経細胞の損傷が進行し、除去した細胞は損傷が処理前の段階まで回復しました。

アルツハイマー病の治療においてはAβは治療薬開発の有望なターゲットと以前から考えられていましたが、ほとんどすべての凝集阻害作用をもつ医薬品効果に治療効果が見られないことから医薬品開発のターゲットとして間違っているのではないか、という考え方も広がっていました。今回の方法でアルツハイマーが回復するのであれば、ひきつづきAβ関連医薬品、特にAβオリゴマー抗体療法や、Aβ産生酵素BACE1阻害薬の研究をする価値が大きく向上したといえます。

2017-02-27 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗

次回韓国での冬のオリンピックまですでに1年を切り、出場権をかけた様々な協議が繰り広げられていますが、冬の花形競技の一つ、アルペンスキー競技ダウンヒルでクラウチング姿勢を取るレーサーが受ける空気抵抗は下腿部が最大であることが筑波大学と民間企業との共同研究でわかりました。
※下腿=足の膝から足首までの部分

筑波大学スポーツ流体工学実験棟に設置された低速低乱風洞実験装置による解析結果です。これまでも風洞実験での空気抵抗を計測して競技器具やウエアの開発は行われていましたが、、身体の部位ごとの空力特性を詳細に明らかにし、可視化した実験は非常に珍しいものです。

風洞実験の様子、選手はマネキンです。
ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗

時速144キロで滑る選手周辺の空気の流れ、下腿部が真っ赤になっているのはこの付近の空気の流れが最も激しい(=最も抵抗が大きい)ことを示しています。
ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗

選手の身体の周辺の渦を可視化したVG。青色は時計回り、赤色は反時計回りの空気の渦で色が濃いほど強い渦巻きです。なんだかものすごく速そうな絵です。
ダウンヒルの選手は下腿部で最大抵抗


2017-02-25 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

マリアナに新たな熱水噴出孔を発見

深海熱水噴出口とは海底火山によって作り出された数百度の海水を吹き出す地形のことです。海底の地下水が海底火山のマグマで熱せられて、地底のミネラルや火山性の硫黄などを豊富に含んで吹き出しています。  

深海熱水噴出口が見られるのは深さ4000メートル以上の深海です。本来このような深いところには太陽の光も届かず、栄養分も少ないと思われていたため、かつては深海底は死の世界だと思われていました。ところが深海熱水噴出口の周辺は地底から吹き出すミネラルなどの栄養が豊富で熱源もあって暖かいため、地上では決して見られない、地上の生態系とは完全に独立した珍しい生態系が存在しています。

マリアナに新たな熱水噴出孔を発見


硫黄を使って生きる微生物を食物連鎖のスタート地点にして生態系が熱水噴出口の周辺だけで完結し、カニやエビ、貝類のような生き物がウジャウジャと集まった世界を作り出しています。  

深海熱水噴出口はすでにいくつか発見されて、かなり調査も進んでいるのですが、広い海に比べるとその数は限られますので、今でも新しい深海熱水噴出口が見つかることはめったにありません。ところが最近、日本とパプアニューギニアの間のマリアナトラフとよばれる、海溝ほど深くはない緩やかな斜面が続く溝のような地形で新たな深海熱水噴出口が3つも同時に発見されました。  

この熱水噴出口を発見したのは米カリフォルニア州のシュミット海洋研究所が開発した新型の遠隔操作無人探査機(ROV)「スバスチアン」(下写真)です。

マリアナに新たな熱水噴出孔を発見

スバスチアンは 次写真)とケーブル接続されていて、数週間海底に潜ったまま観測を続け、リアルタイムでカメラの映像を母船に届けると共に、海底のサンプルの採取をして持ち帰ることが出来ます。  

最近、土星の衛星エンケラドゥス、タイタンなどには表面を覆う氷の下に液体の海があり、生物がいる可能性が示されていますが、もしこれらの衛星に生物がいるとするならば地球の深海熱水噴出口のような生態系ではないか、とも想像されています。

洋上の調査母船「ファルコー」


2017-02-24 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

古代遺跡探査衛星と宇宙考古学

人工衛星を使って地上の古代遺跡を探査する学問を宇宙考古学と呼びます。最近打ち上げられたひまわり9号のような赤外線で地表を撮影できる人工衛星のデータをコンピューターで自動処理して遺跡を見つけ出します。すでにエジプトやローマで未発見だったピラミッドや集落を多数発見することに成功しています。  

地球以外の天体の表面に車輪で移動する探査機を下ろすことは一般的になってきましたし、月であれば今年は民間による月探査コンテストも行われますが、逆転の発想で古代遺跡探査衛星と探査車で、上空から人の近づけない古代遺跡を発見し、そこに飛行機で探査車を下ろす、などと行った新しい時代の宇宙考古学ももうすぐそこかも知れません。


2017-02-22 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :
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おびおがしかし

Author:おびおがしかし
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
苦手な食べ物:シーチキン、レバー、昆虫系
Web:ヴォイニッチの科学書
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