太陽は安定している

太陽の活動は約11年の周期で活発な時期と静かな時期を繰り返しています。半世紀以上にわたる太陽観測のデータから、太陽の活動度は極大期では周期ごとに大きく変わるのに対し、極小期では過去5回ほぼ同じだったことを日本の国立天文台が発表しました。

今回使用されたデータは 太陽から放射される電波のうち、特にマイクロ波とよばれるデータで、太陽の活動と強度が相関することがわかっています。 極小期のマイクロ波スペクトルが50年以上にわたって変化がないということは、太陽周期が異なっても極小期の活動は全く変わらないことを示しています。つまり、太陽が極大期にどれほど荒れ狂っても、極小期が来れば前の太陽周期の静かな時期と同じ状態にレベルが初期化され、太陽は非常に安定しているということです。

太陽は安定している
上のグラフは太陽の活動の上下をいろいろなエネルギー領域で調べたものです。グラフが下に下がるたびに、同じ位置まで下がって活動レベルがリセットされていることがわかります。

太陽は安定している

とはいっても、こんなにあらぶっている太陽の写真を見ると、太陽がちょっと心変わりして、すこし活発に活動しただけで地球はイチコロだってことがわかります・・・。


2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

医療用深層学習アルゴリズムの研究は重要

患者の病状の診断は様々なデータの解析によって行われますので、AIの得意領域ともいえます。AIによる画像解析で医師では見つけにくい疾患の発見例も続いており、すでにAIは医師の支援になくてはならない存在ですが、今回は危険な肺疾患の診断に成功しました。

スタンフォード大学研究チームが開発した診断システム「CheXNet」の成果を発表しました。このシステムでは10万枚以上の胸部X線画像のデータをもとに患者を診断します。同じデータを使った診断を4人の放射線科医とCheXNetが行ったところ、CheXNetは肺炎の発見において放射線科医より優れていました。 2017年10月に日本の厚労省が発表したデータでは日本人における死因別死亡数で肺炎は第3位、9.4パーセントと悪性新生物(がん)、心疾患についで死者数の多い疾患です。

現在のシステムは医師の診断結果を学習して画像処理で診断を行っていますが、深層学習アルゴリズムの開発も進んでおり、今後は医師による診断情報の無いデータを使って、医師に代わって診断を行うことも可能になりそうです。

診断をAIに任せれば、お医者様は治療や回診に時間をその分割り振ることができるので素晴らしいことだと思います。骨折した足の定期検診に先日行ったのですが、2時間待ち時間があって、先生はレントゲン写真を見て「まだくっついてませんね」の一言でした。レントゲンを自動で撮影して、レントゲンビッグデータと個別の患者のレントゲン写真の経時変化についての画像の相関で治療度合いを出すのとか、すごくAIは得意そうですよね。


2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

恐竜が絶滅したのは13%の不運だった

東北大学と気象庁気象研究所は、約6600万年前に起きた恐竜絶滅の原因は巨大隕石の衝突で発生した大量のすすが長期間大気を漂い続けたためだとする分析結果をまとめました。地下に油田地帯に似た生物の堆積層がある場所に隕石が衝突すると大量のすすが発生しますが、そのような場所は地球全体の13%しかありません。衝突場所が数百キロメートルずれていたら、すすの発生は少なくなり、恐竜は絶滅していなかったかもしれません。

恐竜の絶滅は直径約9キロメートルの巨大隕石が現在のメキシコ・ユカタン半島に衝突、その後に発生した地球規模の気候変動が原因と考えられています。これによって当時大繁栄していたアンモナイトや翼竜など生物の75%以上が絶滅しました。 衝突によって舞い上がったちりが日光を遮って寒冷化し、植物が枯れて食物連鎖のバランスが崩れたためだとの説が有力視されていましたが、ちりは重いため、日光を遮った期間は数カ月程度で、大量の絶滅は起こりえず、すすであれば微小で軽いため長期間成層圏を漂い、日光を遮り続けたであろうと考えられます。

ユカタン半島は世界有数の油田地帯で、衝突によって15億トンのすすが発生して成層圏にまで到達し、地球の気温を16度も下げたと試算されます。


2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ひとり飲みは離婚に通じる

最近、あらゆるジャンルのお店で一人でお酒を飲んで過ごす「ひとり飲み」が増えています。ひとり飲みの理由は様々です。単身赴任で相手がいない場合、ストレスを自力で解決しようとする場合、パートナーがお酒を飲まない場合、そもそも一人が好きな場合、などなど・・・ プレーリーハタネズミは北米の草地にすむ小動物ですが、一夫一婦制でアルコールが好きな動物です。人間の体重換算で1日にワイン15本分のアルコールを飲むこともできます。

ひとり飲みは離婚に通じる

今回は人間のカップルの一方だけが酒好きな場合に起きる夫婦関係の悪化をプレーリーハタネズミで研究しました。

夫婦の両方が大酒飲みの家庭ではさほど問題は起きないのですが、夫婦のうちひとりだけが酒を大量に飲み、もう一方は飲まない家庭ではしばしば家庭の崩壊が起きます。 米国オレゴン健康科学大学の研究者らは100匹を超えるつがいのプレーリーハタネズミに酒を与えて酒を飲む家庭を再現しました。  

その結果、オスだけに酒を飲ませたペアではオスが本来のパートナーと一緒に過ごす時間が短くなることがわかりました。そのオスの脳の様子を調べたところ、愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが反応する領域に異常が発生していることがわかりました。オキシトシンはパートナーとの結び付きを強めるホルモンです。つまり、今回の実験では夫婦のうち一方だけが酒を飲むと、夫婦関係を悪化させる生物学的な基盤がある可能性を示しています。

ただ、この研究結果がそのまま人間に適用できない問題点は、「プレーリーハタネズミに自主的にパートナーを作らせてすぐに実験した」という点ではないかと思われます。人間におけるパートナーとの関係も最初は自主的だったものの、年月が経つうちに「社会的責任」だとか「ただなんとなく」だとか「別れるのがめんどくさいから」といった理由で関係が続くケースも少なからずあるはずです。その場合に、この研究結果が当てはまるでしょうか・・・。

プレーリーハタネズミにパートナーを自主的に作らせ、そのまま寿命の半分くらいの年月をムリヤリ一緒に過ごさせた後に同様の実験をしたケースを対照群として準備するべきだ・・・と思われる、独り飲みは気が楽だ派酒豪の紳士淑女の皆さんも多いはずです(?)



2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第682回 JWSTの進捗

NASA、ヨーロッパ宇宙機関、カナダ宇宙庁による国際プロジェクトでハッブル宇宙望遠鏡(HST)の後継機であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の開発が進んでいます。

ヴォイニッチの科学書 第682回 JWSTの進捗

当初、2011年打上げ予定で開発が進められていましたが、開発の遅れが相次ぎ、開発コストも4倍以上となり、NASAの他のチームからは開発中止を要望する声が上がるほどでした。2016年11月に大型の折りたたみ式反射鏡が完成し、現在は2019年3~6月打上げ予定で開発が進んでいます。

JWSTの反射鏡は口径約6.5mでハッブル宇宙望遠鏡(2.4m)の2.5倍、光を受け取る面積ではハッブルの7倍にもなり、ハッブルよりも弱い光を観測することができます。 反射鏡は18枚の六角形の鏡に分割されており、打ち上げ後に宇宙空間で展開されます。上の写真は展開状態です。

JWSTが観測するのは赤外線です。宇宙誕生初期の銀河や星、太陽系外惑星を観測するのに適した設計になっています。赤外線による観測は装置の温度が高まるとノイズが大きくなってしまうので、反射鏡を低温に維持するための装備を持ち、さらに地球が放出する熱の影響を受けず、地球の日陰で太陽光が遮られるラグランジュ点(L2)に配置されます。

今回新たにJWST打上げ直後の初期観測プログラムの観測ターゲットが発表されました。それらは生まれたての星の周囲で形成される有機分子探し、銀河の中心に潜む超大質量ブラックホールの質量の計測、初期宇宙に存在するこの宇宙で最も初期の形を残す遙か彼方の銀河を捜すことなどです。

ヴォイニッチの科学書 第682回 JWSTの進捗

地上の大型反射望遠鏡は鏡の精度を維持するために、鏡の裏面に鏡の位置や曲がりを物理的に(鏡を変形させて)補正するための装置が付いていますが、JWSTはそのような装置はなく、軌道上に打ち上げて鏡を展開した時点で精度が出るのだそうです。だいじょうぶなんですかね・・・


2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

e-ラバー

豊田合成が筋肉のように動く新素材を開発しました。2020年実用化を目指します。  

e-ラバーと名付けられたこの新素材は電気を通す特殊な誘電ゴムを伸び縮みする電極で挟んで作製し、電気を流すと電極同士が近づこうとしてゴムが横に伸びることによって筋肉のように動きます。今後はe-ラバーを何層にも積み重ねて筋力を高める研究に取り組み、2センチ程度積層することができれば、医療用の手術訓練シミュレーターやロボットの動力源として使用が可能だと思われます。


2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

中国版GPS精度向上計画の展開が速い

日本では数センチの精度でナビゲーションが可能な準天頂衛星みちびき4号機の打上げに成功し、独自の衛星システムが本格運用される段階に来ましたが、中国も産官学軍が一体で開発してきた独自の衛星測位システム「北斗衛星導航系統」の測位精度を従来の2~3倍に引き上げた新システムの打上げを開始します。北斗3号と呼ばれる次世代の衛星シリーズを2020年に35基体制として世界全体をカバーしたい計画です。  

まずは北斗3号衛星シリーズを2018年には18基体制として、中国と欧州を結ぶ陸路と海路の広域経済圏構想「一帯一路」に衛星測位サービスを提供する予定です。 なお、北斗シリーズは1994年に軍が防空システムとして開発に着手し、2000年に初号機の打上げと運用開始、2011年末に民間に開放されました。現在は北斗2号シリーズが23基体制で主に中国と西太平洋をカバーしていますが、位置精度は10メートル前後のため、GPS同等の2.5メートルクラスの高めた北斗3号シリーズの開発を進めていました。  

現在は精度不足のため、中国国内でも北斗の利用比率は約3割にとどまり、米国のGPSが主に使用されています。それにしても、すでに運用している北斗2号シリーズ23基をわずか1年強で新型18基体制に切り替える中国の開発力のすごさが伝わって着る話題です。


2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

宇宙線ミューオンラジオグラフィ

ミューオンは、1キロメートルの岩盤でもすり抜ける極めて高い透過力を持つ素粒子で、大気上層部で生成され、1平方センチメートルあたり1分間に約1個の割合で、常に地上に降り注いでいます。

物体の内部を調べるにはX線がよく用いられます。病院でのレントゲン撮影も空港での手荷物検査もすべてX線です。ですが、X線よりもミューオンの方が透過性が高いため、X線では測定不可能な巨大な物体でも、ミューオンであれば対象物を通過してくるミューオンを計測し、レントゲンのような写真を撮影することができます。

宇宙線ミューオンラジオグラフィと呼ばれるこの手法を使って名古屋大学とNHKのグループは、4500年前に建造されたクフ王のピラミッドの中心部に、これまでに発見されていない未知の巨大な空間を発見しました。

宇宙線ミューオンラジオグラフィ
クフ王のピラミッド(北側から撮影)  

今回見つかった空間は、クフ王のピラミッド中心部に位置する女王の間内部にミューオンの検出器を設置し、ピラミッドの上空からそこに到達した1100万個のミューオンのエネルギーを画像化して見つかったものです。大回廊の上にあるその空間の長さは30メートル以上で、規模は大回廊に匹敵します。今後は、発見された新空間に近い場所に検出器を設置することで、新空間の詳細な構造を特定するための観測を継続していく計画です。

宇宙線ミューオンラジオグラフィ
クフ王のピラミッドの断面図と今回の解析に用いた検出器を設置した場所。 黄色で示す範囲(天頂方向から±45度)を観測して発見しました。

宇宙線ミューオンラジオグラフィ

将来は宇宙線ミューオンラジオグラフィでカップラーメンの出来具合がわかるようになる?
宇宙線ミューオンラジオグラフィ



2017-12-17 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第681回 ジェネラリストとスペシャリストはどちらが有利なのか?

人間社会において、ジェネラリストとスペシャリストの適材適所はしばしば問題となりますが、自然界全般を見ても、様々な環境に対応できるジェネラリスト戦略をとる生物がいる一方で、特定の環境に特化したスペシャリスト戦略をとる生物もいます。ですが、どちらの戦略が有利なのか? なぜ2つの戦略をとる生物が共存するのか? といった根本的な疑問はナゾのままです。

東京大学の研究者らは61種類の多様な環境から採取した微生物群集を調べ、ジェネラリストは種の多様性を生み出す力が強く、絶滅への耐性を持ち、子孫を繁栄させる上で有利であることを明らかにしました。

一方で、ジェネラリストは進化の過程で容易にスペシャリストへと変わる傾向があることがわかりました。その結果として、ジェネラリストよりも生き残るのに不利なスペシャリストが常に共存していたのです。

近年の生物学では、生物のゲノムの膨大なデータ(バイオビッグデータ)に基づいた生物情報科学的解析を行うことが可能になってきました。 今回の研究は61種類の環境から集めてきた微生物を含む試料について、微生物由来の遺伝子を解析し、それぞれの環境にどのような微生物が存在するかを網羅したカタログを作成しました。続いて、61種類の環境を11種類の環境に再分類し、そのうち1種類にしか現れない微生物をスペシャリスト、5種類以上に現れる微生物をジェネラリストと定義し、解析しました。  

その結果、微生物にもスペシャリストとジェネラリストがいること、スペシャリストの方が量は圧倒的に多いこと、を確認しました。微生物の進化系統樹を考慮した進化解析を行ったところ、ジェネラリストは多く絶滅するもののそれを上回る亜種を生み出すことによって結果として絶滅の圧力に耐える力が強く、スペシャリストは絶滅率が高いことがわかりました。つまり種の保存としてはジェネラリストの方が明らかに有利ということです。

では、なぜ微生物はジェネラリストばかりにならないのか、について検討したところ、ジェネラリストが進化の過程でスペシャリストに変わる速さの方が、スペシャリストがジェネラリストに変わる速さよりも速いことが推定されました。このことは、ジェネラリストは有利ではあるけれども「ジェネラリストであり続ける」ことが難しいことを意味しています。それぞれの環境における厳しい生存競争に勝つために、ジェネラリストはスペシャリストにならざるを得ないのかもしれません。

ヴォイニッチの科学書 第681回 ジェネラリストとスペシャリストはどちらが有利なのか?
食品界のジェネラリストポテトサラダと食品界のスペシャリスト辛子明太子のハーモニー


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


2017-12-16 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!

金沢大学の研究者らが東京大学と共同で、CRISPR-Cas9 という遺伝子編集方法の過程において、編集の第一段階としてDNAの切断が行われるシーンを動画撮影することに成功しました。日本で開発された世界最速の原子間力顕微鏡を用いて初めて実現できた成果です。

CRISPR-Cas9 では酵素を使ってDNAの狙った部位を切断し、別の遺伝子を組み込むなどして遺伝子の編集をおこなう技術です。この方法は基礎研究から臨床応用に至る多岐にわたる生命科学分野において広く利用されています。 下の動画において、28秒あたりのシーンで白い矢印が画面に出ますが、矢印の指した先でDNAが切断されていることがわかります。

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!

CRISPR-Cas9がDNAを切断する瞬間が見えた!
http://obio.blog.fc2.com/blog-entry-1289.html

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おびおがしかし

Author:おびおがしかし
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
苦手な食べ物:シーチキン、レバー、昆虫系
Web:ヴォイニッチの科学書
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