ヴォイニッチの科学書 第706回 ビール製造廃棄物で発電

固体酸化物形(がた)燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell)はトヨタの水素で走る自動車ミライに搭載されているような、発電装置の一種です。燃料電池は電気化学反応によって燃料を直接電力に変換することが可能で、非常に効率の高い発電システムです。その中で、電解質にセラミックスなどの固体酸化物を用いるのが「固体酸化物形燃料電池(SOFC)」です。SOFCは燃料電池の中でも特に発電効率が高く、次世代燃料電池の本命と考えられています。

九州大学はアサヒビールとの共同研究により、ビール工場の製造工程で生成する多量のバイオメタンガス(以下、バイオガス)を利用したSOFCによる長時間連続発電に成功しました。

現在稼働しているSOFC のほとんどは、水素や天然ガスを燃料としており、これらは化石燃料を原料に工場で加工して製造されるため、CO2 排出量削減への効果は限定的です。九州大学とアサヒビールは、工場の排水を処理する過程で発生するバイオガスを用いてSOFC発電を行えば、さらなるCO2削減効果があると考え研究を続けてきました。

問題点はバイオガスは都市ガスのようにきれいではなく、雑多なガス成分を大量に含むことでした。雑多な成分がSOFC による発電を阻害し、発電効率が低下してしまいます。

そこで研究チームは、新たに開発したバイオ燃料電池発電装置に多様な燃料の使用が可能な三菱日立パワーシステムズ社製の発電ユニットを組み込み、アサヒビールが開発した不純物除去装置を使用して発電を試みたところ、2,000 時間を超えて安定に稼働が続いており、廃棄物を燃料とする実用的な発電システムになっていることが確認できました。

このシステムはビール工場に限らず幅広い食品工場や、工場の微生物を使った排水処理設備に組み込むことができ、排水由来のバイオガスをSOFCで利用することが可能となり、CO2 排出量削減にも貢献できる技術であるといえます。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


2018-06-13 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第705回 歯に貼るだけで食べた物が分かる

米国タフツ大学の研究者らが、歯に貼り付けるだけで食べた物や飲んだ物を識別するセンサーチップを搭載した超小型のウェアラブルデバイスを開発しました。歯の表面に装着したセンサーが摂取した食物や飲料に含まれるグルコースや塩分、アルコールの情報をスマホなどに送信します。  

センサーは2mm四方の超小型で、しなやかな素材でできているため、歯の表面にぴったりとフィットします。中心部には栄養素やさまざまな化学物質と結合するフィルム状のバイオセンサーがあり、これをアンテナの役目をする金のフィルムで挟んでいます。

ヴォイニッチの科学書 第705回 歯に貼るだけで食べた物が分かる

将来的にはより幅広い種類の栄養素や化学物質をターゲットにできるよう改造することも可能です。また、歯だけでなく、皮膚など他の身体の部位に装着し、その部位における情報を読み取ることも可能と思われます。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


2018-06-12 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第705回 世界一辛いトウガラシで激しい頭痛

トウガラシを食べるコンテストに参加した男性が、世界で最も辛いとされている品種を食べた後に「雷鳴頭痛」と呼ばれる激しい頭痛に苦しんだとする米バセット・メディカルセンターの報告書が学術雑誌に公表されました。CT検査では脳動脈の一部の攣縮(れんしゅく)、つまり痙攣性の収縮が認められ、可逆性脳血管攣縮症候群(RCSV)と診断されたということです。  

診断されたのは、34歳男性で、ニューヨーク州で開かれたトウガラシを食べるコンテストで、世界で最も辛いトウガラシとされる「キャロライナ・リーパー」(次写真)という種類のトウガラシを食べたということです。

ヴォイニッチの科学書 第705回 世界一辛いトウガラシで激しい頭痛

その直後に男性は嘔吐を繰り返し、さらに数日間にわたって激しい首の痛みと頭痛が数秒間持続する症状が繰り返しみられたものの、5週間後のCT検査では脳動脈が正常に戻っていたということです。この症状はマリファナなどで発症することは知られていましたが、カプサイシンにもその危険性があることがわかりました。発症すると対症療法しかありませんので注意が必要です。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


2018-06-11 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第705回 脳の大きさが環境適応力を決めた

私たち現生人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタール人は、約4万年前のヨーロッパで、約5000 年もの長い間、共存し、一部、交配もしていたことも分かっています。同じ環境で一時期は一緒に暮らしていながらも、その後、ネアンデルタール人は絶滅し、ホモ・サピエンスが生き残りました。ネアンデルタール人が絶滅した理由は ・地球環境の変化に対応できなかった ・混血で遺伝子を維持できなかった など、複数の原因が複雑に関与していると考えられています。

今回、慶応義塾大学と名古屋大学の研究グループは、ホモ・サピエンスとネアンデルタールの地球環境変化への適応力の違いの原因は脳の形の違いによるものではないかと考え、脳の形を化石から復元しました。

まず、ネアンデルタール人と初期ホモ・サピエンス、それぞれの頭の化石をCT スキャンで3次元データに変換し、頭の骨をコンピューターの中で復元し、次に、現代人の頭部 MRI 画像を元に、骨の形から脳の形を類推する数式を導き出しました。この数式にコンピューター内で復元したネアンデルタール人とホモ・サピエンスの脳の骨を当てはめれば、絶滅した人類の脳の形を予測することができます。

それらを比較した結果、早期ホモ・サピエンスの方がネアンデルタール人より小脳が大きいことがわかりました。 小脳は運動機能に重要な役割を持ちますが、近年の研究により認知機能との関わりも示され、脳全体の大きさに対する小脳の大きさが大きいほど、言語や理解といった高度な認知的・社会的能力が高いことがわかっています。 ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの脳形態の違いが、環境の変化を正しく認識し、的確に判断しながら環境に適応する能力差を生み、それに劣ったネアンデルタール人が絶滅に向かった可能性があります。

下の写真は再現された脳です。現代人(ホモ・サピエンス)が左、ネアンデルタール人が右です。
ヴォイニッチの科学書 第705回 脳の大きさが環境適応力を決めた


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


2018-06-10 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第705回 プラスチックを「食べる」酵素を作成

世界各国でプラスチック製食器の廃止の動きが出始めるなど、近年、プラスチックによる海洋汚染が新たな地球環境の危機として注目を集めています。処分に困るプラスチックごみを強力に分解する酵素を英ポーツマス大学の研究者らが見つけました。今回発見された新たな酵素はペットボトルをはじめ、食品容器、服の繊維などの製造に用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)を原料レベルにまで分解できるので、環境汚染の防止はもちろん、プラスチックのリサイクルにも革命を起こしそうです。  

ポーツマス大学の研究者らはもともと、日本のごみリサイクル場で発見された、プラスチックを分解する酵素の構造を調べていました。酵素を加工して分析装置で性質を調べていると、ある時、酵素の活性が急激に上昇する、つまり、プラスチックの分解能力が急激に高くなることを発見しました。それに興味を持った研究者らがさらに詳細に性質を調べたところ、この酵素は、PET代替プラスチックであるポリエチレンフランジカルボキシレート(PEF)を分解することも確認されました。この酵素を使えばプラスチックを元の素材に戻して持続的にリサイクルする方法を確立できる可能性があります。


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


2018-06-09 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

ヴォイニッチの科学書 第705回 系外惑星探索宇宙望遠鏡(TESS)

今年、2018年4月18日にNASAが太陽系外惑星探査を目的としたトランジット系外惑星探索宇宙望遠鏡(TESS)をスペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げました。TESSは合計67メガピクセルとなる、4つの広角望遠鏡とCCDイメージセンサ検出器を搭載した高性能カメラを4台合体させたような衛星です。

ヴォイニッチの科学書 第705回 系外惑星探索宇宙望遠鏡(TESS)

TESSは地球をほぼ南北に周回する人工衛星ですが、一般的な北極と南極を結ぶ極軌道ではなく、横に細長く傾いた楕円軌道を描き、最も遠い場所では23万キロまで地球から離れます。仮に同じ距離を月に向かって行ったとすると、月までの3分の2まで届く距離です。下の図はTESSの楕円軌道(青線)です。左側の青い天体が地球、白い軌道は月です。

ヴォイニッチの科学書 第705回 系外惑星探索宇宙望遠鏡(TESS)

太陽系外惑星を観測する宇宙望遠鏡といえば、同じくNASAのケプラーが活躍中で、2009年の打ち上げ以降、3000個近い惑星を発見しています。ですが、ケプラーは観測を始めてからすでに9年が経過しており、2018年中には運用を終了せざるを得ない状況にあります。

ケプラーは、宇宙の非常に狭い部分を集中的に観測し、ホットジュピターと呼ばれる灼熱惑星から、地球のような岩石型惑星まで、網羅的に惑星探しを行いました。それは、ケプラーが打ち上げられた当時はまだ200個程度しか太陽系外惑星が発見されていなかっため、そのような網羅的に探査する設計がなされたからです。さすがに3000個も見つかると、数を増やすばかりでは意味がなくなり、TESSではもう少しターゲットを絞って、地球型惑星、生命がいそうな惑星を特定しよう、としています。

探査対象の条件は地球に近く、生命がいる可能性が高い環境、つまり液体の水が存在できる適度な温かさの惑星とされました。地球に近い惑星であれば、惑星から届くかすかな光をキャッチできる可能性が期待できます、そのような光は惑星大気の性質を反映しており、大気の組成や表面の色を推測する手がかりになります。地球のような大気を持つ水の惑星が発見されれば、次は2019年に打ち上げ予定のジェームズウェブ宇宙望遠鏡(JWST)によってさらに詳細にその惑星を調べることになります。

ヴォイニッチの科学書 第705回 系外惑星探索宇宙望遠鏡(TESS)


この記事はインターネット科学ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」のあらすじです。 ヴォイニッチの科学書は毎週ホットな話題をわかりやすいフレーズで配信しています。 無料版(短縮版)は iTunesStore インターネットラジオ局くりらじから配信登録できます。iTunes の検索窓に「ヴォイニッチ」と入力してください。 有料版は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。定期購読はこちらからお申し込みいただけます。有料版にはより長時間の音声配信並びに、詳しい配付資料を提供しています。


2018-06-08 : ヴォイニッチの科学書 : コメント : 0 :

脂肪燃焼体質とゲノムの関係

寒さは死につながる危険な環境です。恒温動物は寒さに耐えるために脂肪を燃焼し熱を体内で作り出す仕組みを持っています。その役目を担っているのがエネルギーを脂肪として貯める白色脂肪細胞と、脂肪を燃焼し熱を産生する褐色脂肪細胞です。褐色脂肪細胞は寒くないときでも常に休眠状態で存在し、寒さの刺激が加わると短時間で急激に脂肪燃焼や熱産生に関わる遺伝子を活性化し、熱を生み出し始めます。

最近、「ベージュ脂肪細胞」とよばれる第二の熱産生脂肪細胞の存在が明らかになりました。褐色脂肪細胞は誕生直後から多く存在するのに対し、ベージュ脂肪細胞は誕生後に寒さに適応していくために新たにつくられる誘導型の熱産生脂肪細胞です。

脂肪細胞がこのように3種類で分業している様子を遺伝子レベルで解析してみると、褐色脂肪細胞では、脂肪燃焼や熱産生に関わる遺伝子は常に「活動中」のフラグが立っています。一方で、脂肪を貯めることが役目の白色脂肪組織では、脂肪燃焼や熱産生に関わる遺伝子は「休止中」のフラグが立っています。そのため、白色細胞は脂肪を燃焼する遺伝子は持っていますが、寒さの刺激があってもすぐに脂肪を燃焼させることはできません。

マウスを急に寒冷状態に置くと、遺伝子の寒さに反応するための特定部位にあるセリンという分子にリン酸が結合してフラグが立ち、熱産生に必要な機能が発動することが明らかになっています。 セリンをアラニンに置き換えると、アラニンはリン酸が結合できないために、フラグを立てることができず、マウスは寒さに対応できず、顕著に体温が低下します。

通常は白色脂肪細胞は寒冷環境が続くと一週間程度でゆっくりと熱を生み出す機能が活動を始め、ベージュ細胞に変化して熱を生み出し始めますが、フラグを立てることができないマウスの白色細胞は熱を生み出せず、寒冷への適応力が低下していることが明らかになりました。

ベージュ脂肪細胞は、熱を作るときに糖や脂肪を活発に消費します。ベージュ脂肪ができないマウスに栄養価の高い食事を与えると、インスリンの働きが悪く、高インスリン血症になることもわかりました。このことは、白色脂肪細胞のベージュ脂肪細胞化を促す薬は、これまでとは全く異なる仕組みで作用する2型糖尿病の治療薬になる可能性があります。


2018-06-07 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

愛称は「せいめい」

岡山県で設置が進められている京都大学の口径3.8m望遠鏡の愛称に、平安時代の陰陽師・天文博士の安倍晴明(921-1005)にちなんだ「せいめい」が公募で選ばれました。せいめいは、東アジア最大となる口径3.8mの光学赤外線望遠鏡で、今年、2018年8月から本格的な科学観測を開始する予定です。

愛称は「せいめい」

観測対象は主に「スーパーフレア」「ブラックホール連星」「ガンマ線バースト」「太陽系外惑星」の4つです。

《スーパーフレア》
愛称は「せいめい」

太陽は時々表面で大きな爆発が起きて人工衛星の電子機器が破壊されたり、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士が安全区域に避難したりしていますが、それよりも数十倍も大きなフレアが宇宙では起きています。そういったスーパーフレアがどういう仕組みで起きるのかを観測します。 上の写真は2011年6月に観測された太陽フレアです。画面右下で太陽の表面が爆発しています。

《ブラックホール連星》
愛称は「せいめい」

ブラックホールと普通の星がペアを作っている天体をブラックホール連星と呼びます。ブラックホールがパートナーの星からガスを吸い込むとき、ブラックホールの周囲には膠着円盤と呼ばれるガスの円盤ができますが、そこからは強烈なエックス線が放出されています。放出されるエックス線はブラックホールの巨大な重力によって激しく変動しますが、その変動を観測することによって謎に包まれたブラックホールの性質を明らかにすることを試みます。

《ガンマ線バースト》
愛称は「せいめい」

ガンマ線バーストは宇宙空間で突然発生する現象です。非常に重い星の爆発や、恒星同士の衝突が原因ではないかと推定されていますが、まだ正体はわかっていません。いつどこで発生するかわからないため、日本国内に設置された大学所有の天体望遠鏡という機動性や運用の柔軟性を生かして、突然起きるこの現象の謎を解明します。

《太陽系外惑星》
太陽系外惑星観測についてはこれまで、中心の星の手前を横切ることによる影の観測は行われていますが、太陽系外惑星そのものが反射して放出する光の観測はほとんど行われていません。惑星で反射された光を観測することによってその惑星に大気があるのか、植物があるのか、そのようなことがわかります。


2018-06-05 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

骨の欠損を印刷した骨で補う

理化学研究所と株式会社リコーの共同研究グループは、骨の外部、または内部が欠損し、外科的対処が必要な患者の骨の欠損部位を3Dプリンターで印刷した骨で補充する技術を開発しました。現在はセメントタイプの人口骨が広く使用されています。

今回使用された印刷技術はバインダージェット方式と呼ばれるものでリン酸カルシウムの粉末と新開発の凝固インクを用いた粉末積層方式です。作製した人工骨の生体適合性は良好で、印刷で作られた骨に周辺の骨形成細胞が付着して増殖し、速やかに本来の骨組織に入れ替わることを確認しました。

骨の欠損を印刷した骨で補う

上の写真は印刷で作成した骨代替造形物です。小さな隙間が内部まで展開していてここに骨を形成する細胞が入り込むことができます。 3Dプリンターを用いて金属を印刷した人工骨が先行して開発され、欧米では既に整形外科や口腔外科などの分野で実用化されていますが、純チタンやアルミニウム・バナジウム・チタン合金を用いるために本来の骨組織と入れ替わることがなく、いつまでも体内に残存することが問題の他、金属アレルギーなどの副作用が懸念されていました。  

次の写真は従来の方法で骨を補充した場合と新しい方法の比較です。従来の方法では4週間たっても変化はありませんが、新しい方法では4週間目には周辺から骨が形成され、自身の骨との一体化が進んでいることがわかります。

骨の欠損を印刷した骨で補う


2018-06-04 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :

日本人特有の遺伝子進化は?

人類はこれまで周囲の環境に対応して自分自身を変化させていく適応進化を遂げてきました。適応進化の過程では、生物の設計図であるゲノム配列の多様性を拡張することが大きく関係しているため、生活環境や地理的条件に応じて遺伝子の変化はパターンが異なります。

たとえば、ヨーロッパ大陸の欧米人集団では寒い北方の地に進出する過程で身長が高くなりましたし、高所に住むチベット人集団では低酸素環境への適応が進みました。ですが、日本人は目立った肉体的特徴がないため、日本人集団がどのように適応進化したかについてはよくわかっていませんでした。

そこで、理化学研究所と大阪大学、慶應義塾大学の共同研究グループは、日本人2,200人のゲノム配列情報に基づく適応進化の解析を行いました。 全ゲノム解析の結果、過去数千年間の日本人の四つの遺伝子領域(ADH1B遺伝子、MHC領域、ALDH2遺伝子、SERHL2遺伝子)が特徴的に変化してきたことがわかりました。 

さらに、日本人集団の適応進化に影響を与えた病気の発症や遺伝的特徴の個人差について検討した結果、日本人の遺伝子的特徴はアルコール代謝や、脂質や血糖値、痛風など栄養代謝に関わる部分であることがわかりました。どうりで外観からは特徴づけられないはずですし、日本人にも特有の遺伝子進化があったことが確認されたことにもなります。

また、人間の遺伝子全般にネアンデルタール人のような既に絶滅した他のヒト属由来のゲノム配列が数パーセント混入し、それが適応進化に影響を与えている可能性が指摘されています。今回の研究の中でネアンデルタール人由来ゲノムの日本人への影響も併せて調査を行いましたが、日本人の特徴へのネアンデルタール人の明らかな影響は確認されませんでした。

2018-06-03 : 科学の小ネタ : コメント : 0 :
« 前のページ  ホーム  次のページ »

おびおのプロフィール

おびおがしかし

Author:おびおがしかし
会社員をしながら科学のコンテンツを作ってます。書籍とか、トークライブとか、セミナーとか、ネットラジオとか、Webコンテンツとか。でも、楽しいことしかしません。楽しいことしかできない病、TD! それがおびおなのです。
苦手な食べ物:シーチキン、レバー、昆虫系
Web:ヴォイニッチの科学書
お気づきの点はメール
twitter:科学の自動会話プログラム ぼっとびお。

スヴァールバルの画像保管庫

スポンサードリンク

スポンサードリンク

ワトソンの検索窓

ロザリンド・フランクリンのダイアリー

05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

QRコード

QR